昭和少年愚連隊 外伝

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外伝

名医?

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昨日、昨年からの歯痛の治療のために歯医者に行った。
 
夕方18時ごろに電話をすると「今から来てください」とのこと。
 
早速、行ってみた。
 
 



 
俺は子供のころから歯が弱く、昔の技術で治療をされているため
 
非常にいいかげんな保険治療をされている。
 
しかしながら、ここ十年ぐらいは、重い歯痛に悩まされることは無かった。
 
 


 
歯医者に着くと、まず問診表を書かされた。
 
・住所
 
・氏名
 
・電話番号
 
・e-mail。
 
e-mail?
 
そんなのまで書くの?
 
めんどうなのでそれは書かなかった。
 

・痛い場所はどこか?
 
・いつからか?。
 
・当院にかかったことがあるか?
 
・薬は飲んでいるか?
 
・別の病院にかっかっているか?
 
・麻酔は大丈夫か?
 
・保険で治しますか?自費で治しますか?
 
などなど。
 
2ページにおよぶ質問攻めであった。
 
 
 


治療室に入ると、さっそく先の尖ったピンセットでコツコツ。と歯を叩く。
 
「ここですか?こっちですか?」と色々と歯を叩く。
 
痛みが出ているのは銀歯が、かぶさっている場所なので
 
金属と金属が触れ合ったときのキーンという感じが非常に嫌だった。
 
痛みのある歯を叩かれると「うぅっ」と声が出た。
 
「ここですか」と行って、また叩く。
 
「いてーよ。おい、おい。勘弁してくれ」と思った。
 
 
 


「じゃあ、レントゲンを撮ります」と言って
 
口の中にフィルムらしきものを入れられた。
 
「指で押さえてください」と言われたので
 
それを指で押さえた。
 
「動かないでください」ジーーカシャ。
 
とレントゲンは撮れた。
 
「現像まで、ちょっと待ってください」と言われ、席で待っていた。
 
しばらくすると、先生は言った。
 
「すみません、もう一回撮ります。指が写っちゃって」
 
指?
 
俺の指?
 
写っちゃったの?
 
指を撮ってどうすんのよ。
 
「大丈夫なのか?この先生は???」
 
 
 



「では、今度はこれを使います」と言ってアダプタを出してきた。
 
ちゃんと、フィルムが装着されて、グッと噛むと安定するもの。
 
「最初から、これを使ってくれよ」心の中の不満と不安は増長するばかり。
 
「やっぱり、明日、別の医者にいけばよかったかな・・・」などと思っていた。
 
 
 


また、しばらく待つことになり席で待っていると
 
別の患者が来た。
 
「どうぞ、どうぞ。こちらに座ってください」などと言っている。
 
わたしは保留されて、そちらの患者の治療を始めた。
 
 
 
昔、歯医者では散々待たされた記憶があるので
 
「こっちが先だから、こっちから順番にやってよ」と思い、悲しくなってきた。
 
 
 
治療は1分で終わったようだ。
 
先生と患者の話が聞こえてきた。
 
「うーん、これは疲れがたまっているようですね。もうすこし様子をみましょうか?」
 
患者も「最近、忙しくて疲れている」旨を伝えていた。
 
ずーっと。世間話。
 
治療はしていない様子。
 
 
 
世間話を10分ぐらいして、「では、来週」と言って患者は帰っていった。
 
「本当に大丈夫なのか?この医者は…」
 
 
 
俺はこの不満と不安を妻にメールした。
 
レントゲンが失敗したこと。
 
保留されていること。
 
明日、別の医者に行こうと思っていること。
 
 
 


先生が来た。
 
「う~ん」
 
「嫌、違うな」
 
見ると俺のレントゲンを手に持ち、独り言を言っている。
 

「どうですか」聞いてみた。
 
「歯槽膿漏ではないですね。
 
歯が割れているわけでもない。
 
かと言って、神経は抜かれているから…」
 
などと、あーでもない。こーでもない。事を、また独り言のように言う。
 
「最近、疲れてないですか?」と聞く。
 
「はあ」と答えた。
 
「疲れって、さっきの患者にも言ってたじゃん。同じかよ!」と思い
 
「明日、絶対に別の医者に行くぞ」と決心した。
 
 
 
「ちょっと、削っておきましょう」と言う。
 
「えー!削んの?なんで?どこを?」心の叫びは大きくなるばかり。
 
「はい。口をあけて」先生は削る気満々。
 
仕方なく口を開けると、紙のようなものを口に入れた。
 
「歯をカチカチやってください」という。
 
俺はカチカチと上下の歯を鳴らした。
 
すると痛みのある歯に当たって痛い。
 
すごく痛い。
 
「こまったな。いてーよ。もういいからと言って帰ろうかな」と思ったとき先生は言った。
 
「あーこれは、上の歯ですね」
 
「えーーーーー。違うって!。痛いのは下の歯だってば!。それぐらいわかるって!」
 
心の叫びは、頂点に達し、イナズマンに変身しそうだった。
 
先生は「上を削りましょう」と言って、おもむろにチュイーンと削り始めた。
 
「あー。もうだめだ。悪くない歯を削り始めた」と思い、情けなくなってきた。
 
 
 

とりあえず治療は終わった。
 
痛くない上の歯を削った。
 
確かに下の歯には当たらなくなった。
 
普段の痛みはない。
 
しかし、根本的な治療はしていない。
 
なんだこりゃ。
 
問診表の「保険で治しますか?」のところに○をつけたのがいけないのか?
 
後悔の念がつよく残った。
 
 
 

お金を払うとき「じゃあ、痛くなったら、また来てください」と言われた。
 
痛くなったら?って。いまでも痛いんですけど…。
 
何もいえなかった。
 
「診察券とか作ります?」先生は言った。
 
「作らなくていいんですか?」俺は聞いた。
 
「別にいいですよ。いつでも電話してください」
 
なんて、いい加減。
 
診察券なんて自動的に出てくるでしょ。
 
「歯石取りとか、興味があったら、電話してくださいね」とも言った。
 
なによ、これは?
 
興味があったらって????
 
 
 
「じゃあ、また電話します」と言って家に帰った。
 
 
 
家に帰ってきて夕食をとった。
 
削られた側で噛んでみた。
 
痛い。
 
だめだ。
 
この駄目さ加減を妻に詳しく報告した。
 
明日、別の医者に行くことにした。
 
 
 
 
 
朝起きて、朝食をとった。
 
「あれ?痛くない」
 
普通に食事をしている。
 
指でぎゅっと押してみた。
 
痛くない。
 
痛くーなーーーーーーい。
 
 
 
 
 
先生は名医なのか?
 
 
 

 
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