梅子ばあちゃんのゆったりカフェヘようこそ!(東京都下の高尾の片隅で)

なかじまあゆこ

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第四章 南橋家御一家様とわたしるり子は高尾山へ

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 わたしと里奈は、佐美さんは恐ろしいねと言いながら歩いている。こんな時は牛乳娘里奈とも気が合う。

 山の澄んだ空気を身体中に吸い込むと気持ちいい。緑がいっぱいの景色、日頃の疲れが浄化されていくようで癒される。

「ねえ、るり子ちゃん」
「なあに?」
「佐美さんってさ、なんであんなに恐ろしいのかな? だから離婚するんだよね」
「そうかもね。わたしも恐ろしくて二人で生活なんてとてもとても」

 と話したところで、鋭い視線を感じた。

 背中を突き刺すような視線だ。バチバチバチバチ。

 これはちょっと恐ろしいけれど、そっと後ろを振り向く。やはり佐美さんその人がわたし達のことを強烈な視線で睨み付けていた。

「こら~あんた達~」

「ごめんなさ~い」
「ごめんなさ~い」

 わたしと里奈の声が揃う。

 ひぇー恐ろしいよ。里奈と二人して逃げる。

「こら~待て~!!」

 佐美さんがわたし達を追いかけてくる。



 わたし達は逃げる。山道をおもいっきり走り逃げる。どうしてこんなことになるんだ。それもこれも里奈が余計なことを言ったから。

「里奈、あんたが余計なことを言うからこんな目に」

 わたしは息を切らしながら里奈に抗議をする。だけど、里奈からの反応はない。

 あれ?

 おかしいな?

 と、思ったその時……。

 ドシ~ンと大きな音がわたしの後ろから聞こえた。まさか、この音は!

 恐る恐る後ろを振り返ると、里奈が両手を地面につき転んでいた。



 そう。里奈はずっこけたのだ。

 それから暫くすると、里奈の「痛いよ~」という声が高尾山に響き渡った。

 それとほぼ同時に、「里奈のパンツ丸見え~」という佐美さんの高らかな大きな声がした。

 里奈は、がばっと起き上がり、顔を真っ赤に上気させ、

「違うもん、違うもん、これは見えパンだもん!」

 と喚いている。ちなみに、見えパンとは見えても構わない下着のことなのだ。

「あ~あ~里奈。やっぱり、そんなミニスカにヒールのある靴を履いてくるからだよ~」

 わたしは、里奈の真っ黒に汚れた膝を見て言った。

「じゃあ、こうなるから、ジーンズに絶対にしろっと言ってくれたら良かったじゃないの。るり子ちゃん」

 なんて、言いがかりなんだろう。

「まさか、予言者でもないのに、里奈がずっこけるなんて、知るわけないでしょう」

 呆れてものが言えなくなりそうだよ。



「ずっこけた、なんて言わないでよ~酷いな。花の乙女にたいして失礼だよ。るり子ちゃん」

里奈は、ほっぺたをぷっくりと膨らませてフグみたいな顔をして怒っているから笑えてしまう。

「誰が乙女なんですか?  フグたん!」

「フ、フグたん!   何それあんまりだよ」

 あれ、今回はお得意の『お母さん~るり子ちゃんが』って言わないのかな。

「クックッ、あんた達、何を言い合っているのよ」

 佐美さんがわたし達の顔を交互に見て笑っている。



フグたんこと里奈と悪魔の大魔王佐美さんと天使のようなわたしるり子の三人で山道を歩く。なんて言ってるのバレたら、佐美さんに後ろ頭を叩かれそうだ。

 流石の佐美さんも里奈が怪我をしていないかと心配している。

 佐美さんが、「大丈夫里奈?」 と、聞くと里奈は、「大丈夫、大丈夫!」とピースサインを胸の前で二つ作っている。大したことないみたいで良かった。

「ところで、おばあちゃん達は?」

 里奈が後ろ振り返り言った。

 そういえば、おばあちゃん、道男叔父さん、さゆりさんの姿が見えない。

 わたし達が走り過ぎて、置いてきてしまったようだ。
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