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きらりちゃんと美川さん
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「愛可さ~ん! こっちですよ」
美川さんはきらりちゃんの氷のように冷たい声を無視してわたしを呼んだ。
わたしは呼ばれて仕方がないので美川さんの隣の席に座った。
すると、思った通りきらりちゃんの鋭い声が聞こえてきた。
「お姉さんがどうしてここにいるのかな?」
猫みたいな少しつり上がった大きな目がギロリとわたしを睨む。めちゃくちゃ怖いのですがとビクビクしてしまう。
「あ、えっと、どうしてかな? そうだ、沖縄そばを食べたくてかな?」
わたしは助けを求めて隣の美川さんをちらりと見るが知らん顔だ。鼻筋がスッと通り睫毛が長い美川さんの男性のくせに綺麗な横顔が憎たらしいよ。
「さっきも食べていたのにね。お姉さんって痩せているのに大食いなんだね」
きらりちゃんはわたしの顔をじとーっと睨みながら言った。
なんだか女版の美川さんみたいで怖いのですが……。しかも小学生版なんだけど。
「うん、わたしは食いしん坊なんだもん」
この食いしん坊というのは嘘ではないけれど。
「ふ~ん! そうなんだね」
きらりちゃんはテーブルの上に置いてあるシャーペンを手に取りカチカチとさせた。なんだかとても不機嫌そうだ。
「おっ、きらりちゃんは小学五年生なんだね」
不機嫌そうにシャーペンをカチカチさせているきらりちゃんの前に置かれている『国語5』と書かれている教科書に目を向けて美川さんが聞いた。
「……あの、お兄さんかおじさんか知らないけどめちゃくちゃ怪しいんだけど。それと、きらりちゃんって呼ばないでくれるかな」
きらりちゃんのシャーペンをカチカチさせるその音が激しくなった。
カチカチカチカチカチカチと激しくシャーペンを鳴らすきらりちゃんは相当不機嫌だと思う。
きらりちゃんの言う通り美川さんは怪しすぎるのは確かだ。
「失礼な俺はお兄さんだぞ」
「あっそ。お兄さんかおじさんかどっちでもいいけどね」
美川さんときらりちゃんはバチバチと睨み合う。
大きな目で表情の怖いこの二人が睨み合っているその姿はなんだかよく似ていて兄妹喧嘩のようにも見える。それとも親子喧嘩かな。
いやいや待てよ。美川さんは恐らく二十代だよね。じゃあやっぱり兄妹喧嘩かな? なんてことを色々考えながらわたしは二人を眺めていた。
そんなことを考えながらボーッとしていると沖縄そばが運ばれてきた。
「お待たせ~沖縄そばだよ」
おばぁが三人前の沖縄そばをお盆に載せてやって来た。
これじゃあまるでわたしと美川さんにきらりちゃんの三人で沖縄そばを食べに来たように見えるんじゃないかなと思うと可笑しくなる。
「おっ、おばぁの沖縄そば美味しそうだね」
美川さんは目を輝かせてフレンドリーなんだけれどその目はちょっと怖くて沖縄そばを睨んでいるようにも見える。
「おばぁの沖縄そばは美味しいぞ」
おばぁはパッと花が咲いたような笑顔を浮かべながらわたし達の目の前に湯気の立っている沖縄そばとさんぴん茶の注がれたグラスを置く。
「よ~し食べるぞ~」
「きっと美味しいよ。ゆっくり食べてさね」
おばぁは笑顔を浮かべながら店の奥の部屋へ戻っていった。
「美味しそうですね。さあ、愛可さんにきらりちゃん食べましょうって、きらりちゃんいただきますも言わないで食べたらダメじゃないか」
きらりちゃんに視線を向けると割り箸を割りズルズルと沖縄そばを食べているではないか。
「お兄さんうるさいな。ほっといてよ」
きらりちゃんは顔を上げて美川さんを睨みつける。
「まあ、俺には関係ないことだけどさ。ごはんを食べる時はいただきますって俺は感謝の気持ちを込めて言うけどね」
美川さんはそう言って手を合わせ「いただきます」と言って沖縄そばを食べた。
そんな美川さんをきらりちゃんはじっと見ていた。
美川さんはきらりちゃんの氷のように冷たい声を無視してわたしを呼んだ。
わたしは呼ばれて仕方がないので美川さんの隣の席に座った。
すると、思った通りきらりちゃんの鋭い声が聞こえてきた。
「お姉さんがどうしてここにいるのかな?」
猫みたいな少しつり上がった大きな目がギロリとわたしを睨む。めちゃくちゃ怖いのですがとビクビクしてしまう。
「あ、えっと、どうしてかな? そうだ、沖縄そばを食べたくてかな?」
わたしは助けを求めて隣の美川さんをちらりと見るが知らん顔だ。鼻筋がスッと通り睫毛が長い美川さんの男性のくせに綺麗な横顔が憎たらしいよ。
「さっきも食べていたのにね。お姉さんって痩せているのに大食いなんだね」
きらりちゃんはわたしの顔をじとーっと睨みながら言った。
なんだか女版の美川さんみたいで怖いのですが……。しかも小学生版なんだけど。
「うん、わたしは食いしん坊なんだもん」
この食いしん坊というのは嘘ではないけれど。
「ふ~ん! そうなんだね」
きらりちゃんはテーブルの上に置いてあるシャーペンを手に取りカチカチとさせた。なんだかとても不機嫌そうだ。
「おっ、きらりちゃんは小学五年生なんだね」
不機嫌そうにシャーペンをカチカチさせているきらりちゃんの前に置かれている『国語5』と書かれている教科書に目を向けて美川さんが聞いた。
「……あの、お兄さんかおじさんか知らないけどめちゃくちゃ怪しいんだけど。それと、きらりちゃんって呼ばないでくれるかな」
きらりちゃんのシャーペンをカチカチさせるその音が激しくなった。
カチカチカチカチカチカチと激しくシャーペンを鳴らすきらりちゃんは相当不機嫌だと思う。
きらりちゃんの言う通り美川さんは怪しすぎるのは確かだ。
「失礼な俺はお兄さんだぞ」
「あっそ。お兄さんかおじさんかどっちでもいいけどね」
美川さんときらりちゃんはバチバチと睨み合う。
大きな目で表情の怖いこの二人が睨み合っているその姿はなんだかよく似ていて兄妹喧嘩のようにも見える。それとも親子喧嘩かな。
いやいや待てよ。美川さんは恐らく二十代だよね。じゃあやっぱり兄妹喧嘩かな? なんてことを色々考えながらわたしは二人を眺めていた。
そんなことを考えながらボーッとしていると沖縄そばが運ばれてきた。
「お待たせ~沖縄そばだよ」
おばぁが三人前の沖縄そばをお盆に載せてやって来た。
これじゃあまるでわたしと美川さんにきらりちゃんの三人で沖縄そばを食べに来たように見えるんじゃないかなと思うと可笑しくなる。
「おっ、おばぁの沖縄そば美味しそうだね」
美川さんは目を輝かせてフレンドリーなんだけれどその目はちょっと怖くて沖縄そばを睨んでいるようにも見える。
「おばぁの沖縄そばは美味しいぞ」
おばぁはパッと花が咲いたような笑顔を浮かべながらわたし達の目の前に湯気の立っている沖縄そばとさんぴん茶の注がれたグラスを置く。
「よ~し食べるぞ~」
「きっと美味しいよ。ゆっくり食べてさね」
おばぁは笑顔を浮かべながら店の奥の部屋へ戻っていった。
「美味しそうですね。さあ、愛可さんにきらりちゃん食べましょうって、きらりちゃんいただきますも言わないで食べたらダメじゃないか」
きらりちゃんに視線を向けると割り箸を割りズルズルと沖縄そばを食べているではないか。
「お兄さんうるさいな。ほっといてよ」
きらりちゃんは顔を上げて美川さんを睨みつける。
「まあ、俺には関係ないことだけどさ。ごはんを食べる時はいただきますって俺は感謝の気持ちを込めて言うけどね」
美川さんはそう言って手を合わせ「いただきます」と言って沖縄そばを食べた。
そんな美川さんをきらりちゃんはじっと見ていた。
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