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第六夜 二度目のプロポーズ
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そして午後0時、駅前のホテルのラウンジにて。
陽菜はラウンジのソファーにかける元カレ徹と再会を果たした。
「陽菜。」
ソファーに優雅にかけていた徹は陽菜の姿に気付くと立ち上がり、そのまま陽菜を自分の体に寄せ抱きしめた。
「会いたかったよ。」
陽菜はいきなりの徹の行動に抵抗できず、しばらく二人は抱き合っていた。
そして向き合った徹の顔は一年半の前とほとんど変わっていなかった。
陽菜は徹を連れ、ゆっくり話ができるよう近くのフレンチレストランへ向かった。
「どうしたの?急に会いたいだなんて。」
「ごめんなさい。」
機嫌の良さが伝わってくる徹を前に、陽菜は目を瞑り深々と頭を下げた。
そして徹からプロポーズされた時に、逃げるように出て行った本当の理由を陽菜は徹に全て話したのであった。
陽菜は徹からの罵倒はなんでも聞く覚悟できた。
しかし外見も頭も、そして性格も良い徹はそんなことをするはずがなかった。
「辛かったね。俺は大丈夫だよ。ただ、俺もちゃんと陽菜に話をしに来たんだ。」
「え?」
「陽菜。結婚して欲しい。」
徹は落ち着いた口調でそう言うと、スーツの胸ポケットから水色の小箱を出した。
そして徹はその小箱を開け、ダイヤの指輪を陽菜の前に出した。
それは昔もらった指輪とは違かったが、陽菜が好きなデザインのものであった。
呆気に取られた陽菜を前に、徹は言葉を続けた。
「陽菜がいなくなって立ち直ったときに新しい恋をしようとしたけれど無理だった。俺には陽菜がいないと駄目なんだって気付かされたよ。片時も陽菜のことを忘れたことはなかった。陽菜から連絡が来なくても、無理矢理にでも今回の学会出張で陽菜に会いに行こうと思ってた。もし陽菜が東京で暮らすのが嫌なら、何処へでも行くし、もちろんここで暮らしてもいい。今度は俺のプロポーズと向き合ってくれないか?」
「徹…。私、大切な人がいるの。」
真摯な徹のプロポーズの言葉に陽菜は胸が熱くなったが、陽菜の心にはもう決めた人物がいた。
自分は徹を捨てた薄情者だが、陽菜は嘘で誤魔化すことはしたくなかった。
「そっか。もしかしてさ。もしかしてその人バーテンダーだったりする?」
「…なんで知ってるの?」
徹の突拍子もない発言に陽菜は不思議がっていると、徹は深くため息をついていった。
「昨日学会の親睦会の後、ホワイトっていうバーに行ったんだ。そこのバーテンさんに陽菜のことを話してたらなんか顔色が曇ってきて、バーテンさんの知り合いと境遇が似てるって話になってさ。」
「昨晩そんなことがあったのか…。」
徹の話に、陽菜は今朝異様に不安がっていた圭の言動に辻褄が合った。
そして陽菜は二人が一体昨晩自分に関するどんな話をしたのか気になったが、聞く勇気はなかった。
「まあ、振られるとは思ってた。ただ、最後一つだけ頼みがあるんだ。」
「なに?」
「俺、早めに夏休み取って何日かこの街に滞在する予定にしたんだ。だから次の休みの日、俺とデートをして欲しいんだ。」
「分かった。」
陽菜に断る理由はなかった。
ただ丁重に指輪は返すことを徹は理解してくれた。
そして夕方前に陽菜は自宅に帰ったのであった。
「はるちゃん、お帰り。」
「あれ?圭?」
自宅に帰ると、まだ圭が出勤していなかった。
陽菜は圭に会えたことに嬉しく思い、顔を綻ばせ微笑んだ。
しかし圭はまだ不安そうな顔をしていた。
「元カレと何を話してきたか気になる?」
「うん。あ、もしより戻したとかなら俺すぐにでも出て行くから。遠慮しないで言って欲しい。てか俺なんかと今まで一緒に住んでくれて本当にありがとう。」
そう必死に話す圭の目は潤んでいた。
陽菜は頭を優しく撫でると、一緒にソファーにかけた。
「ちゃんと別れを告げてきたの。許してくれた。でもまたプロポーズされて三日後にデートすることになっちゃった。」
「プロポーズ!デート!」
「てかそれより!」
圭が二つの言葉に呆気に取られてるうちに、陽菜は打って変わり興奮した表情で圭を見つめて言った。
「昨晩徹に会ったって本当?」
「やっぱり、はるちゃんの元カレだったんだ…。」
圭はショックが大きいようで、ソファーに項垂れた。
あんなに素敵な元カレがいたなんて、自分と比べて惨めになってしまったのである。
「私のことでなんか変なこと言ってなかった?」
「それは守秘義務。」
「えー圭!それはないってば。」
陽菜は頬を赤らめて膨らませながら、圭の体を上下に揺すった。
しかし圭は魂が抜けたような顔をしていた。
「もうバーに来ないといいんだけどなぁ。」
しかしそんな圭の願いとは裏腹に、徹は圭をおちょくるように毎晩通ったのであった。
そしていつの間にか仲良くなってしまったことは、圭はもちろん陽菜に内緒にしたのであった。
陽菜はラウンジのソファーにかける元カレ徹と再会を果たした。
「陽菜。」
ソファーに優雅にかけていた徹は陽菜の姿に気付くと立ち上がり、そのまま陽菜を自分の体に寄せ抱きしめた。
「会いたかったよ。」
陽菜はいきなりの徹の行動に抵抗できず、しばらく二人は抱き合っていた。
そして向き合った徹の顔は一年半の前とほとんど変わっていなかった。
陽菜は徹を連れ、ゆっくり話ができるよう近くのフレンチレストランへ向かった。
「どうしたの?急に会いたいだなんて。」
「ごめんなさい。」
機嫌の良さが伝わってくる徹を前に、陽菜は目を瞑り深々と頭を下げた。
そして徹からプロポーズされた時に、逃げるように出て行った本当の理由を陽菜は徹に全て話したのであった。
陽菜は徹からの罵倒はなんでも聞く覚悟できた。
しかし外見も頭も、そして性格も良い徹はそんなことをするはずがなかった。
「辛かったね。俺は大丈夫だよ。ただ、俺もちゃんと陽菜に話をしに来たんだ。」
「え?」
「陽菜。結婚して欲しい。」
徹は落ち着いた口調でそう言うと、スーツの胸ポケットから水色の小箱を出した。
そして徹はその小箱を開け、ダイヤの指輪を陽菜の前に出した。
それは昔もらった指輪とは違かったが、陽菜が好きなデザインのものであった。
呆気に取られた陽菜を前に、徹は言葉を続けた。
「陽菜がいなくなって立ち直ったときに新しい恋をしようとしたけれど無理だった。俺には陽菜がいないと駄目なんだって気付かされたよ。片時も陽菜のことを忘れたことはなかった。陽菜から連絡が来なくても、無理矢理にでも今回の学会出張で陽菜に会いに行こうと思ってた。もし陽菜が東京で暮らすのが嫌なら、何処へでも行くし、もちろんここで暮らしてもいい。今度は俺のプロポーズと向き合ってくれないか?」
「徹…。私、大切な人がいるの。」
真摯な徹のプロポーズの言葉に陽菜は胸が熱くなったが、陽菜の心にはもう決めた人物がいた。
自分は徹を捨てた薄情者だが、陽菜は嘘で誤魔化すことはしたくなかった。
「そっか。もしかしてさ。もしかしてその人バーテンダーだったりする?」
「…なんで知ってるの?」
徹の突拍子もない発言に陽菜は不思議がっていると、徹は深くため息をついていった。
「昨日学会の親睦会の後、ホワイトっていうバーに行ったんだ。そこのバーテンさんに陽菜のことを話してたらなんか顔色が曇ってきて、バーテンさんの知り合いと境遇が似てるって話になってさ。」
「昨晩そんなことがあったのか…。」
徹の話に、陽菜は今朝異様に不安がっていた圭の言動に辻褄が合った。
そして陽菜は二人が一体昨晩自分に関するどんな話をしたのか気になったが、聞く勇気はなかった。
「まあ、振られるとは思ってた。ただ、最後一つだけ頼みがあるんだ。」
「なに?」
「俺、早めに夏休み取って何日かこの街に滞在する予定にしたんだ。だから次の休みの日、俺とデートをして欲しいんだ。」
「分かった。」
陽菜に断る理由はなかった。
ただ丁重に指輪は返すことを徹は理解してくれた。
そして夕方前に陽菜は自宅に帰ったのであった。
「はるちゃん、お帰り。」
「あれ?圭?」
自宅に帰ると、まだ圭が出勤していなかった。
陽菜は圭に会えたことに嬉しく思い、顔を綻ばせ微笑んだ。
しかし圭はまだ不安そうな顔をしていた。
「元カレと何を話してきたか気になる?」
「うん。あ、もしより戻したとかなら俺すぐにでも出て行くから。遠慮しないで言って欲しい。てか俺なんかと今まで一緒に住んでくれて本当にありがとう。」
そう必死に話す圭の目は潤んでいた。
陽菜は頭を優しく撫でると、一緒にソファーにかけた。
「ちゃんと別れを告げてきたの。許してくれた。でもまたプロポーズされて三日後にデートすることになっちゃった。」
「プロポーズ!デート!」
「てかそれより!」
圭が二つの言葉に呆気に取られてるうちに、陽菜は打って変わり興奮した表情で圭を見つめて言った。
「昨晩徹に会ったって本当?」
「やっぱり、はるちゃんの元カレだったんだ…。」
圭はショックが大きいようで、ソファーに項垂れた。
あんなに素敵な元カレがいたなんて、自分と比べて惨めになってしまったのである。
「私のことでなんか変なこと言ってなかった?」
「それは守秘義務。」
「えー圭!それはないってば。」
陽菜は頬を赤らめて膨らませながら、圭の体を上下に揺すった。
しかし圭は魂が抜けたような顔をしていた。
「もうバーに来ないといいんだけどなぁ。」
しかしそんな圭の願いとは裏腹に、徹は圭をおちょくるように毎晩通ったのであった。
そしていつの間にか仲良くなってしまったことは、圭はもちろん陽菜に内緒にしたのであった。
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