私の推しは雑草男子

涼月

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Step3 胡蝶蘭男子の恋人役を務めることになりました

ヒメツルソバ②

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 しばらくして、車は小さなコンビニの前に停まった。

「一緒に買いに行く? それともお任せでいい?」
「お任せします」
「了解」

 高梨室長は颯爽とコンビニの中へと消えて行った。
 室長もコンビニなんて使うんだ……とても意外に思って、ぼーっとその姿を眺めていた。
 
 しばらくして帰ってきた室長の手には、おにぎりとお茶のペットボトルが。

「これから、俺の秘密の場所に案内してあげる。君が初めてだから。俺が嘘言ってないのは、堀井さんに聞いてもらえばわかるよ」

 そんな言葉と共に案内されたのは、海の近くの小さな公園。平日の遅い時間だから、もう人はあまりいなくて。
 でも、三つだけあるベンチの一つは、夜景を眺めるカップルが座っていた。
 そのカップルから一つ開けて、ベンチに二人で座る。

「洋服汚れちゃう」
「こうすれば少しはマシかな」

 さり気なくハンカチを引いてくれた。やっぱり。紳士教育されているんだろうな。
 お言葉に甘えて腰を下ろす。だって、この洋服返さなきゃいけないもの。
 その私の肩に、今度は自分のジャケットをかけてくれた。

「寒いだろ」
「でもこれじゃ室長が」
「俺は大丈夫だから」

 公園のライトに照らされた陰影のある顔はますます美しくて、イケメンってどんな角度も綺麗なんだなと思わず見とれてしまった。

「おにぎり、どれがいい? しゃけ、めんたいこ、こぶ、梅干しにおかかに……」
「一体幾つ買っていらしたんですか! 量が多すぎます」
「花乃ちゃんの好み聞くの忘れたって思って」
「別にどれでも食べられますよ。好き嫌いあまり無いし」
「そう、でも、好きなの取ってよ」

 私は結局、好きな明太子とこぶをいただいた。

「二つで足りるの?」
「はい」
「花乃ちゃんも明太子好きなんだ」
「あ、室長も好きなら」
 思わず返そうとした私の手を止めて、嬉しそうに微笑んでくれた。

「一緒で嬉しい。だから、食べて」

 その瞬間、私の心がまたふわふわし始める。
 今の言い方、めちゃくちゃ可愛い! なんで、室長こんなに可愛い言い方できるのかしら?
 またコロコロ変わる表情を見せられて、疲れ切っていた心が今度は癒されていくのを感じたの。

 こんなに嬉しい気持ちになるなんて、不思議。

 春の風はちょっぴり寒かったけれど、暗い夜の海を見ていても、二人だと全然怖く無い。
 むしろ解放感を感じて、磯の香りが体に染み渡るように感じた。
 並んで齧るおにぎりは、疲れ切った舌に染み渡るように美味しかった。

「室長もコンビニおにぎりなんて食べるんですね」
「何、その偏見。食べるにきまってるじゃん。寧ろ好き」
「そうなんですか! お家に帰ったら、いつもフルコースが用意されているんじゃないんですか?」
「まあ、実家はそんな感じだったけれど、今は一人でマンション暮らしだからね。そんな料理は出てこないよ。ほとんど外食」
「そうだったんですか」
「花乃ちゃんは?」

 その言葉に、一瞬どう答えようかと考えた。
 
 
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