未来の魔王は図書館の片隅で愛を育む

涼月

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第10話 プレゼント

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「フェリス嬢、君も王国を代表した、正式なお見合い対象だということを忘れないで欲しい」
「レオン王子様……」

 真剣な眼差しに吸い込まれそうになる。

 そうだわ……私、リーズのだと思っていた。だから、私が皆様のお見合い相手として見られることは無いって、無意識に決めつけていたんだわ。

 レオン王子は、私のそんな卑屈な心に気づいて諭してくださったのね。

 とても細やかな優しさをお持ちの方。

「ありがとうございます」
「ふふ、僕っていい奴だろ」
「はい、とても優しくて、温かい方だと思いました」

 レオン王子様がぱあっと明るく微笑まれた。

 ああ、眩しい!

 その時、予鈴の音が響いた。

「残念。もう帰らないといけないね」
「レオン王子様、本日はありがとうございました。とても楽しかったです」
「そう、それは良かった。この庭、実は奥が深いんだよ。また明日ね」

 耳元でそんなことを囁かれたら、ドキッとして。

 もう、免疫の無い私には、刺激が強すぎるわ……



 図書館の片隅で。
 今日は私よりも早くにアルドール様がいらしていた。

 あの、赤毛に琥珀色の瞳をした眼鏡の貴公子に変身して。

「アル、あの、なんとお呼びすればいいですか?」

 じいっと見つめられて、トクンと心臓が跳ねた。

 変身していても、アルドール様の強い目力に囚われる。

「赤毛だからソールで」
「ソール様、太陽と言う意味ですね。素敵です」
「今日の昼休み、レオンと一緒だっただろ」
「はい」
「俺の目の届く所にいろと言ったはずだが」
「えっ!?」

 そんなこと仰って無いと思うけど。

「でないと助けてやれないだろうが」
「あ、お気遣いありがとうございます。でも、レオン王子様がいらっしゃいましたから、危険なことは」
「これだから、ぽやぽやした奴は」
「?」

 ああ、そうか。
 スキル無しの私ではレオン王子様を守れないからね。

 アルドール様って、やっぱりお友達思いの優しい方なのね。

「すみません。スキルの無い私ではレオン王子様の護衛は難しいですものね。役立たずなことを忘れていました」
「は!? レオンの護衛って……」

 ソール様ことアルドール様がぽかんと口を開いて困惑されていた。

「危ないのは、レオンじゃなくてお前だろ」
「私ですか。そうでした。ですものね」
「いや、そうじゃなくて、レオンがお前に言い寄ったり……それ以上のことをするかもしれないし……」

 最後の方はもごもごと口の中で仰っているから、よく聞き取れなかったんだけど。

 でも、アルドール様がの心配をしてくださっているんだって、気づいたの。

「いつもありがとうございます」

 ふうぅっと息を吐き出されたアルドール様がずいっと両手を差し出された。

「魔力、くれるんだろ」
「あ、はいっ」

 つい嬉しくなって、張り切った声をあげてしまったわ。

 しまった!
 ここは図書館でした。

 ちょっと周りを見回して、怒られる気配は無かったので、ほっとしてソール様の姿のままアルドール様に手を重ねた。

 手の平がふんわりと温かくなる。

 おかしいわね。
 リーズに魔力供給する時には、こんな感じにならないのに。

 真剣なアルドール様の眼差しに、心臓がトクトクと高鳴る。
 彼の頬も朱がさしてきて……

「今日はここまでにしよう」
「はい」

 いつの間にか、アルドール様は変身を解いて、いつもの黒髪、赤い瞳に戻られていた。

 やっぱり、こっちのほうが素敵……

 つい、見惚れて見つめてしまったわ。

 すいっと視線を外されたアルドール様。

 思い出したようにポケットから取り出されたのは、美しい赤の宝石が埋め込まれたネックレス。
 
「魔力の礼に、これをやる」
「えっ!?」

 急展開に、私の感情はついていけない。
 おろおろしていたら、「こっちに来い」と隣を指さされた。

 言われるがまま、アルドール様の横へ腰を下ろせば、くるりと後ろに向きを変えられてしまう。

「髪の毛をあげてろ」
「髪の毛ですか」
「ああ、邪魔だ」

 そんな事言われても……

 栗色の髪を持ち上げて団子にして支える。
 うなじが急に寒く感じて、心細くなる。

 と、その時―――

 アルドール様が私の首にネックレスをかけてくださったの。

 きゅんと心臓が鳴った。

 あれ、私……

 留め具に悪戦苦闘されているようで、時々、アルドール様の指先が肌をかする。

 その度に、私の心臓がどくんどくんって大きく波打って、ちょっと苦しい。

 どうしよう。
 こんなこと初めてで……

「加護の魔法を付与してある。それでも、困った事態に陥った時は、握って俺を呼べ。直ぐに駆けつけてやる」
「えっ、そんな、ご迷惑おかけできません」

 振り向いた私のおでこを、軽くピンと弾いたアルドール様。

 照れくさそうに笑いながら仰ったの。

「今更何を言う。お前はどうにも危なっかしいからな。やきもきするよりも、この方が俺も安心なんだよ」
「すみません。いつも助けてくださってありがとうございます」
「ふん、だったらおとなしく付けておけよ」
「はい」
「絶対に外すなよ」

 じいっと赤の瞳に見つめられて、全身が火を噴いた。

 あれ、私、どうしちゃったのかしら!?
 
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