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Lv.80は強敵なり! 最強悪魔姫、ただの老人に屈する
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「気づかれましたか、チセリ様!」
遠くで声が呼びかける。
聞いたことのない声。悪魔大元帥でもなく、四天王でもない。
ゆっくりと目を開ける。
「マジで誰じゃ!?」
寝ていた私を抱きかかえていたオッサンに驚きを隠せなかった。しかも人間ごときに介抱されていたというのか? 末代の恥だ。今すぐ殺さねばならない。
私はすかさずオッサンのレベル察知スキルを使う。
レベル53。まさにゴミじゃな。
私は闇の魔法を無詠唱で放とうとするが、炎が出てこない。この身体では使えないということか?
少し困惑する。
「チセリ様。民衆の前で魔王討伐の演説をしていた時に魔族に矢を胸に放たれたのです。矢は抜きましたが出血が激しくて。もうダメかと思いました!」
なるほど。この身体はすでに死んでいたのだろう。そこに私が転移したということか。
「私は矢が心臓を貫いた程度では死なぬ。それよりも鏡をもて。今どんな状態か知りたい。あとこのドレスはなんじゃ。まるで忌々しい聖女レミットではないか。嫌味にもほどがあるぞ」
オッサンは駆け足で手鏡を持って来ると、奪うようにして自分の姿を見る。
なんじゃこの姿は。まるで子供ではないか。と、声を出しそうになった。
そして鏡に映っている私自身にレベル察知をすると、
レベル17。ゴミ以下ではないか。
となると、このオッサン。私よりも強いではないかと警戒心を強める。
「聖女チセリ様。お身体が無事でしたら引き続き民衆に魔王討伐の激励を」
老人が私の元に現れてはせかしてくる。
私に魔王討伐の激励だと? 同族を殺せと言うのか愚か者め。
怒りを抑えながらも、老人のレベルを視認する。
レベル80じゃと!?
くっ、レベル17の私では太刀打ちできん。レベル差を知った上で言ってきておる。ここで反抗すればすかさず殺されるのは私のほうか。
ここは我慢だ。とりあえず人間たちの味方をアピールして生き残るしか道はない。
「わかった。お前たちに従おうではないか。だがせめてこの忌々しいドレスを脱がせてくれぬか? 漆黒のプリンセスドレスまでとは言わぬが別の衣服が良い」
私は下を見ながら独り言のように呟くと、
「それはなりませぬチセリ様! その聖女の法衣は破邪の法衣。闇を受け付けぬ神の力をたずさえております!」
なるほど。イレギュラーを考えたうえで私に闇の力を封印していたのか。だが脱いでしまえばこっちのもの。まだ奴らを皆殺しにできるかもしれんということか。
どちらにせよ私にこんな屈辱を与えたこいつらを許すことは出来ない。名を聞いておこう。
「ところでお主、名は...」
と、言いかけてやめた。何故私がわざわざ覚えなければならないのだ。愚かな人間どもは私が与えた名で十分だろう。
「お主の名はセバスチャンに決めた」
私がオッサンに言うと、
「聖女様が俺に名を下さった! 洗礼をお認めになられた!」
なんか大声で泣いてるんだが。
「あぁ、アナタ。53歳にしてやっと聖女様に認められて使徒になられたのね。おめでとう!」
妻らしき女が小声でそんなことを言っているし。人間どもの考えはわからん。レベル53で聖女の使徒は遅いのか? いや、聖女レミットはレベル500だったはず。ならば遅いわけではないのか?
というか、私が聖女だと?
古の悪魔姫と呼ばれ、世界の覇者として蹂躙した私がよりによって聖女に生まれ変わったというのか!?
しかもレベル17という雑魚。
ここがいつの時代かはわからんが、まさか単身で魔王を倒せと言っているわけではないよな? もしそうだったら悪魔より人間の方が悪魔だ。
「さあチセリ様。民魔王に出発するとお伝え下さい! 日々魔族に襲われている民衆は歓喜に沸くことでしょう!」
やっぱり!
もはや私の正体が悪魔姫と知って言っているとしか思えん。聖女として扱い屈辱を与えた後、同族同士の殺し合いを歓喜しながら見る。
「しかし老人よ。私は弱い。そなたらが戦った方がまだ戦力になるように思えるが」
言うだけ言ってみた。
「我々は食べることすらままならない街の人間。体力もない状態では反抗することすら難しいかと。食べ物も少なからずですが作っては略奪される毎日。それでチセリ様が討伐に行くことになったのをお忘れですか?」
老人が割り込んでくる。いかにも不健康そうに見えるがレベル80だ。真なる力は見せないつもりか。卑怯な奴め。
しかし、私には悪魔大元帥も四天王もいない。単身は自殺行為。とならば、やはりこの者たちに戦ってもらった方がが私の生存率は上がる。
「では方針を変える。食料を豊富に作る。お主らは栄養をとり皆で略奪に来る魔族と戦う力をつける。どうじゃ?」
「チセリ様が出て行かれた後、我々は全滅を覚悟しておりました。生かしてくれる方法があるなら従います」
「老人よ。謙遜するな。私には見えている。お主は強い」
「さすがチセリ様。ワシが60年前村一番の力持ちであったことをお見抜きで。岩を持つことに生きがいを感じておりました。しかしあれも20歳の話ですじゃ。年には勝てませぬ」
そんなのでレベル80まで上がったのか! 何という恐るべし老人。
この世界ではレベル=年齢だということに気づかない、元悪魔姫のチセリ。この先どうなることやら。次回に続きます。
遠くで声が呼びかける。
聞いたことのない声。悪魔大元帥でもなく、四天王でもない。
ゆっくりと目を開ける。
「マジで誰じゃ!?」
寝ていた私を抱きかかえていたオッサンに驚きを隠せなかった。しかも人間ごときに介抱されていたというのか? 末代の恥だ。今すぐ殺さねばならない。
私はすかさずオッサンのレベル察知スキルを使う。
レベル53。まさにゴミじゃな。
私は闇の魔法を無詠唱で放とうとするが、炎が出てこない。この身体では使えないということか?
少し困惑する。
「チセリ様。民衆の前で魔王討伐の演説をしていた時に魔族に矢を胸に放たれたのです。矢は抜きましたが出血が激しくて。もうダメかと思いました!」
なるほど。この身体はすでに死んでいたのだろう。そこに私が転移したということか。
「私は矢が心臓を貫いた程度では死なぬ。それよりも鏡をもて。今どんな状態か知りたい。あとこのドレスはなんじゃ。まるで忌々しい聖女レミットではないか。嫌味にもほどがあるぞ」
オッサンは駆け足で手鏡を持って来ると、奪うようにして自分の姿を見る。
なんじゃこの姿は。まるで子供ではないか。と、声を出しそうになった。
そして鏡に映っている私自身にレベル察知をすると、
レベル17。ゴミ以下ではないか。
となると、このオッサン。私よりも強いではないかと警戒心を強める。
「聖女チセリ様。お身体が無事でしたら引き続き民衆に魔王討伐の激励を」
老人が私の元に現れてはせかしてくる。
私に魔王討伐の激励だと? 同族を殺せと言うのか愚か者め。
怒りを抑えながらも、老人のレベルを視認する。
レベル80じゃと!?
くっ、レベル17の私では太刀打ちできん。レベル差を知った上で言ってきておる。ここで反抗すればすかさず殺されるのは私のほうか。
ここは我慢だ。とりあえず人間たちの味方をアピールして生き残るしか道はない。
「わかった。お前たちに従おうではないか。だがせめてこの忌々しいドレスを脱がせてくれぬか? 漆黒のプリンセスドレスまでとは言わぬが別の衣服が良い」
私は下を見ながら独り言のように呟くと、
「それはなりませぬチセリ様! その聖女の法衣は破邪の法衣。闇を受け付けぬ神の力をたずさえております!」
なるほど。イレギュラーを考えたうえで私に闇の力を封印していたのか。だが脱いでしまえばこっちのもの。まだ奴らを皆殺しにできるかもしれんということか。
どちらにせよ私にこんな屈辱を与えたこいつらを許すことは出来ない。名を聞いておこう。
「ところでお主、名は...」
と、言いかけてやめた。何故私がわざわざ覚えなければならないのだ。愚かな人間どもは私が与えた名で十分だろう。
「お主の名はセバスチャンに決めた」
私がオッサンに言うと、
「聖女様が俺に名を下さった! 洗礼をお認めになられた!」
なんか大声で泣いてるんだが。
「あぁ、アナタ。53歳にしてやっと聖女様に認められて使徒になられたのね。おめでとう!」
妻らしき女が小声でそんなことを言っているし。人間どもの考えはわからん。レベル53で聖女の使徒は遅いのか? いや、聖女レミットはレベル500だったはず。ならば遅いわけではないのか?
というか、私が聖女だと?
古の悪魔姫と呼ばれ、世界の覇者として蹂躙した私がよりによって聖女に生まれ変わったというのか!?
しかもレベル17という雑魚。
ここがいつの時代かはわからんが、まさか単身で魔王を倒せと言っているわけではないよな? もしそうだったら悪魔より人間の方が悪魔だ。
「さあチセリ様。民魔王に出発するとお伝え下さい! 日々魔族に襲われている民衆は歓喜に沸くことでしょう!」
やっぱり!
もはや私の正体が悪魔姫と知って言っているとしか思えん。聖女として扱い屈辱を与えた後、同族同士の殺し合いを歓喜しながら見る。
「しかし老人よ。私は弱い。そなたらが戦った方がまだ戦力になるように思えるが」
言うだけ言ってみた。
「我々は食べることすらままならない街の人間。体力もない状態では反抗することすら難しいかと。食べ物も少なからずですが作っては略奪される毎日。それでチセリ様が討伐に行くことになったのをお忘れですか?」
老人が割り込んでくる。いかにも不健康そうに見えるがレベル80だ。真なる力は見せないつもりか。卑怯な奴め。
しかし、私には悪魔大元帥も四天王もいない。単身は自殺行為。とならば、やはりこの者たちに戦ってもらった方がが私の生存率は上がる。
「では方針を変える。食料を豊富に作る。お主らは栄養をとり皆で略奪に来る魔族と戦う力をつける。どうじゃ?」
「チセリ様が出て行かれた後、我々は全滅を覚悟しておりました。生かしてくれる方法があるなら従います」
「老人よ。謙遜するな。私には見えている。お主は強い」
「さすがチセリ様。ワシが60年前村一番の力持ちであったことをお見抜きで。岩を持つことに生きがいを感じておりました。しかしあれも20歳の話ですじゃ。年には勝てませぬ」
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この世界ではレベル=年齢だということに気づかない、元悪魔姫のチセリ。この先どうなることやら。次回に続きます。
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