オレンジ色の世界に閉じ込められたわたしの笑顔と恐怖

なかじまあゆこ

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オレンジ色の世界に閉じ込められたわたしは

定食屋

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「着いたよ。この定食屋さん美味しいって有名らしいよ」

  美奈がぴたりと立ち止まりこちらに振り向き微笑みを浮かべた。

  その定食屋は緑の中に佇む古民家風の食堂だった。

  わたしは、この食堂を知っているかもと思った。この町に住んでいたことがあるのだから知っていても不思議ではないけれど。

  小ぢんまりしていてちょっとレトロで雰囲気がとてもいい定食屋なのになぜだか嫌な感じがする。

「さあ、夕食だよ~」

  美奈がガラガラと引き戸を開けた。わたしは店内に入りたくないなと思った。だけど、そんなわけにもいかなくてわたしは店内に足を踏み入れた。

  すると、夏休みや冬休みにおばあちゃんの家に遊びに行った時に嗅いだ懐かしい匂いと似た香りがしてほっとしたのだけど……。

  信じられない光景が目の前に広がり息が止まりそうになった。

  だって、天井いっぱいに色鮮やかな長型の提灯や丸型の提灯が吊るされているのだから。それに、あのオレンジ色の提灯キーホルダーによく似たころんと丸いオレンジ色の提灯も吊るされていてゾクッとする。

「亜沙美、大丈夫か?」

  振り返ると松木が心配そうにわたしの顔を見ていた。

「う、うん。この定食屋たくさん提灯が吊るされているね」

  松木は「うん、そうだね……たくさんの提灯が吊るされているね」と言って天井を見上げた。

 あの恐ろしい夢を見たり動くオレンジ色の提灯キーホルダーに遭遇したりしなければきっと、天井に吊るされている提灯を見て綺麗だなと思ったはずだ。


「みんな~こっちだよ。八人掛けのテーブル席があったよ~」

  美奈が一番奥のテーブル席の前で手招きをする。そんな美奈を見ると人の気も知らないでと言いたくなる。

「一番奥の席だからゆっくり寛げそうだね~」と真由香が明るい声で答え席に向かい腰を下ろす。

  わたし達も真由香に続き八人掛けのテーブル席に腰を下ろした。

「とても雰囲気の良い定食屋でしょう?  天井に吊るされている提灯なんてレトロ感があるもんね~」

  美奈は天井を見上げ笑顔を浮かべる。

「そうだね。俺もこの雰囲気好きだぜ」

  久野君も天井を見上げ笑顔だ。

  わたしは、天井に吊るされている提灯なんて見たくもないのでメニュー表を手に取り真剣に選んでいるふりをした。けれど、メニュー表にも提灯のイラストが描かれているのだから嫌になる。

「何を食べようかな~豚の生姜焼き定食も美味しそうだしチキン南蛮定食やエビフライ定食も食べたくなるな~」

  美奈はご機嫌な様子でメニュー表を眺めている。ねえ、どうして美奈はこの定食屋を選んだの?  笑顔でメニューを眺めている美奈に聞きたくなる。

  美奈はあのひとりでに動くオレンジ色の提灯キーホルダーが怖くないの?  ねえ、美奈……。どうして楽しそうに笑えるのかな。教えてよ。
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