色んなストーカー

なゆか

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朝、目が覚めると
左手の薬指に歯型が付いていた。

「…え」

寝ぼけて噛んだのか?
いや、寝ぼけて薬指の根元噛むか?

「え、怖」

この歯型が何なのか分からないまま、
内出血している歯型を見つめながら
今日一日を過ごした。



次の日の朝

「…まただ」

今度は、左手の薬指一周に
赤い線が引かれている。

油性ペンで書かれた線は石鹸で落ちたが、
昨日の噛み跡はまだ消えない。



次の日

「…本当、何コレ」

今度はなんだよと、左手の薬指に
赤い糸が結ばれていて
その先は閉まっているクローゼットに
繋がっている。

「…」

ベットから立ち上がり、
クローゼットを開けると
そこには男が立っていた。

「うわぁぁぁあぁぁああッ⁈」

思いの外、声出たなと
男は糸の先を握り締めていて、
私を見下ろしている。

声を出したせいか、
何故か冷静になった。

「…ごほん…えと、何してるんですか」

直立不動な男に訊ねるが、
うんともすんとも言わない。

「糸持ってるって事は、
ここ最近の左手薬指に
何かしてるのは貴方ですよね」

目がキョロキョロと動き出し、
返答無くても、正解なんだと分かった。

「左手の薬指って事は、
私に好意あるって事ですよね」

そう聞くと、男は頷いた。

他に好意の伝え方あったろうに…

「何で不法侵入したんですか」

指噛まれたのもそうだが、
完全に犯罪である。

ストーカー「…ち…直接…だ…と」

口を開いた男の声色は震えていて、
泣き出した。

ストーカー「…ぁ…貴方を…
怖がらせる…つもりは…なくっ…て」

体格の良い男が自室で泣き崩れている
異様な状況に更に冷静になっていく。

「…いや、そんな泣かなくても」

ストーカー「…私では…貴方を幸せに…
出来ない…だけどっ…愛して…しまって…」

男は床に蹲りながら、
私への気持ちを伝えてくる。

ストーカー「見ている…だけでは…
もうっ…抑えられなくなって…
こんな…想いをするなら…いっそ」

男は顔を上げた。

ストーカー「殺してしまおう…って…」

冷静になっているのが、
そもそもおかしかった。

普通に考えて、見知らぬ男が
部屋に侵入してきている凄く危険な状況。

男は握り締めていた赤い糸を束にし、
私の首に絡めた。

ストーカー「この…赤い糸は
私と貴方を結び留めるモノ…
絶対に切れないから…」

男の涙が顔に垂れ、
私は目を覚ました。



バサッ

「夢オチかッ」

怖い夢だったなと、
勿論、部屋には私以外誰も居ない。

パジャマは、汗でグッチョリとしていて
風邪引くなとパジャマを脱ぎ、
不意に姿見が目に入る。

「なにこれ」

身体中に歯型、首に赤い痕、
勿論、左手薬指の歯型の内出血は
治っていなかった。
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