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異世界の流行らないたぶん美味しい食堂
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「いらっしゃいませ~」
食事中だったけれど、お父さんとお母さんはドアベルに素早く反応して椅子から立ち上がる。
仕事熱心だなと思いながらわたしは、大好物のイチゴタルトを大きな口を開けて食べる。うん、クリームの甘さとイチゴの甘酢っぱさがマッチしている。
えへへ。わたしはお客さんより食べることを優先するのだ。
お父さんとお母さんの休憩室から出ていく後ろ姿を眺めながらわたしは優雅に紅茶を飲む。
うん、紅茶も最高だ。
その時。男性の大きな声が聞こえてきた。何だろう? と思いわたしは椅子から立ち上がる。
「ふ~ん、雰囲気の良いお店ですね」と言っているようなんだけれど、なんだかその声は褒めているのとちょっと違う気がした。
「モフにゃーわたし達も行こう!」
「んにゃん? わたし、イチゴタルトをむしゃむしゃしているだにゃん」
「そんなの後でいいから」
「え~むしゃむしゃぱくぱく中なのににゃん」
モフにゃーはイチゴタルトにかぶりつきながら返事をする。
「モフにゃーはわたしの眷属なんでしょう?」
わたしはニヤリと笑ってみせた。
「ず、ズルいにゃん。アリナちゃんってば……でも仕方ないにゃん。主のいうことだもんにゃん。渋々だにゃん」
モフにゃーは食べかけのイチゴタルトをお皿に戻し椅子から立ち上がった。
わたしとモフにゃーがそーっと店内に顔を出すと声の主がそこに居た。
「イチゴタルトでも食べようかな?」
「わたしはワッフルを食べようかな~」
男性と女性がメニュー表を眺めながら言った。
男性はアプリコット色の髪に目は海の色を思わせるようなアクアマリン色だった。男性なのにとっても色白で美しくてちょっと妖しげな雰囲気が漂っている。
そして、女性はストロベリーブロンドヘアがとっても似合っていて目の色はアメジスト色で丸っこい目がキュートだ。
って、ちょっと待ってよ。この人達は……。どうしてうちの店にいるのかな?
だって、この人達は……。
「お客さん、お隣の食堂の方ですよね?」
と、お父さんが尋ねた。
「はい、そうですよ。それが何か?」
男性はそう答え首を横に傾げる。
「食べに来たんですよ~」と女性も明るい声で返事をする。
そうなのだ。この人達はお隣の人気食堂のオーナーさん兄妹だったのだ。
「あの人達はどうしてこの店に来たのかなにゃん?」
モフにゃーがわたしの耳元で呟いた。
「まさか偵察かな? でもうちの店より流行っているのにね。悔しいけど……」
なんて、モフにゃーと小声で話していると。
「それはありがとうございます」とお父さんは明るい営業スマイルな声で言った。
「飲み物はいかがされますか?」
今度はお母さんが営業スマイルな声で尋ねた。
「う~ん、そうですね。俺はビールにしようかな」
「お兄ちゃん、昼間からビールなんだ。わたしはカモミールティーにしようかな」
「かしこまりました。飲み物はビールとカモミールティーですね」
注文を取り終えお父さんとお母さんが厨房に戻ろうとしたその時。
「あら、こんにちは。可愛らしいお嬢さんと猫ちゃんだね」
と、わたしとモフにゃーに女性が視線を向け言った。わっ! 気づかれた。
「こ、こんにちは。アリナです」
「こんにちはにゃん。モフにゃーだにゃん」
わたし達はちょっと慌てながら挨拶をする。まあ、モフにゃーは余裕か。
女性は、わたし達に微笑みを浮かべそれから、両親に視線を移し「しっかりしたお嬢さんですね。猫ちゃんはキュートね」と言った。
「にゃはは、わたしキュートなんだ。嬉しいにゃん」
「あはは、あの猫ちゃん。あ、モフにゃーか牙が飛び出してるぞ」
男性が可笑しそうに笑った。
「なぬぬにゃん」
モフにゃーはちょっと気に入らない様子だ。
食事中だったけれど、お父さんとお母さんはドアベルに素早く反応して椅子から立ち上がる。
仕事熱心だなと思いながらわたしは、大好物のイチゴタルトを大きな口を開けて食べる。うん、クリームの甘さとイチゴの甘酢っぱさがマッチしている。
えへへ。わたしはお客さんより食べることを優先するのだ。
お父さんとお母さんの休憩室から出ていく後ろ姿を眺めながらわたしは優雅に紅茶を飲む。
うん、紅茶も最高だ。
その時。男性の大きな声が聞こえてきた。何だろう? と思いわたしは椅子から立ち上がる。
「ふ~ん、雰囲気の良いお店ですね」と言っているようなんだけれど、なんだかその声は褒めているのとちょっと違う気がした。
「モフにゃーわたし達も行こう!」
「んにゃん? わたし、イチゴタルトをむしゃむしゃしているだにゃん」
「そんなの後でいいから」
「え~むしゃむしゃぱくぱく中なのににゃん」
モフにゃーはイチゴタルトにかぶりつきながら返事をする。
「モフにゃーはわたしの眷属なんでしょう?」
わたしはニヤリと笑ってみせた。
「ず、ズルいにゃん。アリナちゃんってば……でも仕方ないにゃん。主のいうことだもんにゃん。渋々だにゃん」
モフにゃーは食べかけのイチゴタルトをお皿に戻し椅子から立ち上がった。
わたしとモフにゃーがそーっと店内に顔を出すと声の主がそこに居た。
「イチゴタルトでも食べようかな?」
「わたしはワッフルを食べようかな~」
男性と女性がメニュー表を眺めながら言った。
男性はアプリコット色の髪に目は海の色を思わせるようなアクアマリン色だった。男性なのにとっても色白で美しくてちょっと妖しげな雰囲気が漂っている。
そして、女性はストロベリーブロンドヘアがとっても似合っていて目の色はアメジスト色で丸っこい目がキュートだ。
って、ちょっと待ってよ。この人達は……。どうしてうちの店にいるのかな?
だって、この人達は……。
「お客さん、お隣の食堂の方ですよね?」
と、お父さんが尋ねた。
「はい、そうですよ。それが何か?」
男性はそう答え首を横に傾げる。
「食べに来たんですよ~」と女性も明るい声で返事をする。
そうなのだ。この人達はお隣の人気食堂のオーナーさん兄妹だったのだ。
「あの人達はどうしてこの店に来たのかなにゃん?」
モフにゃーがわたしの耳元で呟いた。
「まさか偵察かな? でもうちの店より流行っているのにね。悔しいけど……」
なんて、モフにゃーと小声で話していると。
「それはありがとうございます」とお父さんは明るい営業スマイルな声で言った。
「飲み物はいかがされますか?」
今度はお母さんが営業スマイルな声で尋ねた。
「う~ん、そうですね。俺はビールにしようかな」
「お兄ちゃん、昼間からビールなんだ。わたしはカモミールティーにしようかな」
「かしこまりました。飲み物はビールとカモミールティーですね」
注文を取り終えお父さんとお母さんが厨房に戻ろうとしたその時。
「あら、こんにちは。可愛らしいお嬢さんと猫ちゃんだね」
と、わたしとモフにゃーに女性が視線を向け言った。わっ! 気づかれた。
「こ、こんにちは。アリナです」
「こんにちはにゃん。モフにゃーだにゃん」
わたし達はちょっと慌てながら挨拶をする。まあ、モフにゃーは余裕か。
女性は、わたし達に微笑みを浮かべそれから、両親に視線を移し「しっかりしたお嬢さんですね。猫ちゃんはキュートね」と言った。
「にゃはは、わたしキュートなんだ。嬉しいにゃん」
「あはは、あの猫ちゃん。あ、モフにゃーか牙が飛び出してるぞ」
男性が可笑しそうに笑った。
「なぬぬにゃん」
モフにゃーはちょっと気に入らない様子だ。
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