悪魔姫は世界征服よりも昼寝がしたい!

みずほたる

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ガラスの靴と、悪魔の裁き

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「どういうつもりだ?」

オークキングは怒りに満ちた顔をしている。

椅子の肘掛けを握りつぶすほどの握力だ。

「民は貧困に苦しんでいるのに対して、城にいる者は贅沢三昧。なんとかせよ」

私は一歩も引かず、冷たい声で告げた。

「他国の姫が我が帝国の内政に口を出さないでいただきたい」

「ふむ。それもそうじゃな」

さて、この場で暴れては、私が悪いことになりそうだ。

どう言い返そうか。と、悩んでいると

「姫様。城の外が騒がしいです」

横にいたオカリナがこっそり告げてくる。

窓の外からは叫び声と金属のぶつかる音。

民衆の暴動が起きているようだった。

「ヴィオラが食べ物を与えている際、舞踏会の話をしたようで、民衆の不満が爆発したようです」

「……ふむ。あやつ、口が軽いのぅ」

私が頭を押さえたところで、慌ただしく扉が開いた。

「帝王! 民が反乱を起こし、武器庫や食糧庫を占拠! 衛兵も次々と寝返っております!」

派手な鎧を着たオークが、焦った様子で報告する。

「ば、馬鹿な! 民は飢えで反乱を起こせる力はないはずだ!」

「首都の郊外で炊き出しが行われている様子!」

「何……? まさか――貴様の仕業か?」

「そうじゃな」

私は微笑んだ。

「ただこの場合、食事が余って捨てるのが勿体ないから、欲しがっている者に分け与えただけじゃが?」

オークキングの顔が真っ赤に染まる。

怒りか、羞恥か、それとも恐怖か。

私はゆっくりと立ち上がる。

そして、黄金の魔眼を開いた。

「妾は――伝説の悪魔姫デビルプリンセスじゃぞ」

黄金の光が大広間を照らし、王の影を長く引き伸ばす。

私の声が、城全体に反響した。

「豚ごときが妾のやることに口を出すな。国? 妾の前にそんなもの無意味と知れ」

絶望のオーラが満ち、場にいた者すべてが息を呑む。

まるで空気そのものが闇に染まったかのようだった。


「クラリ。私のそばに」

オカリナが魔法結界を張りクラリを守る。

絶望のオーラの前にオークたちは無と化す。

「すごい。これが姫様の力」

「全盛期の半分くらいだがな」

オカリナはフッと笑った。

「おのれ悪魔姫。せめて一太刀!」

オークキングが巨大な斧を手に取り振り上げる。

「だから言ったであろう。次は貴様が豚丼になる番じゃと」

私は闇の炎を無詠唱でオークキングを焼き尽くすのであった。

絶望のオーラを弱くして私は考える。

さて、これからどうするか?

帝国や側近はいなくなった。これからこの国にいた民衆を導いていかなければならない。

城から街道を作らなければならない。いや、ここの民衆を村に連れて来た方が早いか?

まぁこの辺は直接聞いてみよう。

「なんなのよ! 死ぬかと思ったわ!」

何故か壺からフラットが顔を出した。なんというひどいメイクだ。

「よく生きていたな」

オカリナが感心すると、フラットが壺から出て来たのを見て、

「神の羽衣に神の化粧か。納得だ」

神フルートから借りたドレスが絶望のオーラから彼女を守ったらしい。

「帝王はどこだ!」

民衆が大勢押しかけてきた。

私は亡きオークキングがいた玉座に座る。

「妾が滅した。民を貧困に導く王などこの世界にはいらぬ。これからは悪魔姫デビルプリンセスが、貴様らを幸福に導いてやろう」

「悪魔姫が幸せにだって?」

動揺が走る民衆たち。

「姫様の申し上げていることは本当よ」

ヴィオラがやって来た。

「炊き出しを私に命じたのも姫様よ」

「ヴィオラさんが言うなら信じてみよう!」

一食の恩義とはこのことを言うのだろうか。

「ところで姫様。王子様はどこ? 私は玉の輿にのるために忍び込んできたのに!」

「あそこで丸こげになってるぞ」

「豚じゃない!」

「ここ、オークが支配する帝国って知らなかったのか?」

「あぁ、知っていたら城でゴロゴロしてたのに!」

「そういえばシャープ王子が今日来るはずじゃが」

「あぁ、忘れてたわ! どうしよう!」

「仕方がない。これを履け」

私はガラスの靴を物理化してフラットの前に置く。

「このシーン、かつて姫様の修練で見たわ。まさかこのことが起きることを知ってたというの? 内心馬鹿にしてたわ」

「戯言はいいから履くのじゃ」

「少し冷たいけどピッタリです」

「それは呪いのガラスの靴じゃ。無論、呪われているから自分では脱げんぞ」

「ひどい!っていうか、足が勝手に動くんだけど」

「止まったら死ぬ靴じゃからな。さぁ城でシャープ王子が待っておるぞ。走って帰るのじゃ」

フラットは泣きながら走って去っていった。

「さて。ピアニカ帝国の民どもよ。妾が治める領地も元々は荒廃した村の15人の人間から始まった。今では全ての種族が共存し、文化を交え、争いのない国づくりを目指しておる。そなたらも仲間になるのなら手を差し伸べよう。嫌なら勝手にせよ。無理強いはしない」

相談をする民衆たち。

「重大な問題ですので明日、返事をしてもよろしいでしょうか?」

「構わぬ。それまでここにいて良いか? 荒れ果てた城じゃが雨風は凌げよう。

私はそう言って玉座から立ち上がった。

砕けた窓の向こうには、夜明け前の空。

一筋の光が差し込み、焦げた玉座を金色に染めていたのであった。



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