暁の空に浮かぶ月

MOKO

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どうやって帰ったか覚えてない。

アパートへ帰ると、いつもの様に鍵が開く。

「おかえりなさい!お疲れ様」

無言で部屋へ上がると玄関先で早苗を抱きしめた。

「杉本 早苗 …いや山口 早苗

お前 俺の事 初めから知っていたのか?」


冷たい身体を離して俺の頬に両手を当て笑った…。

でもその笑顔が悲しそうに見えた。

「ふふっ…ヒロくん やっと思い出してくれた?」

「何で?」

「何が?」

「何で自殺なんか?」

早苗とは思えない暗い顔

「私にも色々あったの…。色々…。

高3の時転校してヒロくんと同じ学校になった時嬉しかった。

きっと気がつかなかったんだね

私、あの時 随分すれてたから髪もパーマ当ててたし茶髪だったし

化粧もしてたもんね。

でも、私は気がついた。

ヒロくんに会えて嬉しかったの。

小学生の頃からずっと好きだった初恋だったから…。」


…何で…俺は…気がつかなかったんだ…。



「私、変わり過ぎた自分が嫌いで仕方なかった…。

この部屋、本当に私の部屋だったのよ…。

私は親元を離れてやっと解放された。

しかも大好きなヒロくんに会えた…。

でも、私が心も身体も汚れてしまったから

ごめんねヒロくん、でも私本当は

ずっとヒロくんに抱きしめて貰いたかった。」


「!!」


綺麗に泣く早苗を俺は抱きしめたいと思った。


「おいで、俺も早苗を抱きしめたい。」


早苗は俯き

白く美しい身体を俺の前にさらけ出した。


その晩俺たちは結ばれた。

冷たい冷気がまとわりつく

不思議なくらい実感があった。

これは夢の中なのか…?





俺は貪る様に早苗を何度も愛した。



明け方ベットの上で俺の胸にもたれかかっていた。

早苗の真っ白だった身体が手足が透き通っていた。



「ありがとうヒロくん。これで心置きなく成仏出来そうだよ。」



「ダメだ!行くなよ!早苗 俺はお前がいないと、ダメだ!」



「うん…。ヒロくんありがとう。でも、ごめんね 。でも、もう行かなきゃ…。」

透明になって行く早苗を俺は逃さない様に抱きしめる。


「ヒロくん…大好きだよ。」

「早苗、俺も…早苗が好きだ。」



カーテンの隙間から朝の光が差し込むと

早苗はキラキラ光って溶けていった。


耳元で響いた早苗の最後に残した言葉




「ヒロくんありがとう。」


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