デビルプリンセスは死なない。

みずほたる

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漆黒の刺客、現る!

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学食を終え、私たちは食堂を出た。

するとミユが杖を取り出し、地面に刺して魔法陣を描き始める。

「魔のオーラを検知するわ。あの義元を倒した奴が、まだ近くにいるかもしれない」

しばらくして、ミユは魔法陣を見つめながら叫ぶ。

「ちょっと、あんたらのオーラがデカすぎて見えないんだけど!? 何者よ!」

「私、デビルプリンセス」

私は答える。

「私は星の魔女だよ」

裕美子も返す。

ミユは杖を握ったまま眉をひそめた。

「伝説の悪魔に、神様的存在……なのに、大学生やってるの?」

「せっかく転生したんだし、女子大生ライフも堪能したくて」

私は笑った。

ミユはため息をつく。

「転生者なら、もっと上手く生きなさいよ。過去の知識があるなら、この先何が起きるかくらい分かるでしょ?」

「うーん……でも、すでに私が知っている過去じゃないからね。魔王を倒したくても、まだ復活してなかったらどうしようもないんだよ」

私は肩をすくめる。

「え? 過去って変わるの?」

「少なからずね。ちなみに私の過去には、織田信長や今川義元はいなかったよ」

ミユは目を丸くする。

「もしかしてさっきの二人って?」

私は無言でうなずく。

「まさかの歴史上の有名人に関わっていたなんて……サインもらえばよかった!」

「ちょ、あんた歴女だったのね」

裕美子が呟く。

「私、戦国無双にどハマりしてからファンなのよね。ね、あんたたち友達なんでしょ? 今度ゆっくり紹介してよ!」

「嫌だよ。戦う時は頼もしいけど、コメディ日常回はうるさいだけだもん」

「ワタクシたち友達でしょ!」

「さっきまで浄化するとか言ってただろ!」

そんなやりとりをしていると、背後から声がした。

「おっすー」

振り返るとレンタローがやってきた。

「あ、レンタロー。さっき義元がやられちゃって」

私は説明する。

「まじか、あの義元がなぁ。で、この姉ちゃんが助けてくれたんだな。サンキューな」

「聖女として当然よ。あと名前はミユっていうから」

「ミユちゃんね。俺レンタロー。一応勇者。まだあまり頼りにならないけど、よろしくな」

握手を交わす二人。

「なんでこの子にはデレるのよ。気持ち悪い」
私はレンタローに文句を言う。

「だってこの子、俺の記憶が正しかったら前世は――」

「前世なんてどうでもいいわ! 大事なのはこれからよ。義元様を倒した犯人を見つけないと!」

ミユが話を割った。

「そうよ。義元を倒すなんて、よほどの実力者よ」

私はうなずく。

「もし個々に狙われたら、私たちも危ないわね」
裕美子も言う。

「勝手にやればいいじゃない。ワタクシには関係ないわ」

「いいけど、犯人捕まえるまで永遠に死体見せられることになるよ?」

私は笑う。

「仕方ないわね。ワタクシも手伝うことにするわ!」

ミユは水を飲みながら気合を入れる。

こうして、転生者四人のチームは、義元を襲った犯人を探すために大学の敷地を出て、タピオカ露店に寄った。

「デビルプリンセス様。お館様が血相を変えて出ていきましたが何があったのですか?」

可愛いエプロンをつけたジャイアントブザーインプの女王がおそるおそる聞いてきた。

「信長が?」

「はい。なんでも義元の仇をとると申されておりました」

「信長が危ない!」

私たちも血相を変えて信長が向かったという先へ走るのであった。

「あれは、戦闘空間バトルフィールド!」

早く行かないと信長が。仲間が!

空間の中に入ると、傷だらけの信長が倒れていた。

そして立っている男。

なんて魔力。今までの比じゃない!

「赤髪の女よ。逃げよ。お主らじゃ無理じゃ。なにせこやつは魔王四天王の一人――」

言いかけた信長の声を無視して、漆黒の鎧に身を包み、鋭い刃を携えたその存在がこちらを睨みつける。

魔力が渦巻く空間で、私は自然と背筋を伸ばす。

ミユも杖を握りしめ、目に冷たい光を宿した。

「……漆黒の刺客、セイジ・レヴァイン」

周囲の空気が一変し、静寂すらも鋭い刃のように感じられる。

「……あなたが、義元を狙ったのね」

私が静かに問いかけると、セイジは微動だにせず、灰色の瞳だけをこちらに向けた。

「……口を出すな。仕事は始めたばかりだ」

その一言に、闇の圧力が全身を押し潰す。

レンタローが前に出るが、体が硬直して動かない。

ミユが小さく息を呑み、杖を地面に突き立てる。

「……私たち、ここで逃げられるかしら」

小声で裕美子がつぶやく。

「無理ね。勝つか死ぬかの戦いになっちゃったわ!」

私は覚悟を決め、胸の奥で炎のような力を感じた。

セイジ・レヴァインがゆっくりと短剣を構え、闇の中に溶けるように姿を消す。

そして次の瞬間――

「――瞬殺の影、現る!」

黒い刃が空を裂き、私たちの目前に迫る。

レンタローは剣を握り、レミットが現れ加護を与え、なんとか一撃を防ぐ。

「星よ。私に力を! 流星撃メテオシャワー

星の光を集めて弾丸状に撃ち出すが、

「遅い」

瞬時に裕美子の前に現れ腹に強烈な一撃を与え、吹き飛ばされる。

「裕美子、今回復を!」

「させぬわ」

ミユにも一撃。顔を片手でつかまれ投げられる。

闇黒炎ダークフレア!」

詠唱無効スペルキャンセルで放つが、

「無駄だ」

動きが早すぎる。当然のようにかわされる。

「こんなのにどうやって勝てっていうのよ」

勝算が見つからない。四天王の称号は伊達じゃないってことか。

その瞬間、意識が飛んだ。目が赤色から金色に変わり、被害からツノが生え、漆黒の翼が広がる。

『やれやれ。やっとまともなのが出てきたのぅ』

悪魔姫が前面に現れたその瞬間、空気が一変する。

――この戦い、誰が勝つのか。

答えは、まだ誰も知らない。
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