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俺達がこの世界にやって来たのは意味があるのかもしれない

癒しとタヌキのおばさん

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  俺とチャーミにゃんはしばらくの間無言で歩いた。耳をすませば左端を流れる川のサラサラと流れる心地よいせせらぎや鳥の鳴き声が聞こえてくる。

  上空には俺を案内してくれているかのようにミドリン鳥が気持ちよさそうに飛んでいる。

  今までの俺だったら川のせせらぎも鳥の鳴き声にも気がついていなかったかもしれない。いつも殺伐とした雰囲気の中で生きていて周りに咲いている花や緑や動物達にも目を向けずに生活してきた。

「タヌキのおばさんこんにちはにゃん」

  見るとチャーミにゃんが川の横にある小さな畑で玉ねぎを収穫しているタヌキに声をかけていた。

「チャーミにゃんちゃん、こんにちは」

   タヌキのおばさんもチャーミにゃんに挨拶を返した。俺から見るとこのタヌキのおばさんももふもふでめちゃくちゃ可愛らしいのだけど。

  そんなことを考えながらタヌキのおばさんをじっと見た。するとタヌキのおばさんは俺に気づき目を大きく見開いた。

「おや!?  人間のお客さんじゃないか」

   俺とチャーミにゃんを交互に見て言った。

「わたしが連れてきたんだにゃん。成行だよにゃん」

  チャーミにゃんが俺のことをタヌキのおばさんに紹介した。

「神本成行です。地球からこのもふもふ楽園にやって来ました。どうぞよろしくお願いします」

   俺は挨拶をしてぺこりと頭を下げた。今度はタヌキに挨拶をしてしまった。

「成行君ね。こんにちは。わたしはタヌキです」

   タヌキはにっこりと微笑みを浮かべ俺の顔を見た。タヌキってそのまんまの名前なのかいと思わず言いそうになる。

「にゃはは、これでタヌキのおばさんと成行は友達にゃんね」

  チャーミにゃんはにゃぱにゃぱと笑みを浮かべた。

「そうだね。では、友達になった記念に玉ねぎをどうぞ」

  タヌキのおばさんは俺に玉ねぎを差し出した。

「あ、ありがとうございます」

   俺は玉ねぎを受け取りながらこの玉ねぎどうするんだよと思った。

「じゃあ、タヌキのおばさんまた今度にゃんね。成行行くにゃんよ」

  チャーミにゃんはタヌキのおばさんに手を振り歩き出した。

「では、失礼します」と俺は言ってチャーミにゃんの後を追いかけた。

   タヌキのおばさんはニコッと笑い手を振った。

  

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