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Step7 私の推しは……
キュウリグサ
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高梨家では公認になった私たち二人の仲も、会社ではまだ秘密。
室長と契約社員のままなの。
でも、私も経営戦略室の中でみんなに認めてもらえるように奮闘中よ。
いずれは、派遣社員から正社員への登用第一号になるつもりなんだから。
「花乃ちゃんは、結局雑草男子よりも俺を選んでくれたんだよな」
夕食後、そんなことを言い出してご満悦の怜さん。チラリと流し見て、私は意地悪な笑みを浮かべた。
「いいえ、私は推し変なんてしていませんよ。昔も今も、雑草男子推しです」
「え、どういうこと? 彼氏よりも雑草男子を取るっていうのかい?」
ちょっと拗ねたような顔になる怜さん。
でも、騙されませんからね。私の目は節穴じゃありません。
「いいえ、彼氏も雑草男子だから推しは変わっていないってことです」
「おかしいな。俺、どう見ても雑草じゃないと思うんだけれど。顔良し、収入良し、成績良し、性格良し。ね、フラワー界のサラブレッドだろ?」
「フラワー界のサラブレッド。例えば胡蝶蘭男子とか?」
「おお、そうそう、そんな感じ」
ますます調子に乗る我が愛しい人。
でも、そうじゃないんだよね。だって……
「でも、怜さんは雑草男子です。だって……怜さんが『ひなたぼっこ』さんだから」
「…………え?」
濃い琥珀色の美しい瞳を見開いて、数拍置いてから声をあげた怜さん。
「俺が『ひなたぼっこ』さん? なんでそんなこと……」
「ずーっと不思議に思っていたんです。怜さんと出会った時、私は雑草の写真を見ていただけでした。それなのに、怜さんはその投稿主が男性だと言い当てて、いきなり悪口言い始めて」
私はそこで一旦怜さんの反応を見る。
バツの悪そうな顔になった怜さん。なんだか悪戯を怒られた子どもみたいな顔している。可愛い。
「私が知っている怜さんは、見ず知らずの人をいきなり批判するような人じゃないから。それに、投稿写真と花言葉が私の気持ちを知っているかのように、励まし続けてくれていて……まるで一緒にいるみたいだった」
怜さんが恥ずかしそうな、嬉しそうな顔になる。
「それに、私の推しへの愛を甘く見過ぎです。怜さん、私は雑草男子のことがとってもとっても大好きなんです。だから……」
そう言って、怜さんの膝に座る。
「だから、どこに居ようと見つけてしまうんです。好きにならずにいられないんです」
そう、本当は出会った時から惹かれていたの。
だって、同じ雰囲気を感じたから―――
でも、やっぱり最初に見つけてくれたのは怜さんで……
だから私もあなたを見つけられたんだよ。
見つけてくれて―――ありがとう。
大好きな人。
素敵な写真と言葉で私を励まし続けてくれた人。
こっそりSNSでいっぱい愛を伝えてくれた人。
気づかないわけないでしょ。
「全く……やっぱり、花乃ちゃんは最高だよ」
怜さんのキスは、甘くて優しくて温かい。
ねぇ、これからは一緒にひなたぼっこできるね。
―――今日の花は『キュウリグサ』。花言葉は『愛しい人』『真実の愛』。
君に贈る言葉。愛してる。それから、いつもありがとう―――
だから、私の推しは『雑草男子』。
どんな時も、私が愛する人は、ただ一人。
「愛してる」
怜さんの言葉が私の心に染み込んでいく。
だから同じ言葉を贈るわ。
「私も愛してる」
今までも、これからも、ずっと―――
完
室長と契約社員のままなの。
でも、私も経営戦略室の中でみんなに認めてもらえるように奮闘中よ。
いずれは、派遣社員から正社員への登用第一号になるつもりなんだから。
「花乃ちゃんは、結局雑草男子よりも俺を選んでくれたんだよな」
夕食後、そんなことを言い出してご満悦の怜さん。チラリと流し見て、私は意地悪な笑みを浮かべた。
「いいえ、私は推し変なんてしていませんよ。昔も今も、雑草男子推しです」
「え、どういうこと? 彼氏よりも雑草男子を取るっていうのかい?」
ちょっと拗ねたような顔になる怜さん。
でも、騙されませんからね。私の目は節穴じゃありません。
「いいえ、彼氏も雑草男子だから推しは変わっていないってことです」
「おかしいな。俺、どう見ても雑草じゃないと思うんだけれど。顔良し、収入良し、成績良し、性格良し。ね、フラワー界のサラブレッドだろ?」
「フラワー界のサラブレッド。例えば胡蝶蘭男子とか?」
「おお、そうそう、そんな感じ」
ますます調子に乗る我が愛しい人。
でも、そうじゃないんだよね。だって……
「でも、怜さんは雑草男子です。だって……怜さんが『ひなたぼっこ』さんだから」
「…………え?」
濃い琥珀色の美しい瞳を見開いて、数拍置いてから声をあげた怜さん。
「俺が『ひなたぼっこ』さん? なんでそんなこと……」
「ずーっと不思議に思っていたんです。怜さんと出会った時、私は雑草の写真を見ていただけでした。それなのに、怜さんはその投稿主が男性だと言い当てて、いきなり悪口言い始めて」
私はそこで一旦怜さんの反応を見る。
バツの悪そうな顔になった怜さん。なんだか悪戯を怒られた子どもみたいな顔している。可愛い。
「私が知っている怜さんは、見ず知らずの人をいきなり批判するような人じゃないから。それに、投稿写真と花言葉が私の気持ちを知っているかのように、励まし続けてくれていて……まるで一緒にいるみたいだった」
怜さんが恥ずかしそうな、嬉しそうな顔になる。
「それに、私の推しへの愛を甘く見過ぎです。怜さん、私は雑草男子のことがとってもとっても大好きなんです。だから……」
そう言って、怜さんの膝に座る。
「だから、どこに居ようと見つけてしまうんです。好きにならずにいられないんです」
そう、本当は出会った時から惹かれていたの。
だって、同じ雰囲気を感じたから―――
でも、やっぱり最初に見つけてくれたのは怜さんで……
だから私もあなたを見つけられたんだよ。
見つけてくれて―――ありがとう。
大好きな人。
素敵な写真と言葉で私を励まし続けてくれた人。
こっそりSNSでいっぱい愛を伝えてくれた人。
気づかないわけないでしょ。
「全く……やっぱり、花乃ちゃんは最高だよ」
怜さんのキスは、甘くて優しくて温かい。
ねぇ、これからは一緒にひなたぼっこできるね。
―――今日の花は『キュウリグサ』。花言葉は『愛しい人』『真実の愛』。
君に贈る言葉。愛してる。それから、いつもありがとう―――
だから、私の推しは『雑草男子』。
どんな時も、私が愛する人は、ただ一人。
「愛してる」
怜さんの言葉が私の心に染み込んでいく。
だから同じ言葉を贈るわ。
「私も愛してる」
今までも、これからも、ずっと―――
完
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