奥手の恋ほど、めんどくさいモノはない。

MOKO

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振り払った手で叩き落とされた紙袋

足元で砕け無惨な形状になってしまったが、可愛くラッピングされたクッキーだとわかる。

青くなって立ちすくみ震える少女達

無表情で一瞥しただけ、くるりと背を向け歩いて俺の親友 。

あぁ、またか…。

腹の中で苦虫が潰れたわ!

視線を奴の背中に向け、様子を見る。


 あぁ…やっぱ耳まで赤くなってるわ…。

俺にはわかる

わかるよ淳也…。

彼女達の積極的な行動にキャパオーバーしたお前は

この状況に上手く対応が出来なかったんだな…。





しかし…俺は言いたい

お前、その態度は違うだろ!

もう、いい加減 飛び蹴りしても良いですか?

男子校の俺達から してみれば…だ。

通常モードの高校生活は 当然 

盛ったヤローまみれで華がないっ!

せっかく女子とお近付きになれる数少ないチャンスを

コイツの所為で生かす事が出来ないなど考えられん。


すかさず 俺は足元に落ちていた、袋の中で砕けたクッキーを拾い上げ

出来得る限り爽やかな笑顔を向け優しく対応した。

「わぁこれ、手作り? すごいね!ありがとう!

しかし我らが部長は、僕らが怒らせて、今ちょっと機嫌が悪いんだ。

いつもは、もうちょっと穏やかなんだけど、僕達の所為で本当にごめんね。

そんな怯えた顔しないで 部長には後で言い聞かせとくから

心のこもったせっかくの差し入れ

後で部員みんなで食べるから心配しないでくれないかな。」

「あ…ぁ………。」

消え入りそうな声で俺の顔を見る。

可愛い女の子たち顔色がぽっと赤く変わった。

淳也に対する怒りを抑えて満面の笑顔で爽やか対応した甲斐がある。

少女達はホッとした顔で伺う様に顔をあげる。

んんっ!いい感じにフォロー出来たか?

お礼に連絡先交換聞けるか?

俺は下心満載で笑顔を深めてみる…。

…いけるか…?

甘いか…?


「おら!トロトロするな!行くぞ!」

淳也が地を這う様は低い声で唸る。

びくりと肩を震わせ再度 顔色が変わった少女達

その瞬間俺もプッチン

「やかましい 淳也 お前は喋るな しめるぞ!」

淳也に対して抑えていた怒りが爆発した。

やべっ…地が出た…女の子の前だった。そう思ったが後の祭り。



「あ…し…失礼します…。」


かろうじて聞き取れる小さく掠れた声で

涙目になりながら俺にぺこりと頭を下げると少女達は走り去って行った。



…そりゃそうなるわな…。


ぁああぁあぁああぁあ~ くそっ!これで何回めだ?




俺の親友の魚住淳也は

本人の意思に関係なくモテる。

本当に老若男女関係なくモテる。

性格も顔も惚れ惚れするほどの男前

持って生まれた低い声

低音ボイスは威圧的な雰囲気が消せない、それは仕方ない。

指導力も判断力もある男でその人気は男子校においても発揮され

1年の時すでに生徒会からも、一目置かれ

サッカー部と掛け持ちで構わないので生徒会役員になって欲しいと

声がかけられた程だ。

そのカリスマ性は腹立たしい事に確かだ。


サッカー部としては2年と3年が団結し

淳也を部長に祭り上げ 1年で副部長、2年では部長という立場を押し付け、

サッカー部での足場を固めたため生徒会長候補から外された。

しかし生徒会側はまだ納得していない様で

部長兼でいいから生徒会に入って欲しいと未だに声をかけているらしい。


そんな淳也にもただ1つの弱点、と言うより残念で痛い所

それは女の子に対して超オクテでシャイ、女と目も合わせられん臆病者だ。

女の子に近づかなければ、弱点として気が付かれないから

意図して関わらない様にしている。



だから、もちろん童貞だ!ざまぁ笑笑笑

(俺も人の事は笑えないのだが…。)


腹の中でドス黒い罵りを吐き出し溜飲下げる。

淳也も男とは普通に付き合えるのに、女の子に対する態度は本当に最悪だ。


このまま淳也と一緒にいたら俺たちまでとばっちり受けて

彼女が出来ない街道まっしぐらになりそうだ。

せっかく名門と言われる星稜サッカー部のスタメンに入って

女の子にきゃーきゃー言われる立場になったというのに…。

今や、任侠スポ根 漢気だけの苦い世界

俺は肺の空気を全て吐き出すような深いため息を吐いた。




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