出向先は、剣と魔法と人事部でした 〜評価されなかった社会人の異世界改革〜

怪獣姫

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納得が、金になるまで

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 ギルドに戻った伊勢は、再び冒険者に声をかけた。
 今度は、反応が違った。

「……クエスト、行ったんだってな」
「登竜門のアレ、だろ?死にかけたって聞いたぞ」

 視線に、拒絶はない。
 同じ場所を見た人間として、見られている。



「正直に言う」
 仮説を伝えた直後、ある冒険者が口を開いた。

「俺たちは、命を張ってる。その結果を、“術式で一瞬”って言われると……信じきれねぇ」

 別の冒険者が続ける。
「鑑定士に金を払うのはな、 “ちゃんと見てもらった”って証なんだ」
「手数料は、安心料だ」

 伊勢は、黙って聞いた。
 仮説は、完全に実証された。



「……善意が、ズレてたな」
 執務室で、シャウプは深く息を吐いた。

「はい」
 伊勢は、はっきり答えた。

「冒険者が求めていたのは、公平そのものじゃありません」
「納得できる公平さです」

 リリアが静かに補足する。
「術式は、“説明を省きすぎていました”」

 リリアは、伊勢を見るときだけ、
 書類から視線を上げるようになっていた。



 伊勢は、視点を変えた。
 術式のターゲットは、冒険者ではなく――査定士。

「この術式、補助として使いませんか。もちろん使用料はいただきますが。」

 最初、査定士たちは警戒した。
 だが、使った瞬間、空気が変わる。

「……下処理が終わってる」
「判断が楽だ」

 術式は、結論を奪わない。結論を支える。



 やがて、査定士たちから声が上がった。
「使用料を払ってもいい」
「この価値はある」

 ギルドは、ようやく気づく。

 ――改善は、
 を間違えると失敗する。



 夕暮れのギルド。
 伊勢は、静かに息を吐いた。

 シャウプが、伊勢の肩を叩く。
「お前は、本当に裏方向きだな」

「……伊勢様は、
正しい判断をされる方だと思います」

 不意に、リリアがそう言った。
 事務的な声ではなかった。

「ただ――それが、いつも一番“楽な判断”とは限りませんね」

 伊勢は、小さく笑った。

 公平とは、速さではない。数字でもない。

 命を懸けた人間が、納得できるかどうかだ。

 もし、それを忘れた改善なら――
 それは、本当に正しいのだろうか。
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