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  ハァハァハァハァ……

  苦しい……息が……

  天井が、床が、グニャリと歪んで

  足元がフラつき立ってられない……



  助けて……

  助けて……

  息が……出来ない……






「柚希……ゆっくり呼吸して。大丈夫……もう、あいつはいないから。大丈夫だから……」



  息を吸うのが止められない俺の口を覆うように、陽人が口付けた。


  「大丈夫だよ」そう言って舌を絡め、優しく背中を擦ってくれた。咥内の陽人の温もりに気持ちがだんだん落ち着いて、呼吸が少しずつゆっくりになっていった。



  下校で生徒が溢れている中、人気者の陽人と廊下でキスをしているというだけで、人の視線が凄かった。



  そんな風に、人の注目を浴びる中ーーー









「うわぁぁぁぁぁぁぁぁーーーー!!!」






  人目を憚らず、半狂乱になりながら泣き叫んでいた。

  陽人は「我慢しなくていいから」って優しく背中を擦り続けた。三角巾が涙と鼻水でぐしょ濡れになっていた。






  あれほどあった刺さるような視線が疎らになるくらい、時間が経っていた。

  まだ、涙を流ししゃくりあげている俺に、「もう少し休んでいこう。歩ける?」と陽人が聞いてきて、答えるように小さく頷いた。

  陽人に身を委ね、抱きかかえられるようにして、ゆっくりと歩いた。













「ハル先輩……」

「柚希ちゃん……どうしんすかァ?」



  生徒会室のドアの前で、取っ手に手をかけてる稀瑠空と絢斗に出くわした。



「今はごめん…後で話すから……先に入ろうとしてた所悪いんだけど……使わせてもらっても良いかな?」



「いえ、用が済んで帰る所だったので、大丈夫です」



  ただならぬ俺達の様子に二人は深入りせずに、ただ黙って手を貸してくれた。



「カーテン全部閉めときました。あと、会議中の札下げとくので、帰る時に外して下さい。お先に失礼します……」

「ゆっくり休んでって下さい。お疲れ様っすゥ……」



  稀瑠空も絢斗も俺に気遣い、静かな口調で挨拶し帰っていった。
  二人が用意してくれた椅子へ座る。
  テーブルに置かれたラベンダーティーの、優しい香りが辺りに漂っていた。



「柚希、落ち着くまで大丈夫だから。全部、吐き出しちゃって」



  陽人に抱きしめられ、俺もしがみつきながら、暫く小さく泣いていた。その間も陽人は優しく背中を擦ったり、頭を撫でたりしてくれた。



  散々泣いて漸く泣き終えると、縋るように陽人に抱きつきキスをした。



「はると……柊の事、忘れたい……俺の中から……消し去って……お願い……」



  陽人は優しい眼差しで見つめると、ゆっくりと頷きキスをしてきた。


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