あの子が追いかけてくる

なかじまあゆこ

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あの子の影に怯えて

雪と思い出……そして嵐の前の静けさ

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わたし達が玄関の扉に手をかけると、里見さんがやって来て、「いってらっしゃい。楽しんで来てくださいね」と言った。

わたし達は、「いってきま~す、楽しんできま~す」と挨拶をして外の世界へと飛び出した。

外は部屋の中とはまるで違う世界が広がっていた。真っ白な雪の世界、そして、冷たい空気がぴりぴりと頬に触れて冬の寒さが身に染みる。

「寒いねー」とわたし達は口々に言った。

都会育ちには堪える寒さだった。


  だけど、一旦雪の中に身をおくと寒いことなんてあっさりと忘れてしまう。綺麗な雪がわたしをお出迎えしてくれた。

「まずは、雪合戦?   それとも雪だるまでも作る?」

花音ちゃんはポテトチップスをバリバリ食べながら言った。

「花音ちゃんてばポテチどこかに置いてきたら?」

わたしが言うと花音ちゃんは、

「え~わたしの元気なもとはこのポテチなんだよ~」

なんて言いながらポテトチップスの袋を握りしめている。誰も取らないのに可笑しい花音ちゃんだ。

わたし達のやり取りを見ていた他の皆が、

「花音ちゃんってどこまで食い意地が張っているのよー」

「おデブさんに復活するわよ」

「横綱復活だぞ~」これは太郎。

皆が花音ちゃんに言いたい放題なものだから、花音ちゃんは、ほっぺたをぷくりと膨らませた。

皆とこうしているとなんだか子供の頃に戻ったみたいで楽しい。


  
エイヤッ~

花音ちゃんの頭に雪玉が直撃した。

花音ちゃんの頭に雪玉を投げたのは、いたずらっ子の代表選手だと言える太郎だ。あの頃と大人になっても変わっていない太郎。

「ちょっと~太郎、ズルいよ~不意討ちなんて!」

怒る花音ちゃん。

これも確かに、小中学校の時に太郎と花音ちゃんのお決まりだったような気がする。

花音ちゃんが怒れば怒るほど、攻撃を止めない太郎。怒る花音ちゃん。

楽しかったなあの頃。

だけど一つだけ忘れてはならないことがあったのだ。

  
それは、里美のこと。わたしが里美にしたこと……。

だけど、だけど、あれは……。

ベチャ!

あ、誰かがわたしに雪玉攻撃をしてきた。もう、誰よ。わたしはニット帽子にぶつけられた雪を払いながら後ろに振り返った。

すると、すみれがにへへっと笑っていた。そして、またすぐに雪玉攻撃をしてくる。

「ちょっと~すみれ~何をするのよ」

わたしは、雪玉を作りすみれに向かって思いっきり投げた。すると面白いことにすみれの顔面に直撃した。やったー!!

「未央ちゃん、酷いな~」

すみれは、顔にかぶった雪を払いのけて、

「クソ~、倍返しじゃ」

と言ってわたしに投げてきた。


  
すると、すみれの投げてきた雪玉はわたしの顔面に見事に直撃した。

負けてたまるかと、お互い雪玉をぶつけ合った。

わたし達以外の他の皆も雪玉の投げ合いをして楽しんでいる。雪合戦だ。

はぁはぁと息を切らして、本気になって遊んでいる。こんなに本気を出して遊んだのはいつ以来だろうか?

思いっきりはしゃぐと体の中の空気が入れ替わるのかとても気持ちいい。

嫌なことや辛いことその全部が洗い流されていくようだ。


  
雪の中で遊んでいると寒かったはずの身体が徐々にあたたまって今はポカポカになってきた。

それから六人で雪の真っ白なお布団の上に大の字になって寝転んだ。

そして、空を見上げると綺麗な青空が見えた。今、この瞬間は平和だ。キラキラと輝く太陽が雪を綺麗に照らしている。

この時のわたしは幸せな気持ちでいっぱいだったのだ。この先に待ち構えている、渦巻く人の恐ろしさに気がついていなかった。

何故、わたしはここにいるのか考えると良かったのかもしれない。
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