推しは別の人

なゆか

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推しのいるクラス

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私のクラスには、
推しの男子
九戸真啓がいる。

九戸は天真爛漫とは程遠い、
頭の悪い雑魚ヤンキーである。

雑魚なのに、何故推すかというと
普段、イキって悪そうにしてるけど
所詮虚勢張ってるだけの雑魚だと思うと
可愛く見えてくる。

まぁ、捻くれた萌え方をしている事は
自覚している。

九戸「何見てんだよ」

三田「みっ見てないです」

九戸「見てただろッ」

三田「ひぃ…」

そして、よく九戸に絡まれてるのは、
クラスでいつも大人しくしてる三田惇。

三田は、見るからに虐められっ子要素満タンで
弱さの権化だと思っている。

そんな弱い者に虚勢張って
イキってる九戸を毎度見るたび、
いじらしいなと思う。



三田「ゔっ…やめてください」

今は、昼休みの教室内
九戸は性懲りも無く
弱い者いじめをしている。

九戸「てめー気に入らねーんだよ」

うちのクラスは、率先していじめに
加入をする人はおらず、
大半が面倒事に巻き込まれたくないと
教室から出て行き、
何人かはそれを傍観すらせず無視している。

誰も止めようとしないのもどうなんだと思うが、
九戸さえ居なきゃ、平和なクラスである。

ガシャンッ

今日も推しはイキリ散らかってんなと、
ガラスの割れる音がして、
床に破片が飛び散った。

名原「あー」

飛び散ったのは、私が毎朝水を換えている
割と思入れのある花瓶だ。

名原「花瓶が」

そう言うと、九戸はこちらに来た。

九戸「あ?なんか文句あんのかよ」

推しがイキった状態ままの
私の目の前まで来た。

初めて間近で推しを見たなと
割れた花瓶の破片を拾う。

名原「同じの買って来てよ」

割れた破片を九戸に渡すが、
受け取らず、顔を真っ赤にして怒り出した。

九戸「誰に口答えしてると思ってんだよッ」

今さっきまでイキってたし、
三田も見てるからか
私にも威圧的な態度をとっている。

名原「九戸だけど?
そもそも花瓶割ったのお前じゃん。
今、買って来て」

九戸「ふざけんじゃねーよッ
誰が言う事聞くかッ」

推しがめちゃくちゃ怒った。

…やばっ…笑いそう…

名原「…はぁ」

私は割れた破片を九戸の肩に押し付ける。

九戸「…ッ…痛…」

名原「早く行け」

九戸「…クソ…許さないからな」

九戸は顔が真っ赤のまま、
破片を乱暴に取って教室から出て行った。

本当、あの雑魚ヤンキー可愛いな。

名原「片すのはこっちか」

逃げたのかもしれないが、
とにかく、このままじゃあなと
花瓶破片を集める。

三田「…ぁ…あの」

名原「何」

さっきまでやられてた三田が
箒を持って心配そうな顔して近付いてくる。

三田「…俺のせいで…名原さんが
いじめられるようになるかもしれなくて…」

推しからいじめられるのって、
割とご褒美に近いんじゃないか?

普段、絡んで来ないし
お近づきになれるチャンスじゃね。

名原「別に私が勝手にやった事だし、
構わないよ」

三田「…でも」

名原「箒持って来てくれて、ありがと」

三田「…あ…俺が片付けるから」

名原「2人でやれば、早く終わるね」

三田「…ぅん」

結局、この後私の推しは戻って来ず
放課後を迎える事になった。



三田「な…名原さん…花瓶」

下校しようとしていると
三田に声を掛けられた。

三田「あの…割ったの
俺のせいでもあって…それで」

名原「いいよ、九戸に買いに行かせたんだし」

三田「…買って来ないと思う」

三田は本当弱そうだな…
だから、雑魚ヤンキーに付け込まれんだよ。

まっ推しがイキイキしてるから、
いいけど…

名原「まぁ、買って来なくても
花瓶なら買わなくても学校にあるだろうし
気にしなくて良いから」

三田「…名原さん」

名原「ん?」

三田「…ごめん」

名原「何に対して?」

三田は私に頭を下げて来る。

三田「もし…九戸君に何かされたら、
その時は…」

九戸に立ち向かう程、
強そうには見えないけどな…

名原「私がやった事だって言ったじゃん、
本当気にしなくて良いから」

三田「…そっか…引き止めてごめん」

三田は普段弱々しい為、小さく見えてたが
こう間近で見上げると
私や九戸よりも身長があって
ガタイもそれなりだ。

名原「三田は、やり返そうとか思わないの?」

三田「やり返すって?」

名原「九戸にいじめられてんじゃん」

イキリ雑魚ヤンキーがこういうのに
下剋上されてんのは定番だし、
推しが心折られて
大人しくなるのも見てみたい
きっと、もっと可愛くなる。

名原「三田は九戸よりも大きいんだし、
力で敵わない事無いでしょ」

こうやって背中を押したら、
なんて…

三田「…」

三田は黙り、何かを考えている。

名原「まぁ、そんな感じなんで
私は帰るわ」

そう言って私はその場を立ち去るが、
三田は立ちっぱなしのままだった。



その後、
私は後悔する事になる。
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