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26.媚薬2
クロヴィスは身を起こす。眼差しは熱っぽかった。日頃の無表情の彼とは違い、どこか隙があって、無防備だった。
シャルロットはいつもは彼を恐れているのだが、媚薬の効果か、怯えが完全に消えていた。
しかし心臓は違うように高鳴っていて、全身が熱く、手が震えた。彼にグラスを差し出す際、指が触れ合い、ぴりっと甘く痺れるような感覚がして、互いに手を離した。すると彼の胸元に水がかかってしまった。
「申し訳ありません……!」
シャルロットはポケットからハンカチを取り、彼の胸元を拭いた。するとクロヴィスに手首を掴まれた。
「今、僕に触れるな」
赤い髪の下、艶やかに光る双眸で見つめられ、掴まれた手が熱く、シャルロットは瞳が潤んだ。
どきどきして仕方ない。彼は親指の腹で、シャルロットの掌を撫でた。
そうされるだけで、甘い感覚が走った。
クロヴィスは息を乱してシャルロットを見つめる。
「一時間、この室内の、僕から離れたところにいてくれ。今、近くにいると、何をしてしまうかわからない」
「はい……」
彼は手首を離した。シャルロットは移動しようとしたが、酩酊したようにぼうっとしていて、彼に倒れ込んでしまった。
クロヴィスの上に乗ってしまい、甘やかな熱を感じた。彼は逞しく、早い鼓動を打っている。彼の赤髪が寝台の上で広がって乱れた。
驚いて二人ともしばしそのまま動けなかった。
「シャルロット……離れてくれるか……?」
シャルロットは顎を引く。身を起こし、彼から離れた場所に移動した。
どぎまぎしながら一時間過ごし、シャルロットの違和感は消えた。
「わたくしの効果は消えたようですわ、クロヴィス様」
「ではレオンスの元に行き、帰ってくれ。僕はまだ効果が切れていないから、見送れない」
「わかりました」
苦しげに呼吸しているクロヴィスを心配に思いながら、シャルロットは一階に降りた。
居間では、侯爵夫妻とレオンスが談笑していた。
優しげな侯爵夫妻が媚薬を盛ったなど、にわかには信じられない。
シャルロットが足を止めて眺めていると、侯爵夫妻はシャルロットに気づき、微笑んだ。
「シャルロットさん」
「息子とは仲良く過ごせたかな?」
「はい……あの……そろそろわたくし、お暇しようと思います」
侯爵夫妻は意味深な感じで見てきたが、シャルロットは兄と馬車に乗って帰路についた。
※※※※※
「父上、母上。紅茶に媚薬を盛りましたね」
ラヴォワ家の兄妹が帰り、自身の効果も切れたあと、クロヴィスは両親を問い詰めた。
両親は悪びれずに認めた。
「私たちはおまえのためを思ってそうしたのだよ」
「早くシャルロットさんに嫁いできてもらいたいのよ」
クロヴィスは呆れ返った。
「何を考えているんですか。結婚前に何かをして彼女に傷をつければ、ラヴォワ家も黙っていません」
レオンスが許さない。クロヴィスは彼に殺されるだろう。
両親は顔を見合わせる。
「だが、おまえとシャルロットさんは結婚をするのだ」
「少し早くなるだけじゃないの」
「どこが少しなんですか。彼女の学院卒業を待って結婚すると話しているでしょう。もし今後、今日のようなことをすれば、僕は彼女との婚約を解消します」
すると両親は激しくうろたえた。
「そ、それは駄目だ!」
「あなたがせっかく結婚する気になったというのに!」
クロヴィスは両親に念を押す。
「では、このようなことはもうなさらないでください。彼女をしょっちゅう呼びつけるのもやめてもらえますか。彼女に負担をかけてしまいます」
クロヴィスはそれを両親に約束させたあと、部屋に戻った。
両親の行動は、自分もレオンスも予想だにしていなかった。
最愛の妹が媚薬を盛られたと知れば、どれほどレオンスは荒れたことか……。
(今日は危なかった)
レオンスは、彼自身がシャルロットと結婚するため、クロヴィスに仮の婚約をさせるほど、妹を愛しているのだ。
シャルロットはいつもは彼を恐れているのだが、媚薬の効果か、怯えが完全に消えていた。
しかし心臓は違うように高鳴っていて、全身が熱く、手が震えた。彼にグラスを差し出す際、指が触れ合い、ぴりっと甘く痺れるような感覚がして、互いに手を離した。すると彼の胸元に水がかかってしまった。
「申し訳ありません……!」
シャルロットはポケットからハンカチを取り、彼の胸元を拭いた。するとクロヴィスに手首を掴まれた。
「今、僕に触れるな」
赤い髪の下、艶やかに光る双眸で見つめられ、掴まれた手が熱く、シャルロットは瞳が潤んだ。
どきどきして仕方ない。彼は親指の腹で、シャルロットの掌を撫でた。
そうされるだけで、甘い感覚が走った。
クロヴィスは息を乱してシャルロットを見つめる。
「一時間、この室内の、僕から離れたところにいてくれ。今、近くにいると、何をしてしまうかわからない」
「はい……」
彼は手首を離した。シャルロットは移動しようとしたが、酩酊したようにぼうっとしていて、彼に倒れ込んでしまった。
クロヴィスの上に乗ってしまい、甘やかな熱を感じた。彼は逞しく、早い鼓動を打っている。彼の赤髪が寝台の上で広がって乱れた。
驚いて二人ともしばしそのまま動けなかった。
「シャルロット……離れてくれるか……?」
シャルロットは顎を引く。身を起こし、彼から離れた場所に移動した。
どぎまぎしながら一時間過ごし、シャルロットの違和感は消えた。
「わたくしの効果は消えたようですわ、クロヴィス様」
「ではレオンスの元に行き、帰ってくれ。僕はまだ効果が切れていないから、見送れない」
「わかりました」
苦しげに呼吸しているクロヴィスを心配に思いながら、シャルロットは一階に降りた。
居間では、侯爵夫妻とレオンスが談笑していた。
優しげな侯爵夫妻が媚薬を盛ったなど、にわかには信じられない。
シャルロットが足を止めて眺めていると、侯爵夫妻はシャルロットに気づき、微笑んだ。
「シャルロットさん」
「息子とは仲良く過ごせたかな?」
「はい……あの……そろそろわたくし、お暇しようと思います」
侯爵夫妻は意味深な感じで見てきたが、シャルロットは兄と馬車に乗って帰路についた。
※※※※※
「父上、母上。紅茶に媚薬を盛りましたね」
ラヴォワ家の兄妹が帰り、自身の効果も切れたあと、クロヴィスは両親を問い詰めた。
両親は悪びれずに認めた。
「私たちはおまえのためを思ってそうしたのだよ」
「早くシャルロットさんに嫁いできてもらいたいのよ」
クロヴィスは呆れ返った。
「何を考えているんですか。結婚前に何かをして彼女に傷をつければ、ラヴォワ家も黙っていません」
レオンスが許さない。クロヴィスは彼に殺されるだろう。
両親は顔を見合わせる。
「だが、おまえとシャルロットさんは結婚をするのだ」
「少し早くなるだけじゃないの」
「どこが少しなんですか。彼女の学院卒業を待って結婚すると話しているでしょう。もし今後、今日のようなことをすれば、僕は彼女との婚約を解消します」
すると両親は激しくうろたえた。
「そ、それは駄目だ!」
「あなたがせっかく結婚する気になったというのに!」
クロヴィスは両親に念を押す。
「では、このようなことはもうなさらないでください。彼女をしょっちゅう呼びつけるのもやめてもらえますか。彼女に負担をかけてしまいます」
クロヴィスはそれを両親に約束させたあと、部屋に戻った。
両親の行動は、自分もレオンスも予想だにしていなかった。
最愛の妹が媚薬を盛られたと知れば、どれほどレオンスは荒れたことか……。
(今日は危なかった)
レオンスは、彼自身がシャルロットと結婚するため、クロヴィスに仮の婚約をさせるほど、妹を愛しているのだ。
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