異世界カフェ食堂で皿洗いをしますと思ったら日本料理を創造する力が与えられていた!(もふもふ聖獣猫のモフにゃーと楽しく日本料理を創造します)

なかじまあゆこ

文字の大きさ
9 / 268
異世界の流行らないたぶん美味しい食堂

3

しおりを挟む
「いらっしゃいませ~」

 食事中だったけれど、お父さんとお母さんはドアベルに素早く反応して椅子から立ち上がる。

 仕事熱心だなと思いながらわたしは、大好物のイチゴタルトを大きな口を開けて食べる。うん、クリームの甘さとイチゴの甘酢っぱさがマッチしている。

 えへへ。わたしはお客さんより食べることを優先するのだ。

 お父さんとお母さんの休憩室から出ていく後ろ姿を眺めながらわたしは優雅に紅茶を飲む。

 うん、紅茶も最高だ。

 その時。男性の大きな声が聞こえてきた。何だろう? と思いわたしは椅子から立ち上がる。

「ふ~ん、雰囲気の良いお店ですね」と言っているようなんだけれど、なんだかその声は褒めているのとちょっと違う気がした。

「モフにゃーわたし達も行こう!」

「んにゃん? わたし、イチゴタルトをむしゃむしゃしているだにゃん」

「そんなの後でいいから」

「え~むしゃむしゃぱくぱく中なのににゃん」

 モフにゃーはイチゴタルトにかぶりつきながら返事をする。

「モフにゃーはわたしの眷属なんでしょう?」

 わたしはニヤリと笑ってみせた。

「ず、ズルいにゃん。アリナちゃんってば……でも仕方ないにゃん。主のいうことだもんにゃん。渋々だにゃん」

 モフにゃーは食べかけのイチゴタルトをお皿に戻し椅子から立ち上がった。

 

 わたしとモフにゃーがそーっと店内に顔を出すと声の主がそこに居た。

「イチゴタルトでも食べようかな?」
「わたしはワッフルを食べようかな~」

 男性と女性がメニュー表を眺めながら言った。

 男性はアプリコット色の髪に目は海の色を思わせるようなアクアマリン色だった。男性なのにとっても色白で美しくてちょっと妖しげな雰囲気が漂っている。

 そして、女性はストロベリーブロンドヘアがとっても似合っていて目の色はアメジスト色で丸っこい目がキュートだ。

 って、ちょっと待ってよ。この人達は……。どうしてうちの店にいるのかな?

 だって、この人達は……。

「お客さん、お隣の食堂の方ですよね?」

 と、お父さんが尋ねた。

「はい、そうですよ。それが何か?」

 男性はそう答え首を横に傾げる。

「食べに来たんですよ~」と女性も明るい声で返事をする。

 そうなのだ。この人達はお隣の人気食堂のオーナーさん兄妹だったのだ。

「あの人達はどうしてこの店に来たのかなにゃん?」

 モフにゃーがわたしの耳元で呟いた。

「まさか偵察かな? でもうちの店より流行っているのにね。悔しいけど……」

 なんて、モフにゃーと小声で話していると。

「それはありがとうございます」とお父さんは明るい営業スマイルな声で言った。

「飲み物はいかがされますか?」

 今度はお母さんが営業スマイルな声で尋ねた。

「う~ん、そうですね。俺はビールにしようかな」

「お兄ちゃん、昼間からビールなんだ。わたしはカモミールティーにしようかな」

「かしこまりました。飲み物はビールとカモミールティーですね」

 注文を取り終えお父さんとお母さんが厨房に戻ろうとしたその時。

「あら、こんにちは。可愛らしいお嬢さんと猫ちゃんだね」 

 と、わたしとモフにゃーに女性が視線を向け言った。わっ! 気づかれた。

「こ、こんにちは。アリナです」
「こんにちはにゃん。モフにゃーだにゃん」

 わたし達はちょっと慌てながら挨拶をする。まあ、モフにゃーは余裕か。

 女性は、わたし達に微笑みを浮かべそれから、両親に視線を移し「しっかりしたお嬢さんですね。猫ちゃんはキュートね」と言った。

「にゃはは、わたしキュートなんだ。嬉しいにゃん」

「あはは、あの猫ちゃん。あ、モフにゃーか牙が飛び出してるぞ」

 男性が可笑しそうに笑った。

「なぬぬにゃん」

 モフにゃーはちょっと気に入らない様子だ。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【一秒クッキング】追放された転生人は最強スキルより食にしか興味がないようです~元婚約者と子犬と獣人族母娘との旅~

御峰。
ファンタジー
転生を果たした主人公ノアは剣士家系の子爵家三男として生まれる。 十歳に開花するはずの才能だが、ノアは生まれてすぐに才能【アプリ】を開花していた。 剣士家系の家に嫌気がさしていた主人公は、剣士系のアプリではなく【一秒クッキング】をインストールし、好きな食べ物を食べ歩くと決意する。 十歳に才能なしと判断され婚約破棄されたが、元婚約者セレナも才能【暴食】を開花させて、実家から煙たがれるようになった。 紆余曲折から二人は再び出会い、休息日を一緒に過ごすようになる。 十二歳になり成人となったノアは晴れて(?)実家から追放され家を出ることになった。 自由の身となったノアと家出元婚約者セレナと可愛らしい子犬は世界を歩き回りながら、美味しいご飯を食べまくる旅を始める。 その旅はやがて色んな国の色んな事件に巻き込まれるのだが、この物語はまだ始まったばかりだ。 ※ファンタジーカップ用に書き下ろし作品となります。アルファポリス優先投稿となっております。

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

外れスキル持ちの天才錬金術師 神獣に気に入られたのでレア素材探しの旅に出かけます

蒼井美紗
ファンタジー
旧題:外れスキルだと思っていた素材変質は、レア素材を量産させる神スキルでした〜錬金術師の俺、幻の治癒薬を作り出します〜 誰もが二十歳までにスキルを発現する世界で、エリクが手に入れたのは「素材変質」というスキルだった。 スキル一覧にも載っていないレアスキルに喜んだのも束の間、それはどんな素材も劣化させてしまう外れスキルだと気づく。 そのスキルによって働いていた錬金工房をクビになり、生活費を稼ぐために仕方なく冒険者になったエリクは、街の外で採取前の素材に触れたことでスキルの真価に気づいた。 「素材変質スキル」とは、採取前の素材に触れると、その素材をより良いものに変化させるというものだったのだ。 スキルの真の力に気づいたエリクは、その力によって激レア素材も手に入れられるようになり、冒険者として、さらに錬金術師としても頭角を表していく。 また、エリクのスキルを気に入った存在が仲間になり――。

魔物の装蹄師はモフモフに囲まれて暮らしたい ~捨てられた狼を育てたら最強のフェンリルに。それでも俺は甘やかします~

うみ
ファンタジー
 馬の装蹄師だった俺は火災事故から馬を救おうとして、命を落とした。  錬金術屋の息子として異世界に転生した俺は、「装蹄師」のスキルを授かる。  スキルを使えば、いつでもどこでも装蹄を作ることができたのだが……使い勝手が悪くお金も稼げないため、冒険者になった。  冒険者となった俺は、カメレオンに似たペットリザードと共に実家へ素材を納品しつつ、夢への資金をためていた。  俺の夢とは街の郊外に牧場を作り、動物や人に懐くモンスターに囲まれて暮らすこと。  ついに資金が集まる目途が立ち意気揚々と街へ向かっていた時、金髪のテイマーに蹴飛ばされ罵られた狼に似たモンスター「ワイルドウルフ」と出会う。  居ても立ってもいられなくなった俺は、金髪のテイマーからワイルドウルフを守り彼を新たな相棒に加える。  爪の欠けていたワイルドウルフのために装蹄師スキルで爪を作ったところ……途端にワイルドウルフが覚醒したんだ!  一週間の修行をするだけで、Eランクのワイルドウルフは最強のフェンリルにまで成長していたのだった。  でも、どれだけ獣魔が強くなろうが俺の夢は変わらない。  そう、モフモフたちに囲まれて暮らす牧場を作るんだ!

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流

犬社護
ファンタジー
10歳の祝福の儀で、イリア・ランスロット伯爵令嬢は、神様からギフトを貰えなかった。その日以降、家族から【能無し・役立たず】と罵られる日々が続くも、彼女はめげることなく、3年間懸命に努力し続ける。 しかし、13歳の誕生日を迎えても、取得魔法は1個、スキルに至ってはゼロという始末。 遂に我慢の限界を超えた家族から、王都追放処分を受けてしまう。 彼女は悲しみに暮れるも一念発起し、家族から最後の餞別として貰ったお金を使い、隣国行きの列車に乗るも、今度は山間部での落雷による脱線事故が起きてしまい、その衝撃で車外へ放り出され、列車もろとも崖下へと転落していく。 転落中、彼女は前世日本人-七瀬彩奈で、12歳で水難事故に巻き込まれ死んでしまったことを思い出し、現世13歳までの記憶が走馬灯として駆け巡りながら、絶望の淵に達したところで気絶してしまう。 そんな窮地のところをランクS冒険者ベイツに助けられると、神様からギフト《異世界交流》とスキル《アニマルセラピー》を貰っていることに気づかされ、そこから神鳥ルウリと知り合い、日本の家族とも交流できたことで、人生の転機を迎えることとなる。 人は、娯楽で癒されます。 動物や従魔たちには、何もありません。 私が異世界にいる家族と交流して、動物や従魔たちに癒しを与えましょう!

小さな小さな花うさぎさん達に誘われて、異世界で今度こそ楽しく生きます!もふもふも来た!

ひより のどか
ファンタジー
気がついたら何かに追いかけられていた。必死に逃げる私を助けてくれたのは、お花?違う⋯小さな小さなうさぎさんたち? 突然森の中に放り出された女の子が、かわいいうさぎさん達や、妖精さんたちに助けられて成長していくお話。どんな出会いが待っているのか⋯? ☆。.:*・゜☆。.:*・゜ 『転生初日に妖精さんと双子のドラゴンと家族になりました。もふもふとも家族になります!』の、のどかです。初めて全く違うお話を書いてみることにしました。もう一作、『転生初日に~』の、おばあちゃんこと、凛さん(人間バージョン)を主役にしたお話『転生したおばあちゃん。同じ世界にいる孫のため、若返って冒険者になります!』も始めました。 よろしければ、そちらもよろしくお願いいたします。 *8/11より、なろう様、カクヨム様、ノベルアップ、ツギクルさんでも投稿始めました。アルファポリスさんが先行です。

転生したけど平民でした!もふもふ達と楽しく暮らす予定です。

まゆら
ファンタジー
回収が出来ていないフラグがある中、一応完結しているというツッコミどころ満載な初めて書いたファンタジー小説です。 温かい気持ちでお読み頂けたら幸い至極であります。 異世界に転生したのはいいけど悪役令嬢とかヒロインとかになれなかった私。平民でチートもないらしい‥どうやったら楽しく異世界で暮らせますか? 魔力があるかはわかりませんが何故か神様から守護獣が遣わされたようです。 平民なんですがもしかして私って聖女候補? 脳筋美女と愛猫が繰り広げる行きあたりばったりファンタジー!なのか? 常に何処かで大食いバトルが開催中! 登場人物ほぼ甘党! ファンタジー要素薄め!?かもしれない? 母ミレディアが実は隣国出身の聖女だとわかったので、私も聖女にならないか?とお誘いがくるとか、こないとか‥ ◇◇◇◇ 現在、ジュビア王国とアーライ神国のお話を見やすくなるよう改稿しております。 しばらくは、桜庵のお話が中心となりますが影の薄いヒロインを忘れないで下さい! 転生もふもふのスピンオフ! アーライ神国のお話は、国外に追放された聖女は隣国で… 母ミレディアの娘時代のお話は、婚約破棄され国外追放になった姫は最強冒険者になり転生者の嫁になり溺愛される こちらもよろしくお願いします。

処理中です...