オレンジ色の世界に閉じ込められたわたしの笑顔と恐怖

なかじまあゆこ

文字の大きさ
57 / 87
帰れない

見えない力に

しおりを挟む
「見えない力ってなんなんだよ」

「うん、わたしも分からないよ。でも、わたしはこの同窓会に呼ばれたのかなってそんな気がしてきたよ」

「呼ばれた?  それは、美奈が企画した同窓会だから呼ばれてきたと言えばそうなるけどな」

  松木がわたしの顔を見て言った。

「そうなんだけどそれとまた違った何かに導かれたと言えばいいのかな?  なんてね、わたし考えすぎだよね」

  わたしは、パタパタと手を振り笑った。

「う~ん、考えすぎだとは思うけどな。ただ、よく考えてみるとあの夏祭りに俺達と一緒に行った仲間と偶然会った多香子と佐和がこの同窓会に集まっているんだよな」

  松木はうーんと唸り首を横に傾げた。

「そうだよね……」とわたしは答え、あの夏祭りの光景がこの同窓会に参加してから色鮮やかに甦るなと思った。

  そのことに果たして意味はあるのだろうか。

「まあ、明日は帰るんだしさ。夏祭りの件は帰りまでに美奈か多香子に聞くといいよ」

  松木はぐーんと伸びをした。

「うん、そうするね」

「雨が降っているけどさ楽しもうぜ!  クヨクヨ考えても仕方ないじゃん。な、亜沙美」

  松木は、わたしの肩をぽんぽんと叩いた。その手から優しい温もりを感じた。

「うん、松木ありがとう」

  松木は憎たらしい奴だけど高校時代からいつも頼りになる男友達だった。

「ぽんこつから亜沙美先生になるんだぞ!」

「あ~また、ぽんこつって言った~」

「ぽんこつにぽんこつと言って何が悪いんだよ。悔しかったら俺を唸らせる小説でも書くんだね」

  松木は口の端を歪めて笑った。

「ふん!  いつかはその憎たらしい口を黙らせる素晴らしい小説を書いてあげるわよ!」

  わたしはふんと鼻息を荒くして叫んだ。



  松木は「じゃあな」と手を振り部屋に戻った。一人になったテラスはシーン静まり返り雨の音だけが聞こえる。

  この雨のせいで電車が止まり帰れなくなったけれど、雨に濡れた緑や花は色が濃く鮮やかで綺麗だ。葉っぱや花から雨の雫が滴り落ちる光景はなんともいえないほど美しかった。

  わたしは、しばらくの間ぼんやりと外の景色を眺めていた。

  この何もない自然だけが溢れている町でわたしは中学、高校時代を過ごしたんだなとふと思った。

  あの頃は都会にも憧れたけれどみんながいたから幸せだった。そう、みんながいるから……。

  真由香に美奈それからに真夜に松木や久野君の笑顔が思い浮かぶ。笑い合ったりふざけ合ったりして楽しい日々だった。

  わたしは、その楽しい思い出を壊したくなくてあの小説に書いたのかもしれない。

  今は人がたくさん住む街に住み人混み紛れる。そんなことを考えながらわたしは雨を眺めていた。

  この雨は綺麗でそしてちょっと怖い。美しくて綺麗なこの世界にわたしは閉じ込められているような不思議な感覚になった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

本能寺からの決死の脱出 ~尾張の大うつけ 織田信長 天下を統一す~

bekichi
歴史・時代
戦国時代の日本を背景に、織田信長の若き日の物語を語る。荒れ狂う風が尾張の大地を駆け巡る中、夜空の星々はこれから繰り広げられる壮絶な戦いの予兆のように輝いている。この混沌とした時代において、信長はまだ無名であったが、彼の野望はやがて天下を揺るがすことになる。信長は、父・信秀の治世に疑問を持ちながらも、独自の力を蓄え、異なる理想を追求し、反逆者とみなされることもあれば期待の星と讃えられることもあった。彼の目標は、乱世を統一し平和な時代を創ることにあった。物語は信長の足跡を追い、若き日の友情、父との確執、大名との駆け引きを描く。信長の人生は、斎藤道三、明智光秀、羽柴秀吉、徳川家康、伊達政宗といった時代の英傑たちとの交流とともに、一つの大きな物語を形成する。この物語は、信長の未知なる野望の軌跡を描くものである。

洒落にならない怖い話【短編集】

鍵谷端哉
ホラー
その「ゾワッ」は、あなたのすぐ隣にある。 意味が分かると凍りつく話から、理不尽に追い詰められる怪異まで。 隙間時間に読める短編ながら、読後の静寂が怖くなる。 洒落にならない実話風・創作ホラー短編集。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

きさらぎ駅

水野華奈
ホラー
親友から電話があった。 きさらぎ駅という場所にいるらしい… 日常の中の小さな恐怖が今始まる。 触れてしまったが最後。 二度と戻れない。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...