2 / 8
入隊
入隊前
しおりを挟む話を少し遡る。
高校3年の3学期、当時卒業を控えたオレには将来の予定等何1つ無かった。勿論、マトモな高校生活を送って来た訳でも無く、周りが進学や就職と忙しく動く中、唯1人進路を決めあぐね途方に暮れていた。
当然の如く毎晩のように飲み歩いていたオレは、行きつけの飲み屋でたまたま陸上自衛隊地方連絡部勤務の隊員と知り合った。
そこからの話は早い。
「ふぅん、卒業後何も決まってないんだ。じゃ、自衛隊おいでよ」
まだ進路が決まって無い引け目が心の何処かにあったんだろう、何気無い会話から結局そういう流れになった。
「衣食住ただ!入った給料は全額使えるし身体を鍛えて金貰えるんだよ。こんな最高な職場どこにも無いよ?」
「うーん、でも訓練キツいんでしょ?」
(流石のオレだって自衛隊の厳しさや訓練のキツさは聞いて知っている)
「大丈夫大丈夫、そんなの最初の1ヶ月ですぐ慣れる!」
「新兵だと外出も出来ないしイジメられるって聞いたけども…?」
「あ、そんなの嘘。昔の話。今時それじゃ人集まらないしね!」
(ふーん、そうなんだ…)
「あ、それと大型免許や特殊車両、危険物など免許もタダで取り放題だよ!」
「………へぇ~(チョットいいかも。)」
色々と話を聞いた結果、卒業後本当にどうしようも無ければ自衛隊に入ろうと何となく決めた。
まあ、早い話がコロリと口車に乗せられた訳だ。
卒業も間近に迫ったある日、オレ宛の一本の電話で全てが決まった。
例の自衛隊員からの電話、どうやって調べたのか知らないが、見逃さず掛けて来やがった。
何でも入隊試験を受けてみろ、との事らしい。
「取り敢えず受けるだけ受けて入隊するかどうかは後ほど決めればいい、そんな硬く考えないで良いよ」
ー だってさ。
進路がまだ何も決まって無いオレの行く末を心配していた両親は、これ幸いと大喜びでガンガン勧めて来るし、例の自衛官は自宅の畑で採れた野菜を手土産に挨拶に来やがった。
酒の席での軽い会話程度に思ってたのに…。
結果、完全に逃げ道は閉ざされる。
後日、陸上自衛隊地方連絡部から正式に入隊試験日時等の連絡が入り、試験を受ける事となった。
その前に、チョットだけ補足。
自衛隊に入隊するには4パターン有り、まず中学卒業後に入隊する方法、で、18歳から27歳までなら入隊資格がある一般入隊。次に曹候補士試験を経て入隊する方法、最後に防衛大学からの入隊、これは言わずと知れた超エリート、所謂幹部候補生。以上4パターン。これは陸海空統一だと思う、多分。
で、勿論オレは一般からのエントリーだったんだが、受けた入隊試験が、まぁ凄かった!
試験日当日、筆記試験と身体検査が同日に行われ、先ずは筆記試験。
最初に問題用紙を見た時はマジで一瞬固まった。
次の( )を答えなさい。
? 4・8・( )・16・( )・24
最初に思ったのは先ず引っ掛け問題。
しかし、いくら捻くれて考えても別の答えが浮かばない。
しかも、記入では無く選択問題!
他にも、例1の図形と同じ図形を選択せよ。 等々。
試験官役の自衛官が中々筆の進まないオレを心配そうに見ていたのだが、引っ掛けでは無いと解答し始めたら安心したかの様に頷いていた。
尚、信じられない話ではあるが、この試験官、問題の解けない奴(まずそれが信じられないのだが)の側で、首を振ったり頷いたり(教えてた?)していた!
国語も似た様な感じで拍子抜けもいいとこで筆記試験はサラッと終了。
次に身体検査を兼ねた体力測定。
これまた…、うん、まぁ、いい加減だった。
「宜しくお願いします。」
「うん、まぁ緊張しないで。」
「…はい。」
「身体悪い所無い?」
「はい、特に。」
「あ、そう。じゃ両手を広げ立って下さい。」
「…。」
「はい、次はそのまま片足で立って下さい。」
「じゃ最後に、そのまま眼を閉じて。」
「はいっ!オッケーです!!」
「…えぇ!?」
終了…。
…何だよ、事前に聞かされていた話では、虫歯の有無も重要らしく、「その数によっては入隊出来ないかもしれない」、なんて言ってたのだが、結果、奥歯ほぼ虫歯だったオレ、問題無し。
後に知ったのだが、四肢の障害(重度)若くは刺青等が無ければほぼ誰でも入れたらしい。
なんだそりゃ。
かくして無事高校を卒業、勿論、入隊試験も当たり前の様に合格。
…あくまでも何となくだった筈の自衛隊への入隊が決定しちまった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる