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差し出された手(ティアナside)

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 カチャリと鍵音がして、扉がほんの少しだけ開いた。
 その隙間から、おずおずと差し出された白い手。

 やっぱり、とても繊細な手……

 私はその手へ、自分の手を重ねたの。

 ピクリとして、慌てて引っ込めようとする手を両手で包み込んで引き留めれば、焦ったようなエクレール様の声。

「は、花をくれるはずでは……」
「はい。でも、こちらの方がより多くの癒しを差し上げられますので」

 重ねた掌から、私の魔力を少しずつ少しずつ流し込んでいく。
 
 引き抜こうと力を入れては緩める、そんなことを繰り返していたエクレール様の手から力が抜けた。

「ああ……」

 気持ち良さそうな声が聞こえて、ちょっとドキッとしてしまう。

 なんて……セクシーなお声。

 扉を背に、右手だけ出された状態。
 まだ扉を開けてはくださならないけれど、逃げることはあきらめてくださったみたい。

「ティアナ姫。ありがとう。もう充分だよ。心が落ち着いた。いや、落ち着いてはいないが……何を言っているんだ。俺は」

「少しはお疲れが取れましたでしょうか?」
「あ、ああ。取れた、取れた。礼を言う。もう帰っていいから」

 そう言って手を引き抜こうとする。

 そうよね。一回で心を許して下さるはずないわよね。

 私は仕方なく彼の手を離した。
 扉を閉める刹那、気づかわし気な問いかけ。

「なぜ、仮面をまだつけているんだ?」

 私のこと、やっぱり心配してくださっているんだわ。
 それが、とても嬉しかったの。

「エクレール様のお陰で自由に取り外しができるようになりました。ありがとうございます」
「別に礼を言われるようなことでは……」
「でも、エクレール様には顔を見せるお許しをまだいただいておりませんので、こうして仮面をつけて参りました」
「あ、それは、いや、その通りなのだが」
「いつか、お許しをいただける日が来ることを願っております」
「……」 

 ちょっと調子に乗って言いすぎちゃった!

 でも、戸惑っているエクレール様の様子が伝わってきて、ついつい顔がほころんでしまうの。
 エクレール様、可愛い。

 私って、こんなに積極的なタイプだったの?

 自分で自分に驚いた。
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