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白金市では、毎年恒例の花火大会があった。
今日がその開催日だ。
俺は青葉市の花火大会は毎年見に行ってたけど、白金市の花火大会は初めてだった。
住んでいるマンションから丁度花火が見えるみたいで、今日の夕食は花火を見ながらバルコニーで食べる事になっていた。
「樋浦さん、これ頼まれていた物です。他に欲しいのがあったら言って下さい」
「悪かったな。ご苦労様」
玄関で男が柊にビニール袋を渡している。
花火大会で出ている屋台の食べ物を、柊が手下に頼んで何種類か買ってきてもらっていた。
会場は毎年混雑していて、屋台もすごく混んでるみたいだ。そんな状況なのに、柊に頼まれた物を買いに行かされる手下は、ブラック企業の社員みたいで大変だと思った。
テーブルの上には、たこ焼き、焼きそば、イカ焼き、焼き鳥、唐揚げ、フライドポテト、フランクフルトと、ベビーカステラと何故かロケモンのわたあめまであった。
「こんなに、食えるのかよ……」
「俺は余裕で食えるけど。柚希は食べたいの、適当につまんで」
「……なんで、ロケモンのわたあめがあるの?」
「ロケモンが、好きなんだよ」
「ふふっ……似合わねぇ……」
「まあな。ロケモンのゲーム、マジで面白いから、今度やろうぜ」
少年みたいな無邪気な顔で、柊が笑った。
また新たに見る事が出来た、大人の柊の笑顔。
見慣れないその笑顔に、思わず釘付けになった。
ーーそういえば、ゲームで一緒に遊ぶのって、初めてかも……
「うん、やる」
柊は煙草に火をつけて、深々とうまそうに吸いながら、「楽しみだな」ってポツリと呟いた。
俺はペットの炭酸飲料を、柊は缶チューハイを、コツンとぶつけてから飲み始めた。
二人でガーデンソファーに並んで座りながら、花火が打ち上がるのを待った。
ヒュルヒュルと音が聞こえ、大空に大輪の花が開いた。
大きな花火大会だけあって、花火の種類も多く、間延びせずに次々打ち上がる。
屋台の食べ物を口にしながら、二人とも無言で花火を眺めていた。
ふと柊の顔を見ると、いつもと違って穏やかな顔をしている。
そんな柊を見ているうちに、自分の心臓が波打ってくるのがわかった。
「白金市の花火大会は、ガキの頃、叔父さん一家に連れられて、毎年のように見ていたんだ……」
煙草を吸いながら、まるで独り言のようにポツリポツリと語り出した。
柊から子供の頃の話を聞くのは、初めてかもしれない。
「いつか……家族と見たいって、思ってたから…………柚希と一緒に見る事が出来て、すげぇ嬉しい……」
ソファーへ無防備に投げ出した俺の手に、指を絡めて強く繋いできた。
柊の手は指がすらりと長くて、それでいて大きくて男らしい手をしていた。
俺は花火大会は当たり前のように、家族と過ごしていた。
美空と俺と。ひいばあちゃんが生きていた頃は、ひいばあちゃんと三人で。
毎年、俺にとっては恒例行事で、当たり前の事で。だから今年も、美空と見に行く予定だ。
その当たり前は、柊にとっては特別な事で……
紫煙を吐き出しながら、遠い目で切なそうに花火を見ている柊。
ーー本当は、一度も振り向いてくれない父親と、見てみたいのかもしれない……
その美しくも儚げな横顔を見てると、堪らなくなって……
柊に顔を近付け、唇を重ねた。
柊はすごく驚いた顔で、俺を見てたけど、そのまま受け入れて、俺に主導権を委ねた。
啄みながら、重ねたり離したりを何度も繰り返し、柊の唇の隙間へ舌を入れた。
拙くも懸命な小さな舌は
巧みな舌に誘(いざな)われ
だんだんと激しいキスへと変わっていった。
初めて俺から柊にしたキスは
甘くてほろ苦い、
煙草とアルコールの……
大人の味がした。
今日がその開催日だ。
俺は青葉市の花火大会は毎年見に行ってたけど、白金市の花火大会は初めてだった。
住んでいるマンションから丁度花火が見えるみたいで、今日の夕食は花火を見ながらバルコニーで食べる事になっていた。
「樋浦さん、これ頼まれていた物です。他に欲しいのがあったら言って下さい」
「悪かったな。ご苦労様」
玄関で男が柊にビニール袋を渡している。
花火大会で出ている屋台の食べ物を、柊が手下に頼んで何種類か買ってきてもらっていた。
会場は毎年混雑していて、屋台もすごく混んでるみたいだ。そんな状況なのに、柊に頼まれた物を買いに行かされる手下は、ブラック企業の社員みたいで大変だと思った。
テーブルの上には、たこ焼き、焼きそば、イカ焼き、焼き鳥、唐揚げ、フライドポテト、フランクフルトと、ベビーカステラと何故かロケモンのわたあめまであった。
「こんなに、食えるのかよ……」
「俺は余裕で食えるけど。柚希は食べたいの、適当につまんで」
「……なんで、ロケモンのわたあめがあるの?」
「ロケモンが、好きなんだよ」
「ふふっ……似合わねぇ……」
「まあな。ロケモンのゲーム、マジで面白いから、今度やろうぜ」
少年みたいな無邪気な顔で、柊が笑った。
また新たに見る事が出来た、大人の柊の笑顔。
見慣れないその笑顔に、思わず釘付けになった。
ーーそういえば、ゲームで一緒に遊ぶのって、初めてかも……
「うん、やる」
柊は煙草に火をつけて、深々とうまそうに吸いながら、「楽しみだな」ってポツリと呟いた。
俺はペットの炭酸飲料を、柊は缶チューハイを、コツンとぶつけてから飲み始めた。
二人でガーデンソファーに並んで座りながら、花火が打ち上がるのを待った。
ヒュルヒュルと音が聞こえ、大空に大輪の花が開いた。
大きな花火大会だけあって、花火の種類も多く、間延びせずに次々打ち上がる。
屋台の食べ物を口にしながら、二人とも無言で花火を眺めていた。
ふと柊の顔を見ると、いつもと違って穏やかな顔をしている。
そんな柊を見ているうちに、自分の心臓が波打ってくるのがわかった。
「白金市の花火大会は、ガキの頃、叔父さん一家に連れられて、毎年のように見ていたんだ……」
煙草を吸いながら、まるで独り言のようにポツリポツリと語り出した。
柊から子供の頃の話を聞くのは、初めてかもしれない。
「いつか……家族と見たいって、思ってたから…………柚希と一緒に見る事が出来て、すげぇ嬉しい……」
ソファーへ無防備に投げ出した俺の手に、指を絡めて強く繋いできた。
柊の手は指がすらりと長くて、それでいて大きくて男らしい手をしていた。
俺は花火大会は当たり前のように、家族と過ごしていた。
美空と俺と。ひいばあちゃんが生きていた頃は、ひいばあちゃんと三人で。
毎年、俺にとっては恒例行事で、当たり前の事で。だから今年も、美空と見に行く予定だ。
その当たり前は、柊にとっては特別な事で……
紫煙を吐き出しながら、遠い目で切なそうに花火を見ている柊。
ーー本当は、一度も振り向いてくれない父親と、見てみたいのかもしれない……
その美しくも儚げな横顔を見てると、堪らなくなって……
柊に顔を近付け、唇を重ねた。
柊はすごく驚いた顔で、俺を見てたけど、そのまま受け入れて、俺に主導権を委ねた。
啄みながら、重ねたり離したりを何度も繰り返し、柊の唇の隙間へ舌を入れた。
拙くも懸命な小さな舌は
巧みな舌に誘(いざな)われ
だんだんと激しいキスへと変わっていった。
初めて俺から柊にしたキスは
甘くてほろ苦い、
煙草とアルコールの……
大人の味がした。
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