オレンジ色の世界に閉じ込められたわたしの笑顔と恐怖

なかじまあゆこ

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オレンジ色の世界に閉じ込められたわたしは

美奈

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わたしは美奈に聞きたくてじっと眺めてしまった。そんなわたしの視線に気がついたみたいだ。美奈は顔を上げ、「ん?  亜沙美ちゃんどうしたの?」と言った。

「あ、ううん、なんでもないよ。豚の生姜焼き定食にするかチキン南蛮定食にするか悩んでいたのよ」

  わたしは笑って誤魔化したけれど、本当は無邪気に笑う美奈の気持ちを聞きたかった。美奈は無邪気なのかはたまた……どちらなのか分からない。その心の中を覗いてみたい。

美奈はわたしの顔を見て「迷うよね~」と笑い、視線をメニュー表に戻し「ハンバーグ定食もいいかな~」と可愛らしい笑みを浮かべた。

「お、そのハンバーグ定食美味しそうだな。俺、ハンバーグ定食にするぞ」

  久野君が美奈の見ているメニュー表を指差して言った。

「う~ん、ハンバーグ定食もいいけど、わたしはたこ焼き定食にするよ」

「はぁ?  おい、美奈さっきから言ってるメニューと全然違うじゃないか」

「うふふ、だって、たこ焼き定食ってちょっと珍しいでしょ?」

「まあね、じゃあ、俺もたこ焼き定食にしようかな」

「わたしの真似をしないでよ。あ、そうだ、みんなでたこ焼き定食にしない?」

  美奈がわたし達の顔を見回した。

  わたしは、たこ焼きと聞きあの夏祭りを思い出しドキッとした。

「賛成~わたしもたこ焼き定食にするよ~」

  真由香が嬉しそうな声で言った。それに続き、松木も多香子もそれから真夜もたこ焼き定食にすると言った。

「ねえ、亜沙美ちゃんと佐和ちゃんもたこ焼き定食にしようよ」

  美奈がわたしと佐和の顔を交互に見てにっこりと笑った。

「……あ、たこ焼き定食……」

「亜沙美ちゃんもたこ焼き好きでしょ?  あ、もちろん他の定食にしてもいいよ」

「そ、そうだね。わたしもたこ焼き定食にするよ」

  わたしは、たこ焼きは好きではあるけれど、このメンバーで食べることを考えると胸がざわつくのだ。だけど、それは気のせいだと自分を納得させた。

「わ~い、亜沙美ちゃんもたこ焼き定食ね。ねえ、佐和ちゃんもたこ焼き定食にしない?」

「……あ、うん、じゃあ、わたしもたこ焼き定食にするよ」

  佐和はなぜだか浮かない表情だ。

「は~い、では決まりだね。店員さ~ん! 
たこ焼き定食を八人分お願いしま~す」と美奈は元気よく手を挙げた。

  その美奈の姿がなぜだか紫陽花柄の浴衣姿に見えどきっとした。

  わたしは、目を擦りもう一度美奈を見た。すると、美奈と目が合った。ツインテールの可愛らしい美奈は浴衣姿ではなかった。

  それからしばらくすると、店員さんが、「たこ焼き定食お待たせしました~」と言って運んできたたこ焼き定食をわたし達のテーブルに並べた。


  目の前に置かれたたこ焼き定食はとても美味しそうだった。

  大皿に盛られた青のりとソースにマヨネーズがたっぷりかけられた大きめサイズのたこ焼き八個に大盛りご飯、漬物、味噌汁が置かれた。

「わ~い、ボリューム満点だね」

「でもさ、美奈ちゃんたこ焼きにご飯って合うのかな?」

「真夜ちゃん、関西人はたこ焼きやお好み焼きと一緒にご飯も食べるんだよ」

「そっか、って、わたし達関西人じゃないよね」

「あはは、そうだね。でも、美味しいと思うよ~」

「美奈の言う通りだぜ。ボリューム満点で美味しそうだぜ。さあ、食べるぞ。いただきます」

  久野君が口を大きく開けたこ焼きを食べた。それを見た他のみんなも「いただきます」と言ってたこ焼きを食べた。

  わたしも目の前のたこ焼きがとても美味しそうだったので口に放り込み食べた。

  たこ焼きは熱々でとろりと柔らかくて美味しい。続いてご飯に箸を伸ばし口に運んだ。うん、これが中々合うではないか。

「亜沙美、口の周りにソースがべったりくっついているぞ」

  松木がわたしの顔を見てクスクス笑っている。

「えっ!」

  わたしは、慌ててウェットティッシュで口の周りを拭いた。

「あはは、亜沙美ちゃんってば意外とドジだよね」

  笑う美奈の口元に青のりがべったりくっついていた。

「……美奈ちゃんも、口の周りに青のりがくっついているよ」

  わたしは言いながらあの日の夏祭りを思い出してしまった。





   
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