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狛犬と神様と祖父母と美味しいご飯の時間と笑いと涙
2ならまちの朝ごはん
しおりを挟むそれからみんなでテーブルを囲み食事をした。いつもより賑やかで楽しい時間だった。
わたしは、奈良漬を口に運んだ。
酒粕に漬け込んでいるのでお酒の香りがふわふわと香りそしてほんのり甘くて独特の美味しさだ。熱々のご飯と良く合い箸が進む。奈良漬は子供のわたしでも美味しく食べられる。
神様も狛子に狛助もそして、おじいちゃんとおばあちゃんも奈良漬をぱりぱり食べている。
みんなの笑顔を見ていると家族になったみたいで不思議な気持ちになった。そんなことを考えているとふと、お父さんとお母さんはどうしているかな? と思った。
考えない、考えない……。
わたしは、玉ねぎ、人参、ゴボウなどがたくさん入っている具だくさんの味噌汁に箸を伸ばした。うん、玉ねぎの甘みに癒される。
「おばあちゃん、ご飯おかわり~」
「僕もご飯おかわり~」
狛子と狛助が同時にお茶碗を差し出した。
わたしも「おばあちゃん、ご飯おかわり~」と言ってお茶碗を差し出した。
「俺もおかわりじゃ~」神様もお茶碗を差し出した。
その後もみんなで朝からご飯をたらふく食べた。おばあちゃんはそんなわたし達を順番に眺め目を細めた。
「みんながたくさんおかわりしてくれておばあちゃん嬉しいよ」
おばあちゃんは頬を緩めにっこり微笑みを浮かべた。その隣でおじいちゃんも柔らかい笑みを浮かべている。
幸せで楽しくてちょっと笑えた朝食の時間だった。
「じゃあ、おばあちゃん、おじいちゃんいってきま~す」
制服に着替えたわたしは玄関で手を振った。
「気をつけていってらっしゃい」
「気をつけてな」
おばあちゃんとそれからおじいちゃんが玄関口まで出てきて手を振ってくれた。優しいおばあちゃんの笑顔ともう死んでしまったはずなんだけれど、今日もお日様のような笑みを浮かべているおじいちゃんに見送られわたしは外に出る。
高い位置でポニーテールに結わえた髪が風に揺れ、柔らかな風がわたしの頬を撫でる。二月後半。もうすぐ春が訪れるのかなと思うとなんだか嬉しくなった。
学校は楽しくないけれど今日も頑張ろう。
わたしは、一歩歩き出した。
その時……。
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