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15.どうして王太子が
シャルロットはレオンスのほうを見る。
「目に留まった?」
レオンスは切なげに瞳を翳らせた。
「そうだよ。おまえはこんなに可愛いんだ。殿下に気に入られたのかも」
「絶対あり得ませんわ」
シャルロットは断言する。
目に留まって気に入られるわけがない。シャルロットはエドゥアールを踏みつけ、平手打ちしたのだ。目をつけられて、処罰されることはあるかもしれない。
それで今朝からシャルロットはずんと落ち込んでいる。
「おまえはラヴォワ公爵家の令嬢で、殿下にも嫁げる身分だ」
身分としてはそうで、現にゲームでは王太子と婚約していた。
レオンスはシャルロットを見つめる。
「おまえはオレの自慢の妹だよ」
「お兄様……お兄様もわたくしにとって、自慢ですけれど」
レオンスはシャルロットを引き寄せ、髪に口付けた。
父や使用人の前でもいつもこうである。
「シャルロット」
レオンスの眼差しが熱っぽく輝く。
「なぜおまえはそんなに可愛い」
ぎゅっと抱きしめられ、シャルロットはたまらず兄から離れた。
「わ、わたくし、もう部屋に戻りますわ」
くらくらしてしまう。レオンスはブルーブラックの髪をゆるくかきあげた。
「わかった……おやすみ」
「おやすみなさい」
シャルロットはレオンスの部屋から出た。蠱惑的な人物が兄だと眩暈がする。
※※※※※
(どうして王太子が家に来た)
レオンスは怪訝に思った。
今朝、王太子が前触れもなくこの屋敷を訪れた。
父は王太子を応接室に通し、レオンスもその場に同席した。
「シャルロットという娘がいるか? いるなら会いたい」
エドゥアールは唐突にそう言った。
父は、メイドにすぐにシャルロットを呼びに行かせた。
だが妹は稽古に熱中していた。あとでと返事をして、来なかった。
応接室でそれを聞いたエドゥアールは、眉をひそめて立ち上がった。
「娘はどこにいる。案内しろ」
庭にいるシャルロットの元まで、王太子自ら足を運んだ。
シャルロットとエドゥアールが会ったことはないはずだ。
王太子は可愛い妹を、どこかで偶然目にしたのか。
シャルロットは姿かたちが綺麗だし、何より性格が愛おしい。
溌剌として、気立てが良く、心温かだ。
外見は以前と同じでも、表情や、内面が別人のように変わった。
王太子の目に留まったことは大いにあり得た。
まだ警戒する時期ではないと、呑気に構えていた己にレオンスは腹が立った。
天使のようなシャルロットを他の男が放っておくわけがなかったのだ。
(妹はオレのだ)
たとえ、この国の次期王だとしても、誰にも渡せない。
まだ婚約などの話が出ているわけではないが、王太子直々に、わざわざ家まで会いにやってきたのは、妹を気に入ってしまったからだとしか考えられなかった。
兄の自分でさえも骨抜きにさせたシャルロット。王太子も惹きつけるだろう。
レオンスは可能ならば、妹を自室に閉じ込めて誰にも見せたくなかった。
一日中シャルロットを膝の上に置いて、抱きしめていたかった。
自分は養子だ。妹との婚姻は可能である。
しかしシャルロットは、まだレオンスを結婚相手として見ることはできないだろう。
もう少し待って、話を進めるつもりだった。
急いては事を仕損じる。
ラヴォワ公爵家の跡取りとして日々学問や剣術、心身の鍛練に励み、領地経営について学んでいる。
父に、レオンスとシャルロットの結婚が最良だと、シャルロットを他には任せられないと考えてもらうため、精進していた。
妹には、今は懐いてもらえるように接している。
自らレオンスと結婚したいと望むよう、ゆっくり時間をかけて、妹の心を掴むつもりだった。
だが王太子がシャルロットに会いに屋敷に来たことで、自分が悠長にしすぎていたことに気づいた。
妹を王太子に奪われるかもしれない。
あと数年もすればシャルロットには求婚が殺到するとは思っていたが、速やかに今、手を打たなければならない。
それでレオンスは家にクロヴィスを呼んだ。
「目に留まった?」
レオンスは切なげに瞳を翳らせた。
「そうだよ。おまえはこんなに可愛いんだ。殿下に気に入られたのかも」
「絶対あり得ませんわ」
シャルロットは断言する。
目に留まって気に入られるわけがない。シャルロットはエドゥアールを踏みつけ、平手打ちしたのだ。目をつけられて、処罰されることはあるかもしれない。
それで今朝からシャルロットはずんと落ち込んでいる。
「おまえはラヴォワ公爵家の令嬢で、殿下にも嫁げる身分だ」
身分としてはそうで、現にゲームでは王太子と婚約していた。
レオンスはシャルロットを見つめる。
「おまえはオレの自慢の妹だよ」
「お兄様……お兄様もわたくしにとって、自慢ですけれど」
レオンスはシャルロットを引き寄せ、髪に口付けた。
父や使用人の前でもいつもこうである。
「シャルロット」
レオンスの眼差しが熱っぽく輝く。
「なぜおまえはそんなに可愛い」
ぎゅっと抱きしめられ、シャルロットはたまらず兄から離れた。
「わ、わたくし、もう部屋に戻りますわ」
くらくらしてしまう。レオンスはブルーブラックの髪をゆるくかきあげた。
「わかった……おやすみ」
「おやすみなさい」
シャルロットはレオンスの部屋から出た。蠱惑的な人物が兄だと眩暈がする。
※※※※※
(どうして王太子が家に来た)
レオンスは怪訝に思った。
今朝、王太子が前触れもなくこの屋敷を訪れた。
父は王太子を応接室に通し、レオンスもその場に同席した。
「シャルロットという娘がいるか? いるなら会いたい」
エドゥアールは唐突にそう言った。
父は、メイドにすぐにシャルロットを呼びに行かせた。
だが妹は稽古に熱中していた。あとでと返事をして、来なかった。
応接室でそれを聞いたエドゥアールは、眉をひそめて立ち上がった。
「娘はどこにいる。案内しろ」
庭にいるシャルロットの元まで、王太子自ら足を運んだ。
シャルロットとエドゥアールが会ったことはないはずだ。
王太子は可愛い妹を、どこかで偶然目にしたのか。
シャルロットは姿かたちが綺麗だし、何より性格が愛おしい。
溌剌として、気立てが良く、心温かだ。
外見は以前と同じでも、表情や、内面が別人のように変わった。
王太子の目に留まったことは大いにあり得た。
まだ警戒する時期ではないと、呑気に構えていた己にレオンスは腹が立った。
天使のようなシャルロットを他の男が放っておくわけがなかったのだ。
(妹はオレのだ)
たとえ、この国の次期王だとしても、誰にも渡せない。
まだ婚約などの話が出ているわけではないが、王太子直々に、わざわざ家まで会いにやってきたのは、妹を気に入ってしまったからだとしか考えられなかった。
兄の自分でさえも骨抜きにさせたシャルロット。王太子も惹きつけるだろう。
レオンスは可能ならば、妹を自室に閉じ込めて誰にも見せたくなかった。
一日中シャルロットを膝の上に置いて、抱きしめていたかった。
自分は養子だ。妹との婚姻は可能である。
しかしシャルロットは、まだレオンスを結婚相手として見ることはできないだろう。
もう少し待って、話を進めるつもりだった。
急いては事を仕損じる。
ラヴォワ公爵家の跡取りとして日々学問や剣術、心身の鍛練に励み、領地経営について学んでいる。
父に、レオンスとシャルロットの結婚が最良だと、シャルロットを他には任せられないと考えてもらうため、精進していた。
妹には、今は懐いてもらえるように接している。
自らレオンスと結婚したいと望むよう、ゆっくり時間をかけて、妹の心を掴むつもりだった。
だが王太子がシャルロットに会いに屋敷に来たことで、自分が悠長にしすぎていたことに気づいた。
妹を王太子に奪われるかもしれない。
あと数年もすればシャルロットには求婚が殺到するとは思っていたが、速やかに今、手を打たなければならない。
それでレオンスは家にクロヴィスを呼んだ。
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