19 / 54
姫様、静かなスローライフを望んだらベリーハードだった件
姫様、四聖の一人を側近のポンコツさで評価する
しおりを挟む
「私は反対です。神族なんか滅んでしまえばいい存在なのに村に住まわせるつもりなんて。想像しただけでも吐き気がします」
バスクが知り合いだという神族の医師を勧誘しに行ったと、オカリナに説明すると猛反対してきた。
「リィナだって女神だけど同じ村どころか同じ屋根の下に住んでいるじゃない」
私は矛盾点をついて紅茶を一口飲むと、リィナがげっそりした顔で部屋から出てきた。
「腹が減った。どうか女神に救いの手を」
詐欺まがいの商売の返金をした結果、一文無しになり、さらに働いていないため食べるのに困っているみたいである。
「プリンセス・サーバンツに行って仕事見つけてきなさいよ」
「女神である妾が働くなどありえぬ。もう毒キノコでもかまわぬ。腹を満たしたい」
その様子を見かねてか、オカリナが自分のカバンからパンを取り出して、
「これでもいいなら食べるか?」
「ジャムはないのか?」
「じゃあやらん」
「妾、女神なのに悲しみ」
「仕方ないな」
そんなやりとりを見ていると、魔族第一主義のオカリナでも他種族とうまくいきそうな気がするが。
「女神よ。薬師が医師の神族を村に連れてくるらしいぞ」
オカリナは美味しそうにパンをかじるリィナに言うと、
「それはならぬ。妾以外の神族なんか滅んでしまえばいいのじゃ。同じ村に住むなど考えただけでも吐き気がするのぅ」
「なんでオカリナと同意見なのよ」
「他の神族なんか来たら唯一の神族である妾のレア感がなくなってしまうではないか」
「ごめん。結論が同じでも理由が全然違ったわ」
オカリナは魔族第一主義。リィナは身の保身である。
そんな私の心情を知らずとして、リィナが思いついたように言う。
「医師が務まる神族なんかあやつしかおらぬ。四聖の一人である救命のユリエルじゃ」
「なんかすごく有能そう!」
「妾の側近の一人で、どんな怪我や病気も言い当てることができるのじゃ」
「ん? リィナの側近? オカリナの四天王みたいなもん?」
「まぁそれに近いのぅ」
その話を聞いたオカリナが、
「上司がこんなポンコツなら安心です。神族といっても大したことありませんね。村に住むことにしぶしぶですが賛成しましょう」
「お主とてポンコツではないか」
「貴様。パンとジャムの恩を忘れたのか!」
「さっきのは、神へのお供物ではなかったのか?」
「違うわ! 大体そのユリエルだが、怪我や病気を言い当てるだけではないか!」
「なんでも治せたら妾の立場がなくなるではないか」
「四天王みたいに優秀な奴はいないのか?」
「四天王の優秀さは認めるが全員裸ではないか!」
「ぐぬぬ。ちなみにその四聖は服を着ているのか?」
「もちろんじゃ!」
ポンコツ二人の不毛なやり取りを聞いて、何故か平和を感じた私なのであった。
「さて、静かになったわけだけど」
オカリナが紅茶の新しいレシピを考え、リィナが楽して食べていく方法を、それぞれ自室で考えているためリビングは静まり返っている。
私はこれからのことを考える。
病院か診療所を建てて欲しいし、この山積みにされた書類の仕分けをしてくれるような事務員が欲しいなぁ。
てか、私って在宅ワークが基本じゃん。
これが姫様というか村長の仕事だというのなら、せめて役場みたいのを建築してもらって、仕事とプライベートを分けたいなぁ。
と思ったりもしたので、プリンセス・サーバンツに相談も含めて一人で行くことにした。
「姫様。お仕事の依頼ですか?」
エルフの兄妹であり、プリンセス・サーバンツの管理をしてもらっているオリンとヴィオラが私を見るなり頭を下げて来た。
「そう。仕事の依頼をしたいんだけど」
私は要望を話したら、
「では、診療所の建築と、姫様直轄の事務員、あと姫様の職場を作る依頼を受け付けました」
「ちなみに職場の希望なんだけど」
私はかつて勤めていた雑居ビルみたいなのを作られても困るので先に言っておこうとしたのだが、
「姫様の職場。もちろん城ですよね?」
「城?」
予想の斜め上すぎる答えが返って来た。
「姫様といえば城だと思いますが」
「いや、仕事をする場所が欲しいだけなんだけど。城だったら住まないとダメじゃない?」
「それは当然です。むしろ姫様が現在平屋に住んでいることの方が違和感あります」
確かにどんな世界でも、姫様と呼ばれる者が平屋でシェアハウスをしているのは私くらいしかいないだろう。
違うのだ。私は在宅ワークをしたくないだけなのだ。平屋から城になっても敷地面積が広くなっただけでは意味がないのだ。
「私は仕事を終えて、帰りがてら買い物したり、たまには酒飲んだりして寄り道したいのよ。わかる?」
「それは庶民の楽しみであって、姫様がすることではない気がします」
ここで姫様扱いが足枷になるとは!
そうか。私が姫様兼村長をしているからこうなるんだ。姫様専任なら、城で自由に食っちゃ寝できるはずなのだ。
村長を誰かに丸投げして、診療所だの事務員だの任せればいいんだ。
そしたら、村人から姫様扱いをされてスローライフを送れる。
第二の人生設計完璧じゃない。
「なるほど。姫様のお考えをお察ししました。オカリナさんの言う通り、村一つでは満足しない。やはり世界の支配者になられるおつもりなんですね?」
「え?」
「村をやがて国の規模にし、いくつもの国を束ねる姫になりたい。そういうことですね? つまり今は村長ですが、やがて国王に昇進。それならば俺の妹、ヴィオラを推薦します。身内贔屓ですが優秀です。このプリンセス・サーバンツは俺一人で管理して見せましょう!」
いや、やっぱりいいやって言えないやつじゃん!
「では早速、村役場を作りヴィオラに働かせます。姫様は城ができるまで、自宅で決済をお願いします!」
いや、その役場を私のために建ててほしいんだけど。
私の願いが通じることもなく、翌日からいつの間にかテーブルに山積みにされていた書類が、今度はヴィオラの手によって山積みにされる生活になるのであった。
バスクが知り合いだという神族の医師を勧誘しに行ったと、オカリナに説明すると猛反対してきた。
「リィナだって女神だけど同じ村どころか同じ屋根の下に住んでいるじゃない」
私は矛盾点をついて紅茶を一口飲むと、リィナがげっそりした顔で部屋から出てきた。
「腹が減った。どうか女神に救いの手を」
詐欺まがいの商売の返金をした結果、一文無しになり、さらに働いていないため食べるのに困っているみたいである。
「プリンセス・サーバンツに行って仕事見つけてきなさいよ」
「女神である妾が働くなどありえぬ。もう毒キノコでもかまわぬ。腹を満たしたい」
その様子を見かねてか、オカリナが自分のカバンからパンを取り出して、
「これでもいいなら食べるか?」
「ジャムはないのか?」
「じゃあやらん」
「妾、女神なのに悲しみ」
「仕方ないな」
そんなやりとりを見ていると、魔族第一主義のオカリナでも他種族とうまくいきそうな気がするが。
「女神よ。薬師が医師の神族を村に連れてくるらしいぞ」
オカリナは美味しそうにパンをかじるリィナに言うと、
「それはならぬ。妾以外の神族なんか滅んでしまえばいいのじゃ。同じ村に住むなど考えただけでも吐き気がするのぅ」
「なんでオカリナと同意見なのよ」
「他の神族なんか来たら唯一の神族である妾のレア感がなくなってしまうではないか」
「ごめん。結論が同じでも理由が全然違ったわ」
オカリナは魔族第一主義。リィナは身の保身である。
そんな私の心情を知らずとして、リィナが思いついたように言う。
「医師が務まる神族なんかあやつしかおらぬ。四聖の一人である救命のユリエルじゃ」
「なんかすごく有能そう!」
「妾の側近の一人で、どんな怪我や病気も言い当てることができるのじゃ」
「ん? リィナの側近? オカリナの四天王みたいなもん?」
「まぁそれに近いのぅ」
その話を聞いたオカリナが、
「上司がこんなポンコツなら安心です。神族といっても大したことありませんね。村に住むことにしぶしぶですが賛成しましょう」
「お主とてポンコツではないか」
「貴様。パンとジャムの恩を忘れたのか!」
「さっきのは、神へのお供物ではなかったのか?」
「違うわ! 大体そのユリエルだが、怪我や病気を言い当てるだけではないか!」
「なんでも治せたら妾の立場がなくなるではないか」
「四天王みたいに優秀な奴はいないのか?」
「四天王の優秀さは認めるが全員裸ではないか!」
「ぐぬぬ。ちなみにその四聖は服を着ているのか?」
「もちろんじゃ!」
ポンコツ二人の不毛なやり取りを聞いて、何故か平和を感じた私なのであった。
「さて、静かになったわけだけど」
オカリナが紅茶の新しいレシピを考え、リィナが楽して食べていく方法を、それぞれ自室で考えているためリビングは静まり返っている。
私はこれからのことを考える。
病院か診療所を建てて欲しいし、この山積みにされた書類の仕分けをしてくれるような事務員が欲しいなぁ。
てか、私って在宅ワークが基本じゃん。
これが姫様というか村長の仕事だというのなら、せめて役場みたいのを建築してもらって、仕事とプライベートを分けたいなぁ。
と思ったりもしたので、プリンセス・サーバンツに相談も含めて一人で行くことにした。
「姫様。お仕事の依頼ですか?」
エルフの兄妹であり、プリンセス・サーバンツの管理をしてもらっているオリンとヴィオラが私を見るなり頭を下げて来た。
「そう。仕事の依頼をしたいんだけど」
私は要望を話したら、
「では、診療所の建築と、姫様直轄の事務員、あと姫様の職場を作る依頼を受け付けました」
「ちなみに職場の希望なんだけど」
私はかつて勤めていた雑居ビルみたいなのを作られても困るので先に言っておこうとしたのだが、
「姫様の職場。もちろん城ですよね?」
「城?」
予想の斜め上すぎる答えが返って来た。
「姫様といえば城だと思いますが」
「いや、仕事をする場所が欲しいだけなんだけど。城だったら住まないとダメじゃない?」
「それは当然です。むしろ姫様が現在平屋に住んでいることの方が違和感あります」
確かにどんな世界でも、姫様と呼ばれる者が平屋でシェアハウスをしているのは私くらいしかいないだろう。
違うのだ。私は在宅ワークをしたくないだけなのだ。平屋から城になっても敷地面積が広くなっただけでは意味がないのだ。
「私は仕事を終えて、帰りがてら買い物したり、たまには酒飲んだりして寄り道したいのよ。わかる?」
「それは庶民の楽しみであって、姫様がすることではない気がします」
ここで姫様扱いが足枷になるとは!
そうか。私が姫様兼村長をしているからこうなるんだ。姫様専任なら、城で自由に食っちゃ寝できるはずなのだ。
村長を誰かに丸投げして、診療所だの事務員だの任せればいいんだ。
そしたら、村人から姫様扱いをされてスローライフを送れる。
第二の人生設計完璧じゃない。
「なるほど。姫様のお考えをお察ししました。オカリナさんの言う通り、村一つでは満足しない。やはり世界の支配者になられるおつもりなんですね?」
「え?」
「村をやがて国の規模にし、いくつもの国を束ねる姫になりたい。そういうことですね? つまり今は村長ですが、やがて国王に昇進。それならば俺の妹、ヴィオラを推薦します。身内贔屓ですが優秀です。このプリンセス・サーバンツは俺一人で管理して見せましょう!」
いや、やっぱりいいやって言えないやつじゃん!
「では早速、村役場を作りヴィオラに働かせます。姫様は城ができるまで、自宅で決済をお願いします!」
いや、その役場を私のために建ててほしいんだけど。
私の願いが通じることもなく、翌日からいつの間にかテーブルに山積みにされていた書類が、今度はヴィオラの手によって山積みにされる生活になるのであった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サディストの私がM男を多頭飼いした時のお話
トシコ
ファンタジー
素人の女王様である私がマゾの男性を飼うのはリスクもありますが、生活に余裕の出来た私には癒しの空間でした。結婚しないで管理職になった女性は周りから見る目も厳しく、私は自分だけの城を作りまあした。そこで私とM男の週末の生活を祖紹介します。半分はノンフィクション、そして半分はフィクションです。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる