イーター (Eater)

ヨル

文字の大きさ
17 / 18

第17話 人狩りの首謀者

しおりを挟む
リゼットが目を覚ますと、そこは鉄でできた小さな檻の中だった。人ひとりが収容できる広さだ。
手錠と足枷がされていた。

鉄格子の仕切りを挟んで、隣には自分の檻よりは広いものの、ぎゅうぎゅうに詰め込まれ、うずくまる人々がいた。
皆、下を俯き目に光はない。まるで死人のようだ。
何人かシクシクなく声も聞こえる…
それは、村で見かけたことのある者達…女や子供ばかりいた。

(アーシャが捕虜になる代わりに村人には手を出さないと言っていたが…律儀に約束を守るようなやつらではないらしいな。腐ってやがる…村が焼き尽くされてなければいいが…)
とリゼットは心配になった。

周囲の状況から考えるに、牢獄の個室と大部屋といった感じだろうか。
おそらく、危険なやつは個室の檻に入れ、無能力者や非戦闘スキルの者達など抵抗が出来ないやつらは大部屋の檻にまとめて入れているのだろう。

時折、檻全体がガタガタと小刻みに揺れている。
檻の中にある鉄格子のされた小窓からは月明かりが入り、周囲の風景がゆっくり流れて行っているのが見える。

「牢獄の馬車で輸送中か…」
リゼットは呟いた。

まるでドナドナと売られていく家畜になった気分だ。
目の前に横並びに2つ、右側1つ同じ個室の檻があったが、中はもぬけのからだ。誰も居ない。
アーシャは別の場所のようだ。

手枷・足枷が重くて邪魔だ。
確かスキルを使えば、素材が何であろうが喰らうことで、破壊することが出来る。
手枷や足枷はおろか、馬車諸共破壊し尽くすことさえできるだろう。

敵と対時した際にアーシャが、自分のことを〔無能力者〕だと言ってくれたおかげで、敵も完全に油断している。
なんせ、この牢獄馬車には敵兵の見張りが1人も居ないのだから。
牢にぶち込んどけば逃げらない。
敵もそういう風にたかを括っているのだろう。

私はいつでも脱獄することが出来る…だが、アーシャの所在が分からない以上、いま下手に暴れて馬車ごと破壊すれば、他の捕虜達やアーシャを傷つけたりするとまずい。
それに、アーシャを人質に取られることだけは何としても避けたい。
先ずは、アーシャの身の安全の確保が最優先…

しばらくは、そのまま様子を見よう。
隙を突いてアーシャと脱出する。
リゼットは、そう決心した。

「いま出来ることは何かないかな…」

リゼットは、自分の『捕食者』というスキルについて深く考えることにした。
父上は不思議なことを言っていた。

「お前のスキルは、他のスキル持ちのモンスターやスキルを持つ人間を喰らうことが出来る。だが、人間の肉は喰らうな」と。

人間以外のモンスターはいままでのように、そのまま喰らっても問題ないことはわかる。
捕食することにより、そいつらが持っていたスキルが自分の物になるだけだ。

だが、スキルを持つ人間の場合、喰らってもいいが肉を喰らうな…これは矛盾している。

人間を喰らうと、おそらくその部位が完全に無くなるだろう…そうなると人間の肉を喰らうことになる。

スキル『捕食者』を発動すると、手など体の一部が変化し、黄金色の竜が現れ対象を喰らう。
喰らわれた物は、その部分が完全に消失する。
つまり、破壊してしまうのだ。

人間の肉を喰らうなというなら、その人間が持つスキルを自分の物にはできず、また人間に対してスキルを使った攻撃が一切出来ないということだ。

つまり、たくさん別のスキルを捕食して増やし、別のスキルを使用するか、手持ちの武器がないと戦えない。

続けて父上は言っていた。
「我は人間の肉を喰らい吸収するなとしか、言っておらん。」と。

この言葉の気がかりなのが、〔吸収するなとしか言っていない〕の言葉。
つまり、逆に言い変えれば、吸収しない限り人間の肉はいくら喰らってよいということになる…のか?
だが、身体に吸収しなければスキルは手に入らないはず…
『捕食者』というスキルの真髄は、対象を喰らい吸収し、自分の血となり肉にすることでそのスキルが使えるようになるというもの。
吸収しないとなると、人間が持つスキルは手に入らない。だが、できると父上は言う。
ん~、またまた矛盾が…

「よし、やろう。」

頭で考えてわからないなら、実践あるのみだ。

ちょうどその時、牢獄の馬車が止まった。
どうやら目的地に着いたらしい。

「ほら、新しいお家だ。お前ら、ささっと出ろ!」
看守らしき男が言った。

一番手前の牢獄にいたリゼットから、順々に鎖を手枷に繋がれて、馬車の外へ出る。
どうやら、いまいる場所は、どこかの城の入り口のようだ。

「ほら、さっさと歩け!」
先程の看守らしき男が捕まえて来た捕虜達を急かす。

城の門をくぐり、城の中へ入る。
そこは広間のような場所だった。
一旦、そこへ集められる。

すると、目の前に村で指揮を取っていたリーダー格の鎧を着た男と、隣に高そうな生地で出来たドレスを見に纏う明らかに位の高そうな女が居た。

「王妃様、噂にあった『鑑定』の SRスキルを持つ女を捕らえてきました。」

「どいつだ?」

「この者です。」

すると、手枷と足枷に繋がれたアーシャが王妃と呼ばれる女の前へ連れて来らた。

「こいつが噂の…サイラス国王もさぞ、喜ばれるであろうな。」

「あなた達、何が目的なの? 村人達には手を出さないって言ったのに! 何で捕虜として、ここに連れて来られているのよ!」
噛み付くようにアーシャが言った。

すると、王妃はアーシャの頬をビンタした。
王妃の目前に倒れ込むアーシャ。

「アーシャ!」
思わず、リゼットが列から離れ、アーシャの元へ走る。
鎧の男が、剣に手を添え身構えた。

「アーシャ、大丈夫?」

リゼットはアーシャの元へ行き、寄り添う。

「えぇ、大丈夫よ、リゼット。」

鎧の男は、反抗する意思がないとわかったのか、剣から手を離し、自然体の姿勢へ戻った。

すると、偉そうな女が激昂した。
「うるさい!黙れ、家畜共が!!
我はサンドリア王妃、お前達が口を聞いていい相手ではない。」

どうやら、サンドリアと言う名の王妃らしい。

「アーシャよ、口答えするな。
我と我が主、サイラス国王に従え。さもなくばお前と仲の良さそうなその少女が痛い目を見ることになるぞ。」

「…わかった、従うわ。」
下を俯いたまま、アーシャが言う。

「アーシャ!?」

「リゼット…必ず助けてあげるから、もう少しだけ辛抱しててね。」
そう言って、アーシャはリゼットの頭を撫でる。

「ほら、小娘!さっさと行くぞ。」

「アーシャも必ず無事で居てね!!」

リゼットは、鎧を着たリーダー格の男に繋がれ鎖を持たれ、地面を引きずられながら、最後にそう伝えた。

そして、そのまま城の地下の独房へと連れて行かれるのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

愚者による愚行と愚策の結果……《完結》

アーエル
ファンタジー
その愚者は無知だった。 それが転落の始まり……ではなかった。 本当の愚者は誰だったのか。 誰を相手にしていたのか。 後悔は……してもし足りない。 全13話 ‪☆他社でも公開します

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる

みおな
恋愛
聖女。 女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。 本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。 愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。 記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

処理中です...