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俺は猫人間になりました

この世界で楽しもう

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「ようこそにゃんと言われたぜ」

「言われたな……」

  俺と貧神は顔を見合わせ眉間に皺を寄せた。

「にゃはは、ではどうぞですにゃん」

  チャーミにゃんは俺達が眉間に皺を寄せていることなど気にする素振りも見せずマイペースににゃんにゃんと歩き出した。

  まあいっかどうせ地球に帰っても嫌な仕事をするだけなんだからなと思いながら俺はチャーミにゃんの後を追いかけた。

 ふと貧神はどうしたかなと視線を向けると、ふぁふぁとあくびをしているではないか。呑気な奴だな。流石パジャマを着込んでいるだけあるなと思い俺はクスッと笑った。

  もうこの世界を満喫してやろうじゃないか。俺は花と緑が溢れる赤瓦屋根の風景が続く道を元気よく歩いた。

  地球で俺を馬鹿にした奴らを見返してやるほど楽しんでやるぜ。ふふんと俺は笑う。なんだか楽しくなってきたぞ。

「おい、成行!  俺の顔を見て笑っているよな?」

「いや、笑っていないぜ」と俺は答えながらククッと笑いをこらえる。

「やっぱり笑っているじゃないか」

「そうかな~俺ってば笑っているかな?」

  なんて惚けてみせるがやっぱりダメだ。あははと笑ってしまう。

「俺の顔に何かついているのかよ」

  貧神は首を横に傾げきょとん顔だ。

「だってさ、赤瓦屋根の木造住宅が立ち並び綺麗な花が咲き乱れる景色の中を貧神はあくびをしながら歩いているんだぜ。なんか笑えるよな」

  俺はそう答え今度は盛大にアッハハと笑った。

「おい!  成行ふざけるなよ」

  貧神は顔を真っ赤に上気させお怒りのようだ。

「あ、それだけじゃないぜ。俺を馬鹿にした奴らを見返してやるくらいこの世界で思う存分楽しんでやろうと思って笑ったんだよ」

  俺はそう言ってニカッと笑ってみせた。

  すると、貧神が「そっかそれだよな。神社にドカドカやって来て自分勝手なお祈りだけして帰る奴らを見返してやるくらいこの世界で楽しめば良いのか」と言ってニヤリと笑った。

  ちょっと貧神の自分勝手なお祈りだけしてと言う言葉が耳に痛いけれど何となく貧神と波長が合うような気がしてきた。

「さあ、中にどうぞですにゃん」

  チャーミにゃんが玄関を開きこちらに振り向き言った。

「お邪魔します」
「お邪魔するぞ」

   俺と貧神は挨拶をして玄関を入った。
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