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心の震え(エクレールside)
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ティアナ姫、深窓の姫だと思っていたのに、なんてことだ!
こんなにぐいぐいくるタイプだったとは……
癒しの花が欲しい。俺はその誘惑に負けて、つい扉の隙間から手を出してしまった。それが彼女の策略とも知らずに。
いきなり手を繋がれて、頭が真っ白になった。
騙された! と思ったけれど、次に流れ込んできた癒しの魔力は、ティアナ姫が言う通り、花からもらっていた癒しよりも数倍、いや、数百倍も強力で気持ちが良かった……
ああ、蕩けそうだ。
それに、彼女の手は小さくて柔らかくて温かい。
言葉とは裏腹に、俺への気遣いに満ちた手。
ああ、彼女は俺のことを心から心配してくれている。
癒しの魔力と共に伝わってくる彼女の気持ちが、とても嬉しかった。
それなのに―――
俺はバクバクになってしまった心臓に手を当てた。
おかしい! ちっとも効いていない。
今も俺の心臓はこんなにドキドキ爆音を鳴らしているぞ。
いや、むしろ癒しの魔力をもらう前より酷い。
ん?
でも、大丈夫だ。
俺は俺の魔力、雷撃の魔力を爆発させてはいない―――
不安や恐れで心臓がバクバクすると、いつも雷撃の魔力が暴走した。
だから、俺はなるべく心を震わせないように。
平静を保とうと努めてきたんだ。
初陣のあの日以降。
一気に過去の記憶が蘇り、俺の目はまた光を失う。
そうだ。俺はこの過去を背負って生きていかなければいけない。
だから、二度と心を震わせてはいけないんだ。
重い足取りでベッドへ近づくと身を投げ出した。
早く鎮めなければ!
でも、叶う事なら……この心臓を鎮めたくは無い。
そんな欲が沸き上がってくる。
彼女からもらったこの心の震えは、あの日のどうしようもなく冷たくて身を引き裂くような震えとは違う。
温かくて体がぽかぽかしてくるような震えだ。
それに、魔力の暴走の気配も無い。
頬を冷たい物が流れて、初めて俺は泣いているのだと気づいた。
もっと癒して欲しい。
そう願う事は、俺に許されることなのだろうか……
こんなにぐいぐいくるタイプだったとは……
癒しの花が欲しい。俺はその誘惑に負けて、つい扉の隙間から手を出してしまった。それが彼女の策略とも知らずに。
いきなり手を繋がれて、頭が真っ白になった。
騙された! と思ったけれど、次に流れ込んできた癒しの魔力は、ティアナ姫が言う通り、花からもらっていた癒しよりも数倍、いや、数百倍も強力で気持ちが良かった……
ああ、蕩けそうだ。
それに、彼女の手は小さくて柔らかくて温かい。
言葉とは裏腹に、俺への気遣いに満ちた手。
ああ、彼女は俺のことを心から心配してくれている。
癒しの魔力と共に伝わってくる彼女の気持ちが、とても嬉しかった。
それなのに―――
俺はバクバクになってしまった心臓に手を当てた。
おかしい! ちっとも効いていない。
今も俺の心臓はこんなにドキドキ爆音を鳴らしているぞ。
いや、むしろ癒しの魔力をもらう前より酷い。
ん?
でも、大丈夫だ。
俺は俺の魔力、雷撃の魔力を爆発させてはいない―――
不安や恐れで心臓がバクバクすると、いつも雷撃の魔力が暴走した。
だから、俺はなるべく心を震わせないように。
平静を保とうと努めてきたんだ。
初陣のあの日以降。
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そうだ。俺はこの過去を背負って生きていかなければいけない。
だから、二度と心を震わせてはいけないんだ。
重い足取りでベッドへ近づくと身を投げ出した。
早く鎮めなければ!
でも、叶う事なら……この心臓を鎮めたくは無い。
そんな欲が沸き上がってくる。
彼女からもらったこの心の震えは、あの日のどうしようもなく冷たくて身を引き裂くような震えとは違う。
温かくて体がぽかぽかしてくるような震えだ。
それに、魔力の暴走の気配も無い。
頬を冷たい物が流れて、初めて俺は泣いているのだと気づいた。
もっと癒して欲しい。
そう願う事は、俺に許されることなのだろうか……
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