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美川さんとおばさん
しおりを挟む紫色のスーツ姿の美川さんときらりちゃんがバチバチ睨み合い火花を散らしているそんな姿がなんだか微笑ましくてわたしは、クスクスと笑いながら眺めた。
「あら、よしお君いらっしゃい。お嬢さんと喧嘩なんてしてるのね」
おばさんはクスクスと笑いながら美川さんを見ている。
「あ、森浜さん、こんにちは」
この二人は知り合いだったの? ってしかも美川さんのことをよしお君と呼んでいるではないか。一体どういうことなのかなとわたしは首を傾げた。
「よしお君もサーターアンダギーを食べる?」
おばさんは、サーターアンダギーを盛ったカゴを差し出した。
「おっ、俺の大好物なサーターアンダギーじゃないですか。もちろんいただきますよ」
美川さんはそう言ってサーターアンダギーの盛られているカゴに手を伸ばした。
そして、手に取ったサーターアンダギーを食べた美川さんは、「美味しい。これはめちゃくちゃ美味しいですよ~」と言った。
その顔はふにゃふにゃふにゃーと緩み切った。
「うふふ、そんなに喜んでもらえると嬉しいわよ」
おばさんは嬉しそうに頬を緩めた。
「あの……美川さんとおばさんは知り合い何ですか?」
「そうですよ。俺が旅行で座間味島に来た時にこの森浜食堂さんと出会って料理がめちゃくちゃ美味しくて何回も来てるうちに森浜のおばさんと仲良くなったんですよ」
美川さんはそう言いながら三個目のサーターアンダギーを口に運びゆるーりゆるーりと頬を緩めた。
「そうだったんですか」
「うふふ、そうなのよ。よしお君は普段とっても怖い顔をしているのにご飯を食べるとふにゃふにゃ~と頬が緩んで、そのギャップが可笑しくてわたしが声をかけたのよ」
おばさんは、口元に手を当ててうふふと笑った。
「あはは、とっても怖い顔は余計ですよ」
美川さんは四個目のサーターアンダギーに手を伸ばした。そして、美川さんのその顔はふにゃふにゃふにゃーと緩んだのだった。
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