完璧を目指す一華さんは自分好みのスパダリも育成しちゃいます!

涼月

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Episode4 プロデュース第三弾

扉の先へ ④

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「私、職場で『パーフェクト上司』ってあだ名がついているの。最初は純粋に嬉しかった。一生懸命やっていた事を周りの人が認めてくれたんだって誇らしくて。でも、だんだん『完璧』を必死で演じるようになって、がんじがらめに縛られて苦しくなった。楽しくなくなって、周りの人を見る目も厳しくなっちゃって、嫌な女になっていたわ」
「そんな風に感じたこと無かったけれど」
「龍輝にだって、勝手に完璧をいっぱい押し付けて……ごめんね」

 勇気を振り絞って頭を下げた一華に、龍輝がきょとんとした瞳を向けた。

「ええ? そんなこと思ったことも無かったよ」
 少し考えるように黙った後、言葉を選びながらゆっくりと言う。

「一華も知っているように、俺は基本、好奇心に忠実な自由人だからさ。本来は他人からあーだこーだ言われるのは苦手なんだけど、でも一華が見せてくれる世界は知らないことばかりで、楽しくて夢中になった。押しつけがましいなんて思ったこと無かったよ。寧ろ感謝しかない」
「龍輝……ありがとう」

 ポロポロと一華の頬を涙が伝う。
 今まで抱えていた濁りや憂いが、龍輝の言葉によって綺麗に浄化されていくのを感じた。

「初めて会った時に思ったの。きっと龍輝だったらそう言って笑ってくれるだろうって」
「え!」
「龍輝だったら、私の『こうあるべき完璧』っていう押し売りも笑って楽しんでくれるって。私の罪悪感を軽く笑い飛ばしてくれる、私を救ってくれるって思ったの」

 驚いたような龍輝。その瞳が愛おし気に一華を見つめる。

 指先で一華の涙を拭いながら語り掛けた。
「押し売り、最高に楽しかったよ。これは本心だからね」
「龍輝……」

 嬉し涙が止まらなくなって、子どものようにしゃくりあげた。
 龍輝が優しく背を撫でてくれる。そして、静かな声で続けた。
 
「世の中にはさ、不完全だけど美しいモノってたくさんあるだろう」
「え?」
「生き物見ているとさ。変な格好とか思う生き物いっぱいいるけど、それは彼らが生きていくために選び取った究極の形なんだよね。人間の心も一緒なんじゃ無いかな」

 涙の残る瞳で見上げる一華。
 龍輝のちょっと変わった視点が、心にストンと響いてきた。

「みんな歪で凸凹していて、不完全で不格好で無数の形があって。でも、だからいいんだと思う。凸凹があるってことは、その隙間にピタリとハマる相手もいるはずで……」
「鍵と鍵穴みたいに?」
「そう。それが、人と人を繋げる役目を果たしているんじゃないかな。ハマった瞬間の安心感を求めて、みんな恋をしたくなるんだと思う。でも、そんな相手には簡単に巡り会えないから、傷ついたり焦ったりするし、時にはあきらめたくなるし、結局今世こんせでは会えない時もあるかもしれないけれど……」

 でも―――

「俺たちは見つけることができた」

 自分の鍵穴に差し込むように、一華をぴたりと抱き寄せた。

「一華の凸凹は俺が補う。俺の凸凹は一華が補ってくれる。だから大丈夫だよ」
「私も龍輝を補えてるの?」
「ああ。俺の好奇心を信じてくれてるだろ。呆れたり馬鹿にしたりしないで、一緒に楽しんでくれる。それが、凄く嬉しいんだ。夢中になって、脱線して、突っ走って。そんな俺のことを一華が信じてくれるから、俺は安心して息が吸えているんだよ」

 一華の目から再び涙が溢れ出す。

「そんなふうに言ってもらえるなんて……龍輝、ありがとう」
「俺からも。一華、ありがとう」

 出会えたえにしに感謝する。
 

 二つの影が一つになった。


 聞こえるのは二人の鼓動と風と波の音だけ。
 
 
 でも、もう、怖くないわ!


 私は、私の鍵を見つけられたから。

 心の扉をカチリと開けて、共に扉の先へ行けるんだから―――

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