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どうも、聖剣です
どうも、聖剣です
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「会長!!」
ペタのテンションだけが爆上がりで、ルイスへキラキラと憧れの視線を送っている。
他は、転移なのかなんなのか、突然現れたルイスにひたすら困惑していた。それに「敵は?」と尋ねられても、今は自分たち以外には聖剣しか――
「ルイス、どうしてここに?」
皆が戸惑いからなかなか復活できなかったため、仕方なくアゲハが口を開いた。
「アゲハ、無事で良かった! 君が襲われているような気がしたから、気配を追って転移してきたんだ。戦闘中かと思ったんだけど……見た限り、敵はいないね?」
なんと、ルイスが現れたのは爽やか会長のイメージに似合わないストーカーチックな理由だった。
「敵は倒して、今から勇者がその聖剣を抜くところだったんだ」
「その聖剣…? あっ! これ聖剣か!」
アゲハに顎で示され、初めて自分が握っているものに目を向けたルイス。
黄金の柄にクリスタルのような刀身。とにかく光り輝く剣。光属性と相性が良さそうで、事実勇者の光魔法の威力を上げられるよう作られている。
代々勇者が持ってくるせいで、アゲハが見飽きているデザインでもある。
「えーっと、そうだね、勇者の剣だからね。この剣を抜けた人が勇者って言われてるよね…」
ルイスは珍しく情報処理に時間がかかっていた。
「よし。えい!」
そして何を思ったか、おもむろに聖剣を祭壇の元の位置に突き刺した。
「さあ勇者! この聖剣が抜けるかな?」
「さらっとなかったことにしたー!?」
復活してしまったフレイが叫んだ。
「嫌だな、俺は聖剣なんて抜いていないよ。勇者の剣を俺が抜けるわけないじゃないか」
ルイスは嘘のように綺麗な笑顔だった。
「さあ勇者! 早くおいで」
「……え!? あ、うん!」
フリーズしていた勇だが、何度も呼びかけられてようやく動き出した。
勇は勇で困惑が深く、結果記憶を都合よく改竄したらしい。目の前の光景が信じられず、都合よく忘れることにしたのだから、もう天賦の才能である。
ルイスが抜いたことは忘れ、聖剣を握り、引き抜き、まるで自分が初めて聖剣を抜いたかのように頭上に掲げ、まるで勇者かのようなポーズを取る。
「聖剣、ゲットだぜ!」
パチパチパチパチパチパチ。
そのネタは地球でなければ通じないだろう、とアゲハが思う横で、雑な乾いた拍手が数個。
「……なんか柄が温かい気がするけど…」
「ゴホン、気の所為だ! よし、これで真の勇者誕生だな。それなら俺は戻って報告することにしよう。ついでだし、他に用事があれば聞こうかな」
ルイスは咳払いして勇を騙す。
何もせずに立ち去るのがダサいなと思ってしまったルイスは、どうせ何もないだろうなと思いつつもとりあえず問いかけた。
「そうね…。外に出たいのもあるけど…」
リズが口にしたのは、落下のみで聖剣にたどり着いてしまった一行にとって必要不可欠なものだった。今から正規ルートで上がるにしても戦闘要員はフレイとアゲハのみだし地理もわからず、元きた穴を上がるにはリズもクレアも魔力が足りない。
以前ギルド依頼で集団転移を使ったアゲハなら今回も全員を入口に転移させられるだろう――ということは、同級生にできるレベルを超えているため、皆の頭から抜け落ちていた。
「わかった。全員、近くの街に【集団転移】!」
「うわっ! え……ここ、聖国…?」
「洞窟の入口までのつもりだったのに…」
フレイとリズは桁外れなルイスに驚いている。クレアは辺りを見渡し、呆れたような諦めたようなため息をついた。「規格外の会長だもんな」とでも思ったようだ。
アゲハだけが驚いておらず、1番望んでいることを口にした。
「ルイス、王女を連れ帰ってもらえるか。戦力にならないうえに気を遣う」
アゲハが王女に対して気を遣ったことなど皆無だったが、こんな雑魚痴女でも人間界には必要らしいので、とりあえずそう言っておく。
「ああ、そうだ。王女には帰還命令が出ているんだよ。っていうことで王女様、来てもらおうか。国王が探し回ってるよ」
ルイスの見目が麗しいだけに、連行がエスコートに見えなくもない。
そしてルイス、王女「様」と呼べるなら国王にも「様」を付けろ……とは、アゲハにもあの国王を敬いたくない気持ちはわかったので言わなかった。
「いや! 城になんて戻らないわ!! 助けて勇様っ!!」
「彼女を離せ!」
「一般人に聖剣を向けるのはやめておこうか」
持っていた聖剣をそのまま向けてくる勇にルイスは苦笑する。
「会長…一般人…?」
「絶対違うわよね、聖剣抜いたし」
ペタとリズは余計なところにツッコんでいる。
「国王から王女を連れ戻すよう言われてたんだ。影が薄いから忘れるところだったよ。危ない危ない」
誰の影が薄いのかは、聞いてはならない。きっとルイスのなかではアゲハ以外皆等しく影が薄い。
「あ、あれって聖剣じゃないか?」
「聖剣? 前の人魔大戦で失くしたっていう?」
「セイントと戦争したときに差し押さえられたんじゃなかったか?」
転移した場所は聖国首都の街のはずれだったが、少年少女の集団で仲間割れのように剣を向けていて、さらにはその剣が夕日に照らされているだけにしては異常なくらい発光しているとあっては、さすがにそろそろ人目を引き始めた。
「じゃあアレが勇者様ってことが?」
「勇者様が剣を向けてるってことは、あれは敵なのか?」
「勇者様の敵ってことは、魔族に決まってるだろ!」
「魔族を捕らえろ!」
野次馬の声が大きくなり、より人も集まり、誤解が広まっていく。
「違う! この人は……」
我に返ったフレイが懸命に声を張り上げても、勇者の到来に感激している群衆には届かない。
「俺も仕事だからね。捕まるわけにはいかないし、そろそろ帰らせてもらうよ。アゲハ、呼んでくれればすぐに来るからね」
ルイスは爽やかに言い残し、アゲハにウインクしてから王女ごと転移して姿を消した。
「マリアッ!」
悲痛な声。
「呼んでくれれば……。合図の方法がわからないが、まさか名前を呼べばというわけではあるまいな?」
それは下僕の呼び出し方と同じである。アゲハはひとり呟いて、ふむと唸った。
ペタのテンションだけが爆上がりで、ルイスへキラキラと憧れの視線を送っている。
他は、転移なのかなんなのか、突然現れたルイスにひたすら困惑していた。それに「敵は?」と尋ねられても、今は自分たち以外には聖剣しか――
「ルイス、どうしてここに?」
皆が戸惑いからなかなか復活できなかったため、仕方なくアゲハが口を開いた。
「アゲハ、無事で良かった! 君が襲われているような気がしたから、気配を追って転移してきたんだ。戦闘中かと思ったんだけど……見た限り、敵はいないね?」
なんと、ルイスが現れたのは爽やか会長のイメージに似合わないストーカーチックな理由だった。
「敵は倒して、今から勇者がその聖剣を抜くところだったんだ」
「その聖剣…? あっ! これ聖剣か!」
アゲハに顎で示され、初めて自分が握っているものに目を向けたルイス。
黄金の柄にクリスタルのような刀身。とにかく光り輝く剣。光属性と相性が良さそうで、事実勇者の光魔法の威力を上げられるよう作られている。
代々勇者が持ってくるせいで、アゲハが見飽きているデザインでもある。
「えーっと、そうだね、勇者の剣だからね。この剣を抜けた人が勇者って言われてるよね…」
ルイスは珍しく情報処理に時間がかかっていた。
「よし。えい!」
そして何を思ったか、おもむろに聖剣を祭壇の元の位置に突き刺した。
「さあ勇者! この聖剣が抜けるかな?」
「さらっとなかったことにしたー!?」
復活してしまったフレイが叫んだ。
「嫌だな、俺は聖剣なんて抜いていないよ。勇者の剣を俺が抜けるわけないじゃないか」
ルイスは嘘のように綺麗な笑顔だった。
「さあ勇者! 早くおいで」
「……え!? あ、うん!」
フリーズしていた勇だが、何度も呼びかけられてようやく動き出した。
勇は勇で困惑が深く、結果記憶を都合よく改竄したらしい。目の前の光景が信じられず、都合よく忘れることにしたのだから、もう天賦の才能である。
ルイスが抜いたことは忘れ、聖剣を握り、引き抜き、まるで自分が初めて聖剣を抜いたかのように頭上に掲げ、まるで勇者かのようなポーズを取る。
「聖剣、ゲットだぜ!」
パチパチパチパチパチパチ。
そのネタは地球でなければ通じないだろう、とアゲハが思う横で、雑な乾いた拍手が数個。
「……なんか柄が温かい気がするけど…」
「ゴホン、気の所為だ! よし、これで真の勇者誕生だな。それなら俺は戻って報告することにしよう。ついでだし、他に用事があれば聞こうかな」
ルイスは咳払いして勇を騙す。
何もせずに立ち去るのがダサいなと思ってしまったルイスは、どうせ何もないだろうなと思いつつもとりあえず問いかけた。
「そうね…。外に出たいのもあるけど…」
リズが口にしたのは、落下のみで聖剣にたどり着いてしまった一行にとって必要不可欠なものだった。今から正規ルートで上がるにしても戦闘要員はフレイとアゲハのみだし地理もわからず、元きた穴を上がるにはリズもクレアも魔力が足りない。
以前ギルド依頼で集団転移を使ったアゲハなら今回も全員を入口に転移させられるだろう――ということは、同級生にできるレベルを超えているため、皆の頭から抜け落ちていた。
「わかった。全員、近くの街に【集団転移】!」
「うわっ! え……ここ、聖国…?」
「洞窟の入口までのつもりだったのに…」
フレイとリズは桁外れなルイスに驚いている。クレアは辺りを見渡し、呆れたような諦めたようなため息をついた。「規格外の会長だもんな」とでも思ったようだ。
アゲハだけが驚いておらず、1番望んでいることを口にした。
「ルイス、王女を連れ帰ってもらえるか。戦力にならないうえに気を遣う」
アゲハが王女に対して気を遣ったことなど皆無だったが、こんな雑魚痴女でも人間界には必要らしいので、とりあえずそう言っておく。
「ああ、そうだ。王女には帰還命令が出ているんだよ。っていうことで王女様、来てもらおうか。国王が探し回ってるよ」
ルイスの見目が麗しいだけに、連行がエスコートに見えなくもない。
そしてルイス、王女「様」と呼べるなら国王にも「様」を付けろ……とは、アゲハにもあの国王を敬いたくない気持ちはわかったので言わなかった。
「いや! 城になんて戻らないわ!! 助けて勇様っ!!」
「彼女を離せ!」
「一般人に聖剣を向けるのはやめておこうか」
持っていた聖剣をそのまま向けてくる勇にルイスは苦笑する。
「会長…一般人…?」
「絶対違うわよね、聖剣抜いたし」
ペタとリズは余計なところにツッコんでいる。
「国王から王女を連れ戻すよう言われてたんだ。影が薄いから忘れるところだったよ。危ない危ない」
誰の影が薄いのかは、聞いてはならない。きっとルイスのなかではアゲハ以外皆等しく影が薄い。
「あ、あれって聖剣じゃないか?」
「聖剣? 前の人魔大戦で失くしたっていう?」
「セイントと戦争したときに差し押さえられたんじゃなかったか?」
転移した場所は聖国首都の街のはずれだったが、少年少女の集団で仲間割れのように剣を向けていて、さらにはその剣が夕日に照らされているだけにしては異常なくらい発光しているとあっては、さすがにそろそろ人目を引き始めた。
「じゃあアレが勇者様ってことが?」
「勇者様が剣を向けてるってことは、あれは敵なのか?」
「勇者様の敵ってことは、魔族に決まってるだろ!」
「魔族を捕らえろ!」
野次馬の声が大きくなり、より人も集まり、誤解が広まっていく。
「違う! この人は……」
我に返ったフレイが懸命に声を張り上げても、勇者の到来に感激している群衆には届かない。
「俺も仕事だからね。捕まるわけにはいかないし、そろそろ帰らせてもらうよ。アゲハ、呼んでくれればすぐに来るからね」
ルイスは爽やかに言い残し、アゲハにウインクしてから王女ごと転移して姿を消した。
「マリアッ!」
悲痛な声。
「呼んでくれれば……。合図の方法がわからないが、まさか名前を呼べばというわけではあるまいな?」
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