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沖縄そばとわたし達
しおりを挟むそれからわたし達三人は沖縄そばを黙々と食べた。
美川さんはとろけるような笑顔を浮かべながら沖縄そばを食べ、きらりちゃんは表情を変えずに沖縄そばを食べていた。
懐かしい味がする沖縄そばを食べるとわたしは幸せな気持ちになるのと同時に切なさを感じてしまった。この気持ちは何だろう?
幼い日に感じられなかった親からの愛情とおばぁの優しかった笑顔を思い出しなんともいえない気持ちが心の中からじわじわと込み上げてきた。
少し硬めの麺であっさりしたスープの沖縄そばをつるつると食べ続けていると心の中にも栄養補給ができた。
そして、わたしは沖縄そばを黙々と食べているきらりちゃんに視線を移す。
きらりちゃんは今も表情を変えずに沖縄そばを食べているけれどその心の中ではどんなことを感じているのかなとふと思う。
昔のわたしと重なる何かを感じた。
それが何なのかは良く分からないけれど……。わたしときらりちゃんは良く似ているのかもしれない。
そして、今度は美川さんにわたしは目を移した。
美川さんは沖縄そばのスープをレンゲ掬い飲んでいる。そして、飲み干し「美味しかった~」と叫んだ。
その美川さんの表情はやっぱり幸せそのものだった。だけど、美川さんもまた普段の眉間に皺を寄せた怖い表情の裏に何かを抱えているのかなとそんなことを感じながらわたしは沖縄そばを食べ終えた。
「美味しかった~」
わたしも思わず感嘆の声をあげた。
斉川さんのところの沖縄そばもこの沖縄の楽しい世界へめんそ~れのおばぁが作る沖縄そばもどちらも美味しくてわたしの胃袋と心を満たしてくれた。
美味しい料理を食べると心が穏やかになり元気になれる。そんな料理を作れる人をわたしは尊敬する。
わたしは食べる専門で料理は得意じゃない。なので料理を作って喜んでもらうことは出来ない。だから美味しいご飯を作ってもらった時は感謝して笑顔を浮かべて食べるようにしていた。
そうして笑顔を浮かべてご飯を食べているうちに気がつくと幸せな気持ちが溢れていた。
笑顔になると元気になれる。
そして、元気になると幸せになれる。辛いことも悲しいことだって何処かに吹き飛ばせる。
「ごちそうさまでした~」
「ごちそうさまでした~」
わたしと美川さんはとびっきりの笑顔を浮かべた。
「……変な人達」
きらりちゃんがぽつりと呟いた。
「そうかな~?」
美川さんが真顔に戻りきらりちゃんに聞いた。
「うん、食事をするだけでなんだか大袈裟なんだよね。特にお兄さんって変な人だよね」
きらりちゃんはお箸を器の上に置きふぅーと溜め息をついた。
「そうかな? 俺って変かな? よく言われるけどさ」
「やっぱり言われるんだね。だって、お兄さんは本当に怪しげだもんね。それはそうとわたしの勉強の邪魔をしないでくれるかな?」
きらりちゃんは食べ終えた器をテーブルの端に寄せノートを開いた。
「おっ、勉強かい。偉いんだね」
「宿題はやらないと先生に怒られるからだよ」
きらりちゃんはさも当たり前な表情でノートをぺらぺらとめくった。
きらりちゃんの勉強をしている姿を眺めているとなんだか懐かしいなと思いそして薄暗い部屋の中で宿題をしていたあの日を思い出した。
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