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俺は猫人間になりました

お部屋の前に

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「さてとにゃん。チャーミにゃん涙を拭いて成行君と貧神さんをお部屋に案内するのよにゃん。この人達ここに住むのよね?」

  ミキニルにゃんは言いながらチャーミにゃんの頭をポンポンと優しく叩いた。

「うん、チャーミにゃんは涙を拭き拭きしてお二人をお部屋に案内するにゃん」

  チャーミにゃんは肉球のある可愛らしい手で涙を拭う。

「俺は特別室な」

  貧神がニヤリと笑いながら言った。

「特別室なんてないですにゃん。みんな平等ですにゃん」

  すっかり涙の乾いたチャーミにゃんはにゃぱーと笑った。

「そうだわ。お部屋の案内の前にお茶でもどうぞにゃん。ちょっと待っていてね」

  ミキニルにゃんはそう言ったかと思うと部屋の奥に引っ込んだ。台所でもあるのだろうか。

「じゃあ、行きましょうにゃん。お茶の時間だにゃん」

  チャーミにゃんは元気よくにゃんにゃんと歩き出した。俺と貧神もその後を追いかける。


  案内されたリビングは木の温もりを感じる広々とした空間だった。俺と貧神は椅子に腰を下ろし部屋の中をキョロキョロと見渡した。

  花や観葉植物などが飾られていて癒されるなと思いながら俺は眺めた。やはり俺は癒されたいからこのもふもふ楽園とやらに導かれたのだろうかとふと思った。

  この世界は俺が行きたかった沖縄に少し似ているのだから。

「俺は神様のままかもしれないがここに居ると神様の仕事をしなくても構わないから楽だぞ」

  貧神がそう言ってクフフと笑った。

「貧神は神社に居ても寝ているだけなんじゃねえの?」

「あのな神社に居ると聞きたくもない願い事が耳に入ってくるんだよ」

  貧神はふぅーと溜め息をついた。

「呆れた神様だよな。参拝者の願い事を聞きたくないなんてね」

「だって、あれをお願いしますやこうなりたいですってばかりで俺は全然感謝もされてないんだからな」

「それはそうかもしれないけどさ」

「にゃはは、わたしの魔法は失敗作だったけど結果的に二人ともこの世界に来て幸せそうだから良かったにゃん」

  今泣いていた烏がもう笑っている。

「お待たせにゃんです」

   お盆に湯気の立ったティーカップを載せてミキニルにゃんがリビングに入って来た。
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