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ニキビができたよ!
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「ひゃあ、よかった! ついにできたかぁ! 本当によかったぁ」
学校の先生が飛び上がって喜んだよ。部屋のなかにつないだオンライン授業用のモニターのなかだけど。
でもね、こうして褒められすぎると、照れくささを通り越して、なんだか妙な気分になってくる。
気恥ずかしいというか、照れくさいというか、そんな感じ。
だって、あたしはなにも特別なことなんかしていないよ。政府から全学童・生徒に配給された〈ニキビの素〉を飲んだだけ。そうなんだ、これは国民の義務なんだって。法律で決まっているみたい。
でもね、誰もがニキビができるわけじゃないの。
……ニキビができる確率は、全国平均0.002%ほどらしいから、まあその点は少しだけ自慢していいのかもしれないけれど。
だからさ、ニキビができるってことは、選ばれた、ってことなんだってさ。
おかしいね、不思議だね。
お父さんもお母さんも
『がんばったわね、よかった、よかった、誇らしいわ』
なんて、喜んでくれたよ。
でも、みんなから同じことを言われると、かえってこれから先のことがちょっと不安になってくる……。
不安? というのは、できたニキビの中に、今度は“明日の種《たね》”を植え付けるの。
ここからが大変なの。
明日の種を植えても、芽生えるかどうかは、これまた天文学的確率みたいだから。だから、慎重に慎重に、政府の人が家までやってきて、検査をして、それから植え付けるみたいだけど、芽がでるかどうかを考えると不安になってくるの。
ま、まだ先の話なんだけどね。
ニキビができたとき、お父さんは、
「おお、さっそく、国家安全保障大臣からお祝いの電話をもらったぞ。首相官邸からも祝メールが届いたぁ!」
と、てんやわんや。お父さんが大はしゃぎしてるのは、ニキビ特典があるからね。
一つは、ニキビ給付金。
金額は……その年度にニキビができた小・中学生の総数によって異なるけど、ま、一家四人が五年はラクに暮らせるレベルだって……。
二つ目は、県警から特殊リムジンがドライバー付で一定期間、貸与されるの。ドライバーはもちろん警官、あたしの警護を兼ねるみたい。
ちなみに、車の愛称は、ニキビ・カー。あ、これ、「ニキビかぁ?」のシャレみたい。保健管理省のお役人さんが考えたネーミングらしいけど、案外、みんな、使ってるよ。
三つ目は、ニキビがもっと大きくなる栄養素を含んだ特別食が一日三度、県庁から届けられるの。外出はさっき言った県警専用リムジンでの送り迎え。肌が外の光に触れては、ニキビが育たないから。だって、外には、ニキビの生育を邪魔する光がいっぱいだから。
でもね、家の中は……危険はないよ。
だから、お父さんも仕事は家でする。お母さんも、ほとんど外には出かけない。会社の会議も、商談も、部品の発注も、自治会の会合も、親戚の談笑も、すべてモニターですませられるから。
お買い物も、ぜんぶ宅配。
第一、外を歩いている人は、まったくいないよ。特殊仕様車がないと外にはいけない、出られない……。
だって、外には危険がいっぱい。危ない光がいっぱいだから。
学校の先生が飛び上がって喜んだよ。部屋のなかにつないだオンライン授業用のモニターのなかだけど。
でもね、こうして褒められすぎると、照れくささを通り越して、なんだか妙な気分になってくる。
気恥ずかしいというか、照れくさいというか、そんな感じ。
だって、あたしはなにも特別なことなんかしていないよ。政府から全学童・生徒に配給された〈ニキビの素〉を飲んだだけ。そうなんだ、これは国民の義務なんだって。法律で決まっているみたい。
でもね、誰もがニキビができるわけじゃないの。
……ニキビができる確率は、全国平均0.002%ほどらしいから、まあその点は少しだけ自慢していいのかもしれないけれど。
だからさ、ニキビができるってことは、選ばれた、ってことなんだってさ。
おかしいね、不思議だね。
お父さんもお母さんも
『がんばったわね、よかった、よかった、誇らしいわ』
なんて、喜んでくれたよ。
でも、みんなから同じことを言われると、かえってこれから先のことがちょっと不安になってくる……。
不安? というのは、できたニキビの中に、今度は“明日の種《たね》”を植え付けるの。
ここからが大変なの。
明日の種を植えても、芽生えるかどうかは、これまた天文学的確率みたいだから。だから、慎重に慎重に、政府の人が家までやってきて、検査をして、それから植え付けるみたいだけど、芽がでるかどうかを考えると不安になってくるの。
ま、まだ先の話なんだけどね。
ニキビができたとき、お父さんは、
「おお、さっそく、国家安全保障大臣からお祝いの電話をもらったぞ。首相官邸からも祝メールが届いたぁ!」
と、てんやわんや。お父さんが大はしゃぎしてるのは、ニキビ特典があるからね。
一つは、ニキビ給付金。
金額は……その年度にニキビができた小・中学生の総数によって異なるけど、ま、一家四人が五年はラクに暮らせるレベルだって……。
二つ目は、県警から特殊リムジンがドライバー付で一定期間、貸与されるの。ドライバーはもちろん警官、あたしの警護を兼ねるみたい。
ちなみに、車の愛称は、ニキビ・カー。あ、これ、「ニキビかぁ?」のシャレみたい。保健管理省のお役人さんが考えたネーミングらしいけど、案外、みんな、使ってるよ。
三つ目は、ニキビがもっと大きくなる栄養素を含んだ特別食が一日三度、県庁から届けられるの。外出はさっき言った県警専用リムジンでの送り迎え。肌が外の光に触れては、ニキビが育たないから。だって、外には、ニキビの生育を邪魔する光がいっぱいだから。
でもね、家の中は……危険はないよ。
だから、お父さんも仕事は家でする。お母さんも、ほとんど外には出かけない。会社の会議も、商談も、部品の発注も、自治会の会合も、親戚の談笑も、すべてモニターですませられるから。
お買い物も、ぜんぶ宅配。
第一、外を歩いている人は、まったくいないよ。特殊仕様車がないと外にはいけない、出られない……。
だって、外には危険がいっぱい。危ない光がいっぱいだから。
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