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帰れない
『オレンジ色の夕日とわたしの青春』
しおりを挟むわたしは、薄暗い廊下を歩き部屋に戻る。ギシギシミシミシと床が鳴る。雨がシトシト降る音と混ざり合い綺麗で恐ろしくて不思議で神秘的な音に聴こえてくる。
部屋の明かりを点け、わたしはふうーと深呼吸をした。
わたしの書いた『オレンジ色の夕日とわたしの青春』が気になった。あの小説の中にわたしの青春が閉じ込められているような気がする。
あれは実話ではなく小説なんだけれど、あの小説の中にもしかすると何かが隠されているのかもしれないと思った。
何も隠されていないかもしれないし、はたまた何かが隠されているのかもしれない。
見たくない何かを閉じ込め綺麗に書き直した。そんなつもりはないけれどなんだかそんな気がしてきた。
わたしは、『オレンジ色の夕日とわたしの青春』を手に取る。
オレンジ色の夕日とツインテールの女の子の後ろ姿が表紙になっている。美しい夕日と風になびくツインテールの女の子の後ろ姿が切なげで可愛らしくてお気に入りの表紙だ。
わたしは、この美しくて切なげな表紙をじっと眺めた。
そして、ふと思った。この女の子はどんな顔をしているのだろうかと……。
わたしは、本の表紙を食い入るように眺めた。このツインテールの女の子の表情が気になる。
ツインテールの女の子は何を思っているのだろうか。この切なげでキラキラと輝き可愛らしいツインテールの女の子後ろ姿は誰なのかな。なんてわたしは考えてしまった。
「わたしってば何を言っているんだろう『オレンジ色の夕日とわたしの青春』の主人公に決まってるじゃない」
わたしは自分の考えに笑う。 笑いながら表紙を見つめる。
大人になっても青春時代を忘れたくない。夢も諦めたくない。そんな思いを込めて書いた。はずなんだけれど……。
表紙を食い入るように眺めつづけていると遠くに見える家が気になった。この家には誰が住んでいるかななんて。
わたしは、しばらくの間この表紙を眺め続けた。すると見えなかったものが見えてきたように思えた。
だが、それが何なのかはまだ分からない。そう、分からないけれど、あの夏祭りの日と繋がっているそんな気がしてならなかった。
わたしの思い違いであってほしいのだけど。
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