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わたしは悪魔それとも……

どうしよう

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  自室の襖を開け部屋に入ったわたしは、ぺたりと座り込む。

  心臓がまだドキドキしている。早く打つのが分かる。ドキドキドキドキ。

                どうしよう……。

  わたしは、ゆかりや真由を犠牲にすると、答えてしまった。

  大好きな友達の二人を……。

 ゆかりの大きな瞳と真由の切れ長な瞳が頭に浮かんだ。二人は笑顔だった。だけど、そんな二人の顔はぐにゃりと歪んだ。

  わたしは、とんでもないことをしてしまったのだ。今からでも取り消すことはできるのだろうか。

  
          どうしよう、どうしよう。

  頭の中は、どうしたらいいのでいっぱいになる。

  わたしは、なんて悪い子なんだろか。幼い頃から、ずっと、ずっと友達だった二人を悪魔に売り渡そうとするなんて。

  後悔という文字がわたしの頭の中を占領する。

   だけど、それと同時に、わたしのお兄ちゃんを生き返らせてくれるという、声の主の言葉が頭の中に鳴り響いた。

  
  お兄ちゃんを生き返らせてくれるという甘い魅力的な希望の蜜と恐ろしい誘惑に、わたしの心はどうにかなってしまいそうだ。


        頭が、変になりそうだ。

        どうしたらいいの?  わたしはどうしたらいいの?

  悪魔の手がわたしを捉えようとしている。

   と、その時、ジリリ~ンと電話のベルが鳴った。


  
  電話……。

  突然、プルルル―と電話が鳴ったのでわたしはビクッとした。

  プルルル―プルルル―と電話は鳴り続ける。誰からだろう?

  お母さんは、電話に出ないのかな?

  わたしは、腰を上げて階下に向かって「お母さん、電話だよ」と叫んだ。

  だけど、お母さんの返事はない。

  おかしいな?   さっきまで居たのに買い物にでも出かけたのだろうか。

  
     電話なんて取る気分じゃないのに。

「お母さん~」ともう一度階下に向いお母さんを呼ぶけれど、返事がないので仕方なく、わたしは、受話器を取り電話に出た。

  「はい、もしもし」

  「もしもし、あ、史砂ちゃん」

    その声は、とても明るかった。明るくてあまりにも明るくて、わたしは……。

「ま、真由ちゃん……」

  わたしは、なんとも言えない気持ちになった。
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