ティアル・ナ・エストレア ―青髪の双子の王子―

涼月

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第二章 使命を探す旅

第10話 砂漠

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「飛翔!」
 頭の中に、悲痛な飛王の声が響いた。

「ひ……」
 答えようとしても声にならない。喉がカラカラだった。暑くて重くて体も動かない。

 俺はいったいどうなってしまったんだ?
 このまま死ぬのだろうか……

「良かったー、生きているわ。お父さん!」

 その時、明るい少女の声がした。その直後、体がスーッと楽になる。

 そうか……この暑さは照り付ける日差しのせいか。

 どうやら少女が飛翔の体に覆いをかけて影を作ってくれたようだ。
 心遣いがありがたくて恩人の顔を見たいと思ったが、じゃりじゃりした砂が痛くて目を開けることができなかった。

 ここはどこだろう?
 飛王の元へ戻れたわけでは……無いな。

 少女は次に手慣れたしぐさで、飛翔の首を持ち上げて自分の膝の上に乗せた。そして、慎重に濡れた布で顔を拭き始めた。丁寧にいたわる様に。最後に、口の端に少し水を含ませてくれた。生き返るようだった。

 ああ! 俺は生きている! 生きられた!

 ゆっくりと目を開ける。覗き込む影を見上げてハッとした。

 リフィア!

 でも、その面影は瞬く間に消えた。リフィアであるはずがない。
 逆光の中、もう一度目を凝らして少女をよく見た。

 リフィアと同じ金髪だ。
 でも、瞳の色が違う…
 雰囲気も…

「目を開けたわ! 良かった」
 ほっとしたような声が降ってきた。

「あなた、なんだって、こんな所に倒れていたのよ。たまたま私たちがここで発掘作業していたからよかったけど、普段は誰もいないのよ! 死んじゃうわよ! しかもこんな軽装で!」

 呆れたようにいいながら、「でも、本当に良かったわ、生きていて」と少女が微笑んだ。

「私の名前はフィオナよ。よろしくね。あなたは? 名前言える?」
「あ……ありがとう……助けてくれて。私の名前は……飛翔ヒショウ……」

 かすれた声で、なんとか言葉を絞り出すが、飛翔は力が抜けてそれ以上続けられなかった。

「ああ、ごめんなさい。少しずつ水をあげるから、ゆっくり一滴ずつ飲んでいって。少し休まないとね。荷台に乗せて行ってあげるから、ゆっくり休むといいわ」

 俺はどこに来てしまったのだろう……
 これでは飛王を助けられないじゃないか。

 悔しくて悲しくて涙が出そうになったが、涙すら流せないほどカラカラに乾いていた。

 フィオナがくれる一滴ずつの水が、じわじわと体を潤していく。

 まさに生き返るとはこのことだなぁと思いながら、飛翔はいつしかまた眠ってしまった。
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