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ねえ当近さんわたしと交換日記をしない?
ねえ、当近さんわたしと交換日をしない?
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「ねえ、当近さんちょっとレトロだけどわたしと交換日記をしない?」
わたしの右隣の席に座る美衣佐がこちらに視線を向け言ってきた。
「えっ! 交換日記」
誘われたわたしは本当は飛び上がるほど嬉しかった。嬉しくてそれはもう嬉しくてたまらなかった。
にまにまと笑ってしまうほど嬉しかった。心の中ではとびっきりの笑顔を浮かべているけれど、きっとわたしの表情は変わっていなかったはずだ。
小学生の頃のわたしは勉強もスポーツもできた。周りの友達も優等生ばかりだった。両親からも将来が楽しみだよと期待された。
わたしは、親からの期待に応えたくて一生懸命努力をして自分の実力以上の結果を出そうとしていた。けれど、勉強もスポーツも好きではなかった。
好きでもないことを頑張り続けることは辛すぎて身も心も壊れそうになった。だから中学一年生の二学期くらいから無理して頑張ることをやめた。
全部やーめたと放り投げると肩の力がすーっと抜け楽になり心が軽くなる。そう楽にはなったのだけど、気がつくとわたしは落ちこぼれの部類に入っていた。
そんなわたしの前から優等生だった友達は去って行った。
落ちこぼれのわたしは友達じゃないんだと思うと悲しくなった。
でもいいや。優等生だからわたしと友達でいただけだったんだ。それがわかって良かったと思うことにした。
本当は悲しいけれど。
優等生を演じていた頃のわたしは黄色くてキラキラ輝く花を咲かせるひまわりのような笑顔を浮かべる明るい女の子だった。
『海代ちゃんの笑顔はひまわりや太陽みたいにキラキラ輝いているね』と言われたこともある。けれど、それは偽物の笑顔と輝きだった。
優秀な元友達はケンカをしたわけでもないのに気がつくとわたしの周りに寄りつかなくなった。
やっぱり同じような成績の子同士が仲良くなるのだろうか。ショックだった。成績なんて関係なく友達だと思っていたのに……。
ショックなんて受けていないもんと自分に言い聞かせてみせたけれど、わたしの心はズタズタに切り裂かれていた。
そして、わたしは笑うことをやめてしまった。ううん、やめたというのか笑えなくなっていた。中学時代は暗闇の中にいるようだった。
「ねえ、当近さん交換日記するの? しないの?」
辛い過去の記憶がよみがえり美衣佐の存在を忘れていた。
「あ、えっと、する! 交換日記するよ」
わたしは素直に返事をする。
「やった~じゃあ、今日から交換日記をしようね。隣の席になった記念だよ」
無邪気な微笑みを浮かべた美衣佐は机の引き出しからノートをサッと取り出し差し出す。わたしは、手を伸ばしそのノートを受け取った。
このノートを受け取ったことが全ての始まりだったのかもしれない。そう、知りたくもない現実がわたしを脅かす。
この時のわたしはこれから起こる出来事に気づかず高校時代は楽しくなるだろうとノートで顔を隠し頬を緩めた。
この日の秋空はとても綺麗に見えた。
水色の海の中にもこもこの綿菓子がぷかぷか浮かんでいるみたいでこの中で泳いだら気持ちいいだろうなと思いながらわたしは、空を見上げた。
通学カバンの中には美衣佐との交換日記のノートが入っている。それだけで嬉しくてこの場で小躍りしたくなる。
授業中も机の引き出しに手を突っ込んでは交換日記があることを確認してしまった。
「当近さん帰ったら読んでね」と美衣佐は言った。
「うん、わかった」とわたしは答えたけれど、その場で読みたくてうずうずした。
ノートにはどんなことが書かれているのかな? もう気になって仕方がなかった。
美衣佐は隣の席になった記念と言ったけれど、何故わたしと交換日記をしようなんて思い立ったのだろうか。
わたしは美衣佐の横顔をちらりと見た。その横顔は頭が小さくて睫毛が長くて通った鼻筋にシャープなフェイスラインともう同性のわたしも憧れてしまうほどの完璧な美人だった。髪の毛も艶々サラサラでとても綺麗だ。
わたしも美衣佐みたいな顔になれたら幸せだなと思いじっと眺めてしまった。
「ん? 当近さんどうしたの?」
「ううん、綺麗だなと思って……」
わたしがそう言うと美衣佐はこちらを見て「えっ? 何が」と目を見開きちょっと驚いたような顔をする。
わたしの右隣の席に座る美衣佐がこちらに視線を向け言ってきた。
「えっ! 交換日記」
誘われたわたしは本当は飛び上がるほど嬉しかった。嬉しくてそれはもう嬉しくてたまらなかった。
にまにまと笑ってしまうほど嬉しかった。心の中ではとびっきりの笑顔を浮かべているけれど、きっとわたしの表情は変わっていなかったはずだ。
小学生の頃のわたしは勉強もスポーツもできた。周りの友達も優等生ばかりだった。両親からも将来が楽しみだよと期待された。
わたしは、親からの期待に応えたくて一生懸命努力をして自分の実力以上の結果を出そうとしていた。けれど、勉強もスポーツも好きではなかった。
好きでもないことを頑張り続けることは辛すぎて身も心も壊れそうになった。だから中学一年生の二学期くらいから無理して頑張ることをやめた。
全部やーめたと放り投げると肩の力がすーっと抜け楽になり心が軽くなる。そう楽にはなったのだけど、気がつくとわたしは落ちこぼれの部類に入っていた。
そんなわたしの前から優等生だった友達は去って行った。
落ちこぼれのわたしは友達じゃないんだと思うと悲しくなった。
でもいいや。優等生だからわたしと友達でいただけだったんだ。それがわかって良かったと思うことにした。
本当は悲しいけれど。
優等生を演じていた頃のわたしは黄色くてキラキラ輝く花を咲かせるひまわりのような笑顔を浮かべる明るい女の子だった。
『海代ちゃんの笑顔はひまわりや太陽みたいにキラキラ輝いているね』と言われたこともある。けれど、それは偽物の笑顔と輝きだった。
優秀な元友達はケンカをしたわけでもないのに気がつくとわたしの周りに寄りつかなくなった。
やっぱり同じような成績の子同士が仲良くなるのだろうか。ショックだった。成績なんて関係なく友達だと思っていたのに……。
ショックなんて受けていないもんと自分に言い聞かせてみせたけれど、わたしの心はズタズタに切り裂かれていた。
そして、わたしは笑うことをやめてしまった。ううん、やめたというのか笑えなくなっていた。中学時代は暗闇の中にいるようだった。
「ねえ、当近さん交換日記するの? しないの?」
辛い過去の記憶がよみがえり美衣佐の存在を忘れていた。
「あ、えっと、する! 交換日記するよ」
わたしは素直に返事をする。
「やった~じゃあ、今日から交換日記をしようね。隣の席になった記念だよ」
無邪気な微笑みを浮かべた美衣佐は机の引き出しからノートをサッと取り出し差し出す。わたしは、手を伸ばしそのノートを受け取った。
このノートを受け取ったことが全ての始まりだったのかもしれない。そう、知りたくもない現実がわたしを脅かす。
この時のわたしはこれから起こる出来事に気づかず高校時代は楽しくなるだろうとノートで顔を隠し頬を緩めた。
この日の秋空はとても綺麗に見えた。
水色の海の中にもこもこの綿菓子がぷかぷか浮かんでいるみたいでこの中で泳いだら気持ちいいだろうなと思いながらわたしは、空を見上げた。
通学カバンの中には美衣佐との交換日記のノートが入っている。それだけで嬉しくてこの場で小躍りしたくなる。
授業中も机の引き出しに手を突っ込んでは交換日記があることを確認してしまった。
「当近さん帰ったら読んでね」と美衣佐は言った。
「うん、わかった」とわたしは答えたけれど、その場で読みたくてうずうずした。
ノートにはどんなことが書かれているのかな? もう気になって仕方がなかった。
美衣佐は隣の席になった記念と言ったけれど、何故わたしと交換日記をしようなんて思い立ったのだろうか。
わたしは美衣佐の横顔をちらりと見た。その横顔は頭が小さくて睫毛が長くて通った鼻筋にシャープなフェイスラインともう同性のわたしも憧れてしまうほどの完璧な美人だった。髪の毛も艶々サラサラでとても綺麗だ。
わたしも美衣佐みたいな顔になれたら幸せだなと思いじっと眺めてしまった。
「ん? 当近さんどうしたの?」
「ううん、綺麗だなと思って……」
わたしがそう言うと美衣佐はこちらを見て「えっ? 何が」と目を見開きちょっと驚いたような顔をする。
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