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一話
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「なぁ、あんたには見えないか?あの煌めく満天の星々が」
ふいに後ろから若い男性の声が聞こえた。
私は少し驚きながらも振り返ることは無い。
男は私が無視をしてるのもお構い無しに続けた。
「死んだ人は星になるって聞くけど、どう思う?」
それは私に対する質問だろう。
それを私は答えるでもなくただ夜の静けさの中にある信号機や街灯などの灯りをただ眺める。
「俺はそんなことないと思う。確かに宇宙は広いけど人一人が死んでそれらがみんな星になってたとするとどうなる?今見てる星、見えない星、見たことが無い星全部足してもこれまで死んだ人間の数と同じになるなんて思わねぇんだよな。」
男は私が一切関わろうとしてないことが知ってか知らずかまだ続ける。
1人になりたくてわざわざこんな山の中腹にある公園を選んだというのに。
しかも今はもう深夜の1時手前だろう。
本当にこの男は何者なんだ。
「あんたはどう思う?人が1人死ねばその人は星になれると思うか?」
「…………」
「そうか、今はこの夜景を見るのが最優先事項だよな。」
私はうつ病を患っている。
正直ここに来た理由は自殺するためだった。
誰も来ないような山奥にひっそりと独りで死のうと思っていたのだが、厄介な事によく知りもしない男がいたらしい。
計画は失敗だ。
次こそ死のう、そう心に決めた。
そうと決まればこの男をどうにかしなくてはならない。
他人と話したくなんかないが今回ばかりは仕方が無いと思い、振り返りこそしなかったが口を開く。
「貴方はどなたでなんでこんな時間にこんなところにいらっしゃるのですか?」
なんとなく男が驚いたような気がした。
こういう他人の機微を昔から読むのが得意だった。
でもこんなの社会に出ても役に立つことなんて滅多にない。
強いて言うなら上司が怒る寸前であることを読むくらいだ。
なんの価値もない。
「俺はあんたが死にそうな顔してるのがたまたま見えたから後追ってみた」
なんの悪気もなさそうに少しへらっと男は笑いながら答える。
私が死ぬことなんてこの人にとってはどうでもいいはずなのに。
「なるほど。ストーカーだったんですね。分かりました。警察に通報します。」
「わー待て待て。いくらなんでも酷くないか?確かに後つけてたなんて言ったらそりゃ誤解されるだろうけど俺はあんたが心配でついてきたんだよ。あんた、自殺しようとしてたんだろ!」
男は慌てて言う。
なぜ私が自殺しようとしてるのがわかったのだろうか。
「なんで?」
「ん?なんで?って言った?」
「なんで私が自殺しようとしてるって思ったんですか?」
「んー、顔つきで、かな。昔、俺の友達もあんたみてぇな顔しててその次の日から二度と学校に来なくなった。だから気になったんだ。あの顔をしてる人はこれまでに何度も見てきたけどあんたほど露骨に顔に出てる人も初めてだったからつい。気を悪くさせたな。すまねぇ。」
「申し訳ないと思うならもう帰ってよ。私は独りになりたかっただけ。それだけよ。」
「そうか、悪かったな。ああ、俺の名前、スドウアキラ!急須の須に藤の花の藤で須藤、名前は明るく良くなる、だ。よろしくな。」
「よろしくするつもりは無いわ。用が済んだら帰って」
「お、おう。せめて一つだけ、あんたの名前なんて言うんだ?」
「…………私の名前、オノシオリ。小さい野に本の栞。」
「しおりか、いい名前だな。それじゃ今夜はまっすぐ帰れよー。おやすみ!」
まるで嵐のようなやつだった。空気はサラサラ読めないし、無理矢理名前聞かれた気がする。
まあ、私の名前を知っても意味ないし、別に何でも良かった。
今日はもう帰ろう、あいつのせいで余計に気分が悪くなった気がする。
それにあいつと関わったせいかすごく疲れている。
今夜は眠れそうだ。
帰ろう……。
ふいに後ろから若い男性の声が聞こえた。
私は少し驚きながらも振り返ることは無い。
男は私が無視をしてるのもお構い無しに続けた。
「死んだ人は星になるって聞くけど、どう思う?」
それは私に対する質問だろう。
それを私は答えるでもなくただ夜の静けさの中にある信号機や街灯などの灯りをただ眺める。
「俺はそんなことないと思う。確かに宇宙は広いけど人一人が死んでそれらがみんな星になってたとするとどうなる?今見てる星、見えない星、見たことが無い星全部足してもこれまで死んだ人間の数と同じになるなんて思わねぇんだよな。」
男は私が一切関わろうとしてないことが知ってか知らずかまだ続ける。
1人になりたくてわざわざこんな山の中腹にある公園を選んだというのに。
しかも今はもう深夜の1時手前だろう。
本当にこの男は何者なんだ。
「あんたはどう思う?人が1人死ねばその人は星になれると思うか?」
「…………」
「そうか、今はこの夜景を見るのが最優先事項だよな。」
私はうつ病を患っている。
正直ここに来た理由は自殺するためだった。
誰も来ないような山奥にひっそりと独りで死のうと思っていたのだが、厄介な事によく知りもしない男がいたらしい。
計画は失敗だ。
次こそ死のう、そう心に決めた。
そうと決まればこの男をどうにかしなくてはならない。
他人と話したくなんかないが今回ばかりは仕方が無いと思い、振り返りこそしなかったが口を開く。
「貴方はどなたでなんでこんな時間にこんなところにいらっしゃるのですか?」
なんとなく男が驚いたような気がした。
こういう他人の機微を昔から読むのが得意だった。
でもこんなの社会に出ても役に立つことなんて滅多にない。
強いて言うなら上司が怒る寸前であることを読むくらいだ。
なんの価値もない。
「俺はあんたが死にそうな顔してるのがたまたま見えたから後追ってみた」
なんの悪気もなさそうに少しへらっと男は笑いながら答える。
私が死ぬことなんてこの人にとってはどうでもいいはずなのに。
「なるほど。ストーカーだったんですね。分かりました。警察に通報します。」
「わー待て待て。いくらなんでも酷くないか?確かに後つけてたなんて言ったらそりゃ誤解されるだろうけど俺はあんたが心配でついてきたんだよ。あんた、自殺しようとしてたんだろ!」
男は慌てて言う。
なぜ私が自殺しようとしてるのがわかったのだろうか。
「なんで?」
「ん?なんで?って言った?」
「なんで私が自殺しようとしてるって思ったんですか?」
「んー、顔つきで、かな。昔、俺の友達もあんたみてぇな顔しててその次の日から二度と学校に来なくなった。だから気になったんだ。あの顔をしてる人はこれまでに何度も見てきたけどあんたほど露骨に顔に出てる人も初めてだったからつい。気を悪くさせたな。すまねぇ。」
「申し訳ないと思うならもう帰ってよ。私は独りになりたかっただけ。それだけよ。」
「そうか、悪かったな。ああ、俺の名前、スドウアキラ!急須の須に藤の花の藤で須藤、名前は明るく良くなる、だ。よろしくな。」
「よろしくするつもりは無いわ。用が済んだら帰って」
「お、おう。せめて一つだけ、あんたの名前なんて言うんだ?」
「…………私の名前、オノシオリ。小さい野に本の栞。」
「しおりか、いい名前だな。それじゃ今夜はまっすぐ帰れよー。おやすみ!」
まるで嵐のようなやつだった。空気はサラサラ読めないし、無理矢理名前聞かれた気がする。
まあ、私の名前を知っても意味ないし、別に何でも良かった。
今日はもう帰ろう、あいつのせいで余計に気分が悪くなった気がする。
それにあいつと関わったせいかすごく疲れている。
今夜は眠れそうだ。
帰ろう……。
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