どうしたらいいか分からない

なゆか

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風邪を引いても、墓穴を掘り続ける

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矛井に言われた通り、
真冬に頭から水被ったせいで
風邪を引き、翌朝熱が出た。

母「何で制服に着替えてるの?
熱あるんだから、学校休みよ」

母は既に学校に休みの連絡をしていたようだが、
好きな人に会う為に、無理してでも
登校したいとか、乙女じゃん私!と、
ブレザーを床に叩きつける。

母「何してるのよ!
ハンガーに掛けなさい!」

籠山「ごほっ…」

母「全く…突然の奇行はお父さん譲りね」

籠山「デーエヌエー?」

母「そうDNAよ」

父譲りと言われても、
父は私が生まれた直後に他界した為
どんな人なのか知らない。

籠山「…私って、今までも突然の奇行に
走ったりしてたって事?」

母「無自覚なのも、お父さんそっくり」

籠山「うわ…」

母「とにかく!
ブレザーはちゃんとハンガーに掛けなさい」

籠山「はい」

母「それで、仕事遅くなるけど
高校生なんだから、1人で大丈夫ね?
何かあったら、電話掛けてきていいから」

私と兄を女手一つで育ててくれた母の背中は
勇ましいが、病人放置かよと見送った。

冷蔵庫を確認すると、調味料しかなく
辛うじてミネラルウォーターはあるが
病人食のびの字もない。

籠山「…母よ、私はそこまで強くない」

結局、ミネラルウォーターを
腹がはち切れんばかりまで飲み
ベットに横たわり、目を閉じた。



?「それでさ~、かこ聞いてる?」

寝ぼけて記憶が曖昧だが、
私は起きた時には、
スマホを耳に当て、電話に出ていた。

籠山「さや?」

鞘田「何?」

籠山「頼みがある」

鞘田「高いよ、私」

籠山「食べ物買ってきてください」

鞘田「えーお母さんは?」

籠山「遅くなる」

鞘田「お兄ちゃんは?」

籠山「社会人で家出てる」

鞘田「えーお金無いし、
かこの家遠いじゃん!」

籠山「私、病人なのに放置されてんだよね。
死ぬかも」

鞘田「死ぬの⁈」

籠山「お金は後で返すから、
本当冷蔵庫空だから、食べ物頼みます」

さやは、電話口で文句を言い出し、
私は電話を切る。



時計を見ると、17時半。

水以外胃に入れてないせいか、
どんどん体調が悪くなる。

さやは、まだかとメッセージを送るが
既読にならない。

籠山「友情とは…」

なんて、思っていると
インターホンが鳴った。

籠山「やっと、来たか」

私はドアホンで相手を確認せずに
玄関を開ける。

久藤「あ、体調悪い中ごめん」

籠山「…え」

久藤が来た…

籠山「…えーと」

久藤が…来た?

籠山「えぇ⁈」

久藤が来たッ⁈

なんで?
あっ夢か、コレ…

久藤「そんなに頬つねらなくても、
夢じゃないよ」

久藤の手には、スクールバッグと
買い物袋が握られていた。

久藤「鞘田さんに頼まれたんだ。
籠山さんが死ぬかもしれないからって」

籠山「…頼まれたって」

まじか、さやの薄情者め…
ありがとう…

久藤「ゼリーと、栄養ドリンクと…
あと、コレおかゆのパウチなんだけど、
電子レンジで温められて」

籠山「おかゆ作って」

久藤「…え?」

籠山「愛情込めて欲しい」

久藤「…えと、電子レンジだよ?」

籠山「電子レンジでも、
誰が使うかによって違う。
それに、母が夜遅くて死ぬかもしれないから」

どんな理由だよと、
久藤が黙ってしまい、
私はまたやってんなと思う。

コレが、父のDNAなのか…

籠山「死ぬかも」

久藤「…そこまで体調が悪いなら」

久藤は困惑顔のまま玄関に入り、
靴を脱いだ。

久藤「キッチン、借りるよ」

籠山「愛情を込めて」

久藤「…わ、分かった」

本当…私…どうかしてんな…

私はリビングのソファーに寝転がり、
キッチンに立って、電子レンジを見ている久藤の
背中を見ていた。

久藤が、我が家のキッチンに居るよ…
どうしよう…

久藤「籠山さん、お皿って…」

振り返った久藤に胸が締め付けられる。

うわ…好き過ぎる…

なんなの?
恋って、心臓やられんのか?

久藤「どうしたの?」

籠山「…いや、エプロンつけないのかなって」

久藤「料理してるわけじゃないから…
つけるなら、つけるよ」

籠山「…え、エプロンしてくれるの?」

久藤「外から来たから、
衛生面的に…」

久藤の理由はまともだが、
私は下心丸出しでエプロン姿の
久藤が見たかった。

籠山「レースふりふりの…」

久藤「…他に無いかな」

籠山「この赤いハートの」

久藤「…えと」

籠山「それなら、どうしようかな…」

天井を見上げながら、目を瞑り
色んなエプロンをつけてる久藤を想像して
にやける。

久藤「あ、出来た」

電子レンジが鳴り、おかゆの温めは完了したっぽい。

久藤「えと、このお皿使わせて貰うよ」

久藤はきっと私をドン引いている。

でも、好きな人が
うちのキッチンに居るなんてこと
今後、無いかもしれない…いや、
多分こんなチャンスは一生こない。

久藤「愛情を込められたか分からないけど、
熱いから、気を付けて」

久藤がおかゆを持って来てくれて、
私はソファーに座り直す。

籠山「あーんして欲しい」

久藤「…え?」

籠山「死ぬかもしれないから」

久藤「…」

きっと、コレはセクハラだ。

久藤の事好き過ぎてセクハラするって、
終わってるな私…

籠山「フーフーもして欲しい」

久藤「…大丈夫?」

籠山「お願いします」

久藤「…」

また黙った久藤はスプーンを持ち、
おかゆを掬った。

久藤「流石に冷ますのは、自分で…」

籠山「お願いします」

久藤「…」

籠山「お願い!」

久藤「…分かった」

諦めてくれた久藤はおかゆを冷ます為に
唇を尖らせた。

籠山「うわぁ…駄目だ、ごめん!」

久藤「え?」

籠山「セクハラしてごめん」

久藤「…え、セクハラ?」

籠山「今、久藤にセクハラしてる」

久藤「…えと、そうなんだ」

籠山「なんか、セクハラしたくなっちゃって」

久藤「…」

籠山「つい、出来心で」

出来心って…まじで…
痴漢とかの言い分じゃん…

久藤「…籠山さん、口開けて」

籠山「あ」

久藤は私の口におかゆを流した。

スプーンに掬ってから、私が謝ったりした為
フーフー前だが、おかゆは冷めていた。

籠山「美味しい」

久藤「それなら、良かった」

久藤はスプーンを置き、
立ち上がった。

久藤「ゼリーと栄養ドリンクは、
冷蔵庫に入れさせてもらったよ」

帰ろうとしている久藤の表情が角度的に見えない。

私は気持ち悪がられて、嫌われた…
いや、そもそも好かれてないか…

きっと、久藤は嫌な顔をしているんだろう。

久藤「じゃあ、お大事に」

籠山「ごめん…」

久藤と目が合い、表情は困惑顔だ。

久藤「籠山さんは変わってるね…
でも、あまりからかわない方がいいよ。
いくら俺でも勘違いしちゃうから」

そう言われ、久藤は帰って行き
私は熱さなんて構うものかと
おかゆを胃に流し込み、叫んだ。

籠山「好き過ぎるッ!」

勘違いじゃないんだよと、
焼けた喉で更に叫んだ。
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