デビルプリンセスは死なない。

みずほたる

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親友か、魔女か?

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「星の魔女ってそもそもなに?」

私は聞くと、レンタローは、

「詳しくはわからん」

「わからんのにどうして裕美子になるのよ」

当然の疑問をなげかけると、レミットが鼻高々に、

「私の勘よ。入学式で見た時からこいつはヤバい奴と悟ったわ。きっと星の魔女に違いないわ」

「レンタロー。私から見たら裕美子よりこのチビ天使の方がヤバい奴なんだけど」

「だがレミットの勘は50%の確率であたるんだ」

「その確率、高いのか低いのか微妙だわ」

「明日大学で会ってみたらわかるかもしれん」

「そうね。まぁ当たってるわけないんだけど。ま、明日すべきことはわかったわ」

「じゃ、明日大学で。昼休みにどこかで落ち合おう」

そう言うとレンタローは立ち上がり帰ろうとすると、レミットは

「放火魔の時はまんまと出し抜かれたけど、今回はせいぜい私たちの邪魔はしないことね!」

と指をさして釘を刺して帰って行ったのだった。

静かになった部屋で

「当たってるわけないんだけど……」

私はそう言いつつも、胸の奥がざわついていた。裕美子を疑うなんて、本当はしたくなかったからだ。

そこでクロエに振ってみた。

「ねえ、クロエ。あんたはどう思う?」

「裕美子様が星の魔女かどうか、ですか?」

クロエは顎に手を当てて、わざとらしく考える仕草をした。

「私としては、魔女だろうが天使だろうが人間だろうが、地獄のリストやモグドナルドの討伐メニューに名前があれば討伐しますし、なければ放置です」

「え、そこはもうちょっと意見ちょうだいよ!」

「まぁ……もし裕美子様が本当に魔女だった場合、同族ですから放置しても問題ないでしょう。ですがモグドナルドの報奨金を逃すのは惜しいですわね。親友か借金返済か――明奈様の財布が勝つか心が勝つか、楽しみにしてます」

「あんたね」

「ま、今日は遅いですしもう寝ましょう。筋肉痛なおりませんよ」

ベッドに横になっても、なかなか眠れなかった。

クロエは隣でスースー寝息を立てているけど、私の頭の中は裕美子のことでいっぱいだ。

(裕美子が星の魔女? ありえない。あの子は、私が唯一心を許せた友達なのに)

大学で一緒にお昼を食べて、バカみたいに占いの話で盛り上がったのを思い出す。

裕美子の笑顔を思い浮かべるたびに、「魔女」なんて言葉は似合わなさすぎて、逆に胸が痛くなった。

でも――レンタローやレミットの顔がちらつく。

もし本当に裕美子が星の魔女なら?

「……私、どうすればいいのよ」

思わず声に出してしまった。答えてくれる人なんていないのに。

いや、一人だけいた。

「もちろん借金返済のために討伐です」

暗闇の中からクロエの声がして、私は飛び起きそうになる。

寝言かと思ったら、目を閉じたまま小さく笑っていた。

「悪魔姫は迷う必要ありません。親友だろうが元彼だろうが、借金返済の前ではみな平等です」

「……ほんと、あんたって容赦ないわね」

「褒め言葉として受け取っておきます」

再び寝息を立てるクロエを見ながら、私は天井を見つめた。

星の魔女が裕美子じゃないことを、祈るしかできなかった。



翌日。  

大学のキャンパスに足を踏み入れた瞬間から、私の心臓はバクバクとうるさかった。

裕美子と会うのが、こんなにも怖いなんて。

(……普通に「おはよう」って言うだけ。大丈夫、大丈夫)

そう自分に言い聞かせながら、私は人混みの中にあの親友の姿を探していた。

「おはよう。明奈」

一瞬ドキッとする。しかし、裕美子に変わりはない。いつもの、今までを知る裕美子だ。

「おはよう裕美子」

「友達? 随分と奇抜なファッションで」

裕美子は私の隣にいるクロエをチラリと見ると、

「はじめまして。私明奈様の身のお世話をしておりますクロエと申します。どうぞお見知り置きを」

クロエはゴスロリのスカートを両手で掴み深々と頭を下げた。

「身の回りってまるでメイドじゃない。明奈お嬢様かお金持ちだったの!」

お金持ちどころか借金持ちとは言えず、

「昨日地下鉄駅前のみかん箱に捨てられてたところを拾ったのよ」

と、笑って誤魔化した。

裕美子は「ふーん」と肩をすくめて、にやにや笑った。

その笑顔があまりにも自然すぎて、私の胸のざわつきは少しだけ静まった。

「でも明奈、最近雰囲気変わったよね。なんか、強くなったっていうか」

「え、そうかな」

「そうよ。入学式のときはオドオドしてたのに、今は隣にゴスロリ従者まで従えて……まるで異世界のお姫様」

「……」

ドキリとした。裕美子は冗談めかして言っただけかもしれない。けれど、あまりにも図星を突きすぎていて、背中に冷たい汗が流れる。

「ご冗談を。明奈様はお姫様ではなく――悪魔姫ですので」

クロエが、にこりともせず言葉を添える。

それを聞いた裕美子は一瞬目を丸くしたあと、けらけらと笑い出した。

「なにそれ! 明奈、あんた本当にキャラ作り始めたの? 面白すぎ!」

笑い声に周囲の学生がちらちらとこちらを見た。私は顔が熱くなるのを感じながらも、必死に取り繕った。

(よかった……今のは冗談に聞こえたみたい……)

だけど。

裕美子の瞳がほんの一瞬だけ、月光のように冷たく光った気がしたのは――私の気のせいだったのだろうか。

三人で午前の授業を終え、学食に向かうことにした。今まで変わったことは感じられない。

やっぱり予想は当たらなかったわね。確率半分なんて当てにならないわ。

そんな心配をよそに、

「いたわね星の魔女。神に変わって勇者があなたを倒すわ!」

突然目の前に現れては、でかい声でヤバいセリフを吐き出す天使レミット。

「星の魔女? 勇者? テレビの見過ぎ? てか天使のコスプレをした中学生?」

周囲がざわめきだす。

「さぁ主様。正義の鉄槌を!」

うわぁ。レンタロー恥ずかしそう。私ならこの時点で退学届をだしそう。

「いや、星の魔女って決まったわけしゃないし。てかレミット声がでかい」

「ふふん。星の魔女。主様が慈悲をお与えくださっているうちに無条件降伏することね。一族郎党皆殺しで許してあげるわ」

あぁこの場から立ち去りたい。多分レミット以外みんなそう思っていることだろう。

「星の魔女? なんのこと?」

裕美子は困っている。

「ほら、やっぱり裕美子は星の魔女じゃないんだ。謝って飯でも食おう」

レンタローはレミットに言うが、

「いいえ。私の目は誤魔化せません。そこの死神、クロエと言ったわね。その死の大鎌ソウルイーターで魂を刈りとりなさい」

大衆の前でカミングアウトする死神よりタチが悪い天使。というよりもこの天使、死神よりひどい性根である気がする。

「私が死神? なんのことでしょう。あなたきっと寝ぼけているんですね。このさい永遠に眠りにつくことを推奨致しますわ」

一筋の汗を垂らしながらも誤魔化すクロエ。

その時、裕美子の目が再び月光みたいに光り、周囲のざわめきが消える。

「話は変わるけど、初対面の私の名前を知ってるなんて、レンタロー。あなたも転生者なのね?」

え?

レンタローも驚いたが、私も驚いた。





この世界、転生者多すぎね?



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