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第19章:母親
8話:頼み事
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翌日、裕也は相撲部の面々に母親が自分と会いたがっている件を伝えた。会う日は土曜日、場所は未定である、と。
「……話したことがあったから、すでに知っていると思うけれど、俺の母親はとんでもないろくでなしだ。男を家に連れ込んでは、子供の目の前で淫らな行為を行うわ、その男が俺に暴力を振るっても知らんぷりだわで。そんな奴が、俺に会いたいって言っている。
もし、他人からそんな話を聞かされたら、俺は『どうせ会っても無駄だ』とか『そんな奴信用しちゃダメ』って言うはずなのに、いざ自分が当事者になってみると、俺は母親を信じたくなってきているんだ」
「それは、ほんと、なんというか、その……止めた方がいいと、私は、思います、ねぇ」
裕也から語られた状況を聞いて、真由美は困惑気味にそう答える。
「小学三年生の時のあなたを見た私から言わせてもらうけれど、あれはダメよ。人間には、他人の痛みに共感して、その痛みを和らげてあげようとする……そういう本能的なものがある。でもあの母親にはそれがない……そうじゃなきゃ、あんたをあんな恰好になるまで放置しない。子供をあんな状態にするような奴は信用できない」
明日香は真由美と違い、全く遠慮のない言葉で裕也の母親を非難する。
「わたしは先輩の母親を知らないですが、先輩の言う通りで……他人事として話を聞く限りは、絶対にやめておけって言いたい案件ですね。それでも、当事者になったときの辛さはなんとなくわかります……冷静な判断が出来なくなる感じは、虐めの当事者になった時に感じましたから」
素華もきっぱりと言い放つ。今日は百合根は相撲部に来ていないため、彼女はこの話し合いに参加しなかったが、きっと同じようなことを言うのだろう。やはり、正常な判断をすると、母親とあっても断固として拒絶するべきという意見が当たり前のようだ。
「素華の発言は耳が痛いな。当事者になったら本当に冷静な判断が出来なくなっちゃうんだ」
そう裕也が弱音を吐くと、明日香がため息をついた。
「そんなに誰かに愛されたいなら、私が愛するからそれで問題ないでしょ? 前も言ったけれど、わたしはあなたの事を兄弟だと思ってるし、何かあったら助けたいと思ってる。そんな母親、ぶん殴っちゃっていいから」
明日香が人目も憚らずそう言うと、真由美も素華も目を丸くして驚いている。
「なんというか、明日香先輩、大胆ですね……場合によっては愛の告白ですよ、それ」
真由美が明日香の言葉の真意を確認するが、明日香は真顔だ。
「そうだけれど? 別に、愛の形なんて恋人とか夫婦だけじゃないでしょ? 親子だって兄妹だって、愛は愛。言葉にしないと消えちゃうこともあるんだから、言っておかないと。裕也君は愛されているんだし、今更ただの生みの親なんぞ必要ない。……まぁ、一年頑張って風俗でもなんでも働いて、その稼ぎを息子に渡せるくらいなら考えてもいいけれど?」
ある意味、無慈悲な言葉。明日香は裕也のことを恋人だとは思っていないとも取れるセリフに裕也は複雑な気分だが、彼女の言葉に、少しだけ母親という誘惑をはねのける勇気がもらえた気がした
「……話したことがあったから、すでに知っていると思うけれど、俺の母親はとんでもないろくでなしだ。男を家に連れ込んでは、子供の目の前で淫らな行為を行うわ、その男が俺に暴力を振るっても知らんぷりだわで。そんな奴が、俺に会いたいって言っている。
もし、他人からそんな話を聞かされたら、俺は『どうせ会っても無駄だ』とか『そんな奴信用しちゃダメ』って言うはずなのに、いざ自分が当事者になってみると、俺は母親を信じたくなってきているんだ」
「それは、ほんと、なんというか、その……止めた方がいいと、私は、思います、ねぇ」
裕也から語られた状況を聞いて、真由美は困惑気味にそう答える。
「小学三年生の時のあなたを見た私から言わせてもらうけれど、あれはダメよ。人間には、他人の痛みに共感して、その痛みを和らげてあげようとする……そういう本能的なものがある。でもあの母親にはそれがない……そうじゃなきゃ、あんたをあんな恰好になるまで放置しない。子供をあんな状態にするような奴は信用できない」
明日香は真由美と違い、全く遠慮のない言葉で裕也の母親を非難する。
「わたしは先輩の母親を知らないですが、先輩の言う通りで……他人事として話を聞く限りは、絶対にやめておけって言いたい案件ですね。それでも、当事者になったときの辛さはなんとなくわかります……冷静な判断が出来なくなる感じは、虐めの当事者になった時に感じましたから」
素華もきっぱりと言い放つ。今日は百合根は相撲部に来ていないため、彼女はこの話し合いに参加しなかったが、きっと同じようなことを言うのだろう。やはり、正常な判断をすると、母親とあっても断固として拒絶するべきという意見が当たり前のようだ。
「素華の発言は耳が痛いな。当事者になったら本当に冷静な判断が出来なくなっちゃうんだ」
そう裕也が弱音を吐くと、明日香がため息をついた。
「そんなに誰かに愛されたいなら、私が愛するからそれで問題ないでしょ? 前も言ったけれど、わたしはあなたの事を兄弟だと思ってるし、何かあったら助けたいと思ってる。そんな母親、ぶん殴っちゃっていいから」
明日香が人目も憚らずそう言うと、真由美も素華も目を丸くして驚いている。
「なんというか、明日香先輩、大胆ですね……場合によっては愛の告白ですよ、それ」
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「そうだけれど? 別に、愛の形なんて恋人とか夫婦だけじゃないでしょ? 親子だって兄妹だって、愛は愛。言葉にしないと消えちゃうこともあるんだから、言っておかないと。裕也君は愛されているんだし、今更ただの生みの親なんぞ必要ない。……まぁ、一年頑張って風俗でもなんでも働いて、その稼ぎを息子に渡せるくらいなら考えてもいいけれど?」
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