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帰れない
見えない力に
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「見えない力ってなんなんだよ」
「うん、わたしも分からないよ。でも、わたしはこの同窓会に呼ばれたのかなってそんな気がしてきたよ」
「呼ばれた? それは、美奈が企画した同窓会だから呼ばれてきたと言えばそうなるけどな」
松木がわたしの顔を見て言った。
「そうなんだけどそれとまた違った何かに導かれたと言えばいいのかな? なんてね、わたし考えすぎだよね」
わたしは、パタパタと手を振り笑った。
「う~ん、考えすぎだとは思うけどな。ただ、よく考えてみるとあの夏祭りに俺達と一緒に行った仲間と偶然会った多香子と佐和がこの同窓会に集まっているんだよな」
松木はうーんと唸り首を横に傾げた。
「そうだよね……」とわたしは答え、あの夏祭りの光景がこの同窓会に参加してから色鮮やかに甦るなと思った。
そのことに果たして意味はあるのだろうか。
「まあ、明日は帰るんだしさ。夏祭りの件は帰りまでに美奈か多香子に聞くといいよ」
松木はぐーんと伸びをした。
「うん、そうするね」
「雨が降っているけどさ楽しもうぜ! クヨクヨ考えても仕方ないじゃん。な、亜沙美」
松木は、わたしの肩をぽんぽんと叩いた。その手から優しい温もりを感じた。
「うん、松木ありがとう」
松木は憎たらしい奴だけど高校時代からいつも頼りになる男友達だった。
「ぽんこつから亜沙美先生になるんだぞ!」
「あ~また、ぽんこつって言った~」
「ぽんこつにぽんこつと言って何が悪いんだよ。悔しかったら俺を唸らせる小説でも書くんだね」
松木は口の端を歪めて笑った。
「ふん! いつかはその憎たらしい口を黙らせる素晴らしい小説を書いてあげるわよ!」
わたしはふんと鼻息を荒くして叫んだ。
松木は「じゃあな」と手を振り部屋に戻った。一人になったテラスはシーン静まり返り雨の音だけが聞こえる。
この雨のせいで電車が止まり帰れなくなったけれど、雨に濡れた緑や花は色が濃く鮮やかで綺麗だ。葉っぱや花から雨の雫が滴り落ちる光景はなんともいえないほど美しかった。
わたしは、しばらくの間ぼんやりと外の景色を眺めていた。
この何もない自然だけが溢れている町でわたしは中学、高校時代を過ごしたんだなとふと思った。
あの頃は都会にも憧れたけれどみんながいたから幸せだった。そう、みんながいるから……。
真由香に美奈それからに真夜に松木や久野君の笑顔が思い浮かぶ。笑い合ったりふざけ合ったりして楽しい日々だった。
わたしは、その楽しい思い出を壊したくなくてあの小説に書いたのかもしれない。
今は人がたくさん住む街に住み人混み紛れる。そんなことを考えながらわたしは雨を眺めていた。
この雨は綺麗でそしてちょっと怖い。美しくて綺麗なこの世界にわたしは閉じ込められているような不思議な感覚になった。
「うん、わたしも分からないよ。でも、わたしはこの同窓会に呼ばれたのかなってそんな気がしてきたよ」
「呼ばれた? それは、美奈が企画した同窓会だから呼ばれてきたと言えばそうなるけどな」
松木がわたしの顔を見て言った。
「そうなんだけどそれとまた違った何かに導かれたと言えばいいのかな? なんてね、わたし考えすぎだよね」
わたしは、パタパタと手を振り笑った。
「う~ん、考えすぎだとは思うけどな。ただ、よく考えてみるとあの夏祭りに俺達と一緒に行った仲間と偶然会った多香子と佐和がこの同窓会に集まっているんだよな」
松木はうーんと唸り首を横に傾げた。
「そうだよね……」とわたしは答え、あの夏祭りの光景がこの同窓会に参加してから色鮮やかに甦るなと思った。
そのことに果たして意味はあるのだろうか。
「まあ、明日は帰るんだしさ。夏祭りの件は帰りまでに美奈か多香子に聞くといいよ」
松木はぐーんと伸びをした。
「うん、そうするね」
「雨が降っているけどさ楽しもうぜ! クヨクヨ考えても仕方ないじゃん。な、亜沙美」
松木は、わたしの肩をぽんぽんと叩いた。その手から優しい温もりを感じた。
「うん、松木ありがとう」
松木は憎たらしい奴だけど高校時代からいつも頼りになる男友達だった。
「ぽんこつから亜沙美先生になるんだぞ!」
「あ~また、ぽんこつって言った~」
「ぽんこつにぽんこつと言って何が悪いんだよ。悔しかったら俺を唸らせる小説でも書くんだね」
松木は口の端を歪めて笑った。
「ふん! いつかはその憎たらしい口を黙らせる素晴らしい小説を書いてあげるわよ!」
わたしはふんと鼻息を荒くして叫んだ。
松木は「じゃあな」と手を振り部屋に戻った。一人になったテラスはシーン静まり返り雨の音だけが聞こえる。
この雨のせいで電車が止まり帰れなくなったけれど、雨に濡れた緑や花は色が濃く鮮やかで綺麗だ。葉っぱや花から雨の雫が滴り落ちる光景はなんともいえないほど美しかった。
わたしは、しばらくの間ぼんやりと外の景色を眺めていた。
この何もない自然だけが溢れている町でわたしは中学、高校時代を過ごしたんだなとふと思った。
あの頃は都会にも憧れたけれどみんながいたから幸せだった。そう、みんながいるから……。
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わたしは、その楽しい思い出を壊したくなくてあの小説に書いたのかもしれない。
今は人がたくさん住む街に住み人混み紛れる。そんなことを考えながらわたしは雨を眺めていた。
この雨は綺麗でそしてちょっと怖い。美しくて綺麗なこの世界にわたしは閉じ込められているような不思議な感覚になった。
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