プリンセス・サーバンツ

みずほたる

文字の大きさ
35 / 54
姫様、神々を従え世界を敵に回す

姫様、卵かけご飯(TKG)でプロの料理人が成仏しました

しおりを挟む
「宮廷で料理人として働きたい者がいる?」

玉座にて私はヴィオラに聞き返した。

「はい。プリンセス・サーバンツ姫様のしもべの受付にてそう申請した人物がいたそうです。お会いになられますか?」

聖女がもしここに来たいと言ったら、彼女や護衛団たちをもてなす必要がある。

今現在はメイドたちが当番制で料理を作っているのだが、元々は私が教えたこともあり基本は家庭料理だ。

ここは新しいメニューを開拓するためにも会っておいて損はないと考えたのであった。

しばらくして。

「お目通りありがとうございます。トロン村から参りましたボーンと申します」

白いコック姿の少年は少し緊張しているように見える。

オカリナが、

「トロン村。北にある小さな村だな」

「はい。その村一番の料理人を自負してます」

「うちの宮殿で料理人として働きたいって聞いたけど?」

「ハイ!」

「なら厨房を貸してあげるから、なんか作ってちょうだい」

「わかりました。みんなを笑顔にしてさしあげます!」

そう元気よく言うと駆け足でヴィオラについていった。

「姫様。これは期待できそうですね」

隣に立っているオカリナは私に言うと、

「そうね。せっかくだからナナミとチヒロも呼んできてくれない?」

「かしこまりました。あの二人は味にうるさいですからね」

オカリナが姿を消すと、居ても立ってもいられなかったので厨房の様子を見に行くことにした。

厨房に行くと、腰を抜かして倒れているボーンがいた。

「姫様。この野菜なんですが」

震えながら人参やじゃがいもなどを指差している。

「今朝、近所のお婆さんが採れたてだからっておすそわけしてくれたやつ?」

「こんな高級食材見たことがありません!」

「は?」

「例えばこの人参。……見てください、この血管のような瑞々しい繊維! 断面から溢れる滴はもはや宝石です。これは数百年前に絶滅したと言われる伝説の『龍の髭人参』ではないですか!? 王侯貴族が一生に一度食べられるかどうかという代物を、お婆さんがおすそわけ!?」

「……いや、普通の人参だけど。泥ついてたし」

「泥!? 泥ではありません、それはきっと大地の魔力が凝縮されているに違いません!」

「まあ、この村は土の四天王が土壌を品種改良の実験をしている最中だしね」

「食材でなく、土壌を品種改良なんて聞いたことがありません!」

「うちには食材を品種改良する能力がないんだから仕方ないじゃない。おいしいんだからどちらでもいいじゃない」

「この食材、下手に調理するなんてとんでもありません。生で食べるべきです!」

「そしたらあなたがいる意味がないでしょ」

私が文句を言うと、チヒロが現れた。

「お呼ばれされたから来ちゃった。はい。今朝採れたシャインマスカット。みんなで食べて」

「シャインマスカットですって!? あの存在するかどうか研究者たちが今でも論争を繰り広げている幻のぶどうが、こんな簡単に?」

背景に雷が落ちまくっているであろうボーン。

「あ、アタイさ、願いながら畑を耕したらなんでも栽培できるんだよ。リクエストがあったら言ってね」

「願ったらそれが栽培できるって農業の原理をぶっ壊してるじゃないですか。でも、パイナップルはさすがに無理ですよね? ここは森の中ですし」

「そんなものあちこちで採れすぎて安値で八百屋で売ってるよ?」

「なんですとぉ!?」

派手に驚くボーン。

「この様子じゃ、まだ何もできていないみたいね。姫様、お腹が空いてるから冷蔵庫からなんか拝借してもいい?」

「え? いいけど、今日はまだ買い出しに行ってないはずよ?」

「ご飯と卵と醤油があればいいよ」

「あの。一体何を?」

オロオロするボーンに、

「卵かけご飯だけど」

「試食してみても?」

「どうぞ」

一口食べると、料理漫画みたいなリアクションをして倒れてしまった。

「姫様、どうすんのこれ?」



「首都といっても田舎の森だとあなどり、申し訳ございませんでした。この地はどこよりも食べ物が美味しいと思わされました」

気を取り直したボーンは、玉座でため息をついていた私に深く謝罪をした。

「この村は土壌が特殊すぎるけど、他の街でとれた食材もおいしいと思うんだけどなぁ。農家さんが一生懸命育てただけあって違いはないと思うよ?」

「確かにおっしゃるとおりです。料理人として初心に帰り修業に励みたいと思います」

「ま、自分に納得したらまた宮廷料理人として名乗り出るといいわ」

「ありがとうございます。その時はまたよろしくお願いします。ところでお一つ質問をしてもよろしいですか?」

「私が答えられる範囲から」

「この村でとれる食材はしゃべらないのですか?」

「むしろしゃべる食材を見たことがないわ」

「包丁を入れると断末魔が聞こえません?」

「もうそれ、ホラーじゃない」

「他にも疾風ジャガイモとか、浮遊タマネギとかがあるんですが、捕まえて切ろうとしたり茹でようとしたら暴れるんです」

「なんで野菜は捕まえる物なのよ。その村おかしいんじゃないの?」

「一応採ってきたんですけど、食べます?」

ボーンは風呂敷で包んだ箱を差し出してきた。

「この村の生態系壊す気?」

私は嫌がると、ナナミが慌ててやって来た。

「姫様。遅れて申し訳ございませんでした」

「ちょうどよかった。彼、地元からしゃべる人参やら、吠えるきゅうりやら持って来てるっぽいけど、調理してもらって食べる?」

「食べたい人、いるんですか?」

こうして彼が地元に帰った後、世界は広いんだなあと思いながら、卵かけご飯を堪能するのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サディストの私がM男を多頭飼いした時のお話

トシコ
ファンタジー
素人の女王様である私がマゾの男性を飼うのはリスクもありますが、生活に余裕の出来た私には癒しの空間でした。結婚しないで管理職になった女性は周りから見る目も厳しく、私は自分だけの城を作りまあした。そこで私とM男の週末の生活を祖紹介します。半分はノンフィクション、そして半分はフィクションです。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...