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オレンジ色の世界に閉じ込められたわたしは
カランコロン
しおりを挟むカランコロン、カランコロンと下駄の音が鳴る。そう、わたし達八人の下駄の音がカランコロンと鳴る。
現在は秋だというのに季節外れの浴衣を着込み下駄の音を鳴らして歩いているなんて異様な光景だ。
それなのにみんなは当たり前のようにカランコロン、カランコロンと下駄の音を鳴らして歩いているのだ。
カランコロン、カランコロン……。やっぱり何かがおかしい。カランコロン……。
不気味にカランコロン、カランコロンと下駄の音が鳴る。背筋が寒くなってくる。
「ねえ、松木……」
紫色の浴衣に身を包みわたしの隣を歩く松木に声をかけた。
「うん、なんだ? たこ焼き定食美味しかったな」
松木はこの異様な状況を変だと感じていないようだ。呑気にたこ焼きの感想なんて言っているのだから。
「た、たこ焼き定食じゃなくて今のこの状況を松木は変だと思わないの?」
「この状況? 何のことだ?」
松木は怪訝そうな顔でわたしを見た。
「わたし達夏祭りでもないのに浴衣を着てるなんておかしくない?」
「はぁ? 夏祭り? 浴衣を着てるってなんだよ。意味不明だぞ」
松木は本当に不思議そうに首を傾げた。
これはまさか……。
「わたし達、浴衣を着ているよね?」
すると、松木は目見開き「浴衣?」と言った。今もカランコロン、カランコロンとみんなの下駄で歩く音が鳴っている。
「ま、松木! わたし達浴衣を着ているよね? ねえ、松木」
お願いだから浴衣姿だよと答えてよ。しかし浴衣姿だよと答えてもらってもそれもまた恐ろしい。だって、わたしは浴衣なんて着た覚えなんてないのだから。
今、何が起こっているのだろうか?
これは一体……。
カランコロン、カランコロンと下駄の音が聞こえる。
「……亜沙美」と言って松木はわたしの顔をじっと見た。暗闇の中松木の怪訝そうな顔が浮かぶ。
「この同窓会に参加してから変だよ。浴衣なんて着ていないよ」
「そ、そんな…じゃあ、わたしだけが見えているの? わたしだけが……わたしだけが浴衣姿に見えているの!!」
わたしは興奮して大きな声を出してしまった。
「亜沙美、落ち着けよ。どうしたんだよ?」
紫色の浴衣姿の松木が両手でわたしの肩をつかみ体を揺らす。
「お、落ち着いてなんかいられないよ! だって、みんな浴衣姿なんだよ!!」
わたしが大声を上げるとみんなが一斉に振り返りわたしの顔を見た。
「亜沙美ちゃんどうしたの?」
みんなの声は心配そうだけど、浴衣姿のみんなが異様に見えた。
「亜沙美ちゃん、大丈夫?」
美奈がツインテールを揺らしこちらに向かって歩いてきた。
美奈、紫陽花柄の浴衣姿でこっちに来ないでよ。
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