異世界カフェ食堂で皿洗いをしますと思ったら日本料理を創造する力が与えられていた!(もふもふ聖獣猫のモフにゃーと楽しく日本料理を創造します)

なかじまあゆこ

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お隣の食堂とお客さん

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「え!? 地球のことを話すのかい」
「地球のことを……話すの?」

 タイゾーおじいさんとカーナさんは、アクアお兄ちゃんとストロベリーナお姉ちゃんをチラチラと見ながら言った。

「うん、この二人はこの世界でお兄ちゃんとお姉ちゃんみたいな存在なんだ。だからきっと話しても大丈夫だと思うの」

 わたしは、そう答えながら信頼出来る人がいなかった地球時代を思い出した。

 今のわたしには関係ないのに……。あの世界は過去なのに。

 富菜ちゃんの意地悪な顔を思い出す……。叔母さんと叔父さんの顔も。誰からも愛されていなかった過去は関係ないのに。

 お父さんとお母さんに捨てられたことも思い出してしまう。

 わたしはアリナであり安莉奈ではない。でも、やっぱりわたしは安莉奈でもあるんだよ。

 このグリーン王国ではお父さんから鬱陶しいくらい愛されている。それからお母さんもわたしのことを愛してくれているのに。

 安莉奈時代を思い出すなんてどうしてかな。今が幸せであるからこそあの辛かった地球かこのわたしに戻りたくないからかもしれない。

「お二人が信頼出来る人であるなら話してみても良いんじゃないかな」
「そうね。わたしもそう思うわ」

 タイゾーおじいさんとカーナさんがそう言ってくれたので勇気が湧く。

「タイゾーおじいさん、カーナさんありがとう。じゃあ、話してみるね」

 わたしがお礼を言って話そうとしたその時。

「そういえばわしら注文まだだったぞ」とタイゾーおじいさんが言った。

「あ、ごめんなさい。話に夢中で……」
「お客様注文をお伺いするのを忘れていました。ご注文はお決まりでしょうか?」

 アクアお兄ちゃんがすかさず対応する。

 タイゾーおじいさんとカーナさんの注文をアクアお兄ちゃんが受け料理が二人の目の前に運ばれてくるのを確認すると、わたしは話を始めた。

「アクアお兄ちゃん、ストロベリーナお姉ちゃん驚かないで聞いてね」

 わたしは、落ち着いて話すため深呼吸をして呼吸を整えた。


 アクアお兄ちゃんとストロベリーナお姉ちゃんがわたしの次の言葉をじっと待ってくれている。

 だから、わたしは信じられないような現実を語らなくてはならない。

「わたしね……この世界の人間じゃないんだよ」

 わたしは勇気を出して言った。

「え?」とアクアお兄ちゃんとストロベリーナお姉ちゃんはほぼ同時に言った。それに続き、ギャップも「え? ガォ~!!」と吠えた。

 そして、なぜだかモフにゃーも「にゃぬぬ」と、首を傾げた。

 モフにゃーのことはとりあえず置いておくとして。

 わたしは、地球のこと、その地球では安莉奈だったこと、タイゾーおじいさん達と一緒に黄色のバスに乗せられこのグリーン王国に召喚されたこと、その後のアリナとしての日々などを話した。

 アクアお兄ちゃんとストロベリーナお姉ちゃんは、話の途中で口を挟まず相槌を打ち聞いてくれた。

 そして、わたしが全て話し終えると沈黙が流れた。それからしばらくすると、アクアお兄ちゃんが口を開いた。

「アリナちゃんはこの世界に来るべくして来たのかな?」と言った。

 
『来るべくして来た』

 アクアお兄ちゃんのその言葉がわたしの胸に響く。

「そうね、アリナちゃんは辛かったことがその地球であった。だからこそ神様がこのグリーン王国で幸せを与えてくださったのよ」

 ストロベリーナお姉ちゃんは大きく頷きながら言った。

「アクアお兄ちゃん、ストロベリーナお姉ちゃんありがとう。わたしの言ったことを信じてくれるの?」

 わたしはアクアお兄ちゃんとストロベリーナお姉ちゃんの顔を交互に見る。二人のその笑顔はとても優しかった。

 もしかして、この世界に召喚されたのはアクアお兄ちゃんとストロベリーナお姉ちゃんに出会うためでもあったのかな? なんて思えてきた。

「信じられないような話だけどアリナちゃんがウソをついているように見えないもんな。俺は信じるよ」
「わたしも信じるよ。アリナちゃんはきっと、神様から素晴らしいプレゼントをもらったのよ」

 アクアお兄ちゃんとストロベリーナお姉ちゃんのその言葉が嬉しくて涙が出そうになった。
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