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帰れない
やぐらとオレンジ色の提灯
しおりを挟む今は大切にしていたこの小説を読みたくない。だけど、わたしの手は本のページをめくっていた。
『やぐらの周りを人々が浴衣を着て踊っている懐かしい光景が浮かんできた。そのやぐらに沢山の提灯が吊るされている』
『わたしは沢山吊るされている提灯を見て綺麗だなと思った。わたしはその中でもオレンジ色の提灯が綺麗だなと思い見上げていた』
『ずっと、ずっと、この綺麗な世界の中にいたいな』
わたしは、自分の書いた文章を読んだ。
確か松木達と行ったあの夏祭りもやぐらに吊るされていたオレンジ色の提灯を綺麗だなと思い見上げていたような気がする。
そして、その後……。思い出せない。
わたしは、思い出せないないけれど、朝食の後テラスで真由香が言った言葉を思い出した。
真由香は雨を見上げながら『うん、そうだよ。みんなと会ったらあの頃に戻ってやり直したいなと思った』と言った。
その言葉を思い出すとなんとも言えない気持ちになった。この気持ちは一体なんだろうか。
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